今回は滋賀県豊郷町の阿自岐神社(あじき-)について。
阿自岐神社は国道8号沿線の集落に鎮座しています。
創建は不明。伝承によると上古の時代、当地に住んだ渡来人が創建し、境内周辺の庭園を造ったとのこと。当社は『延喜式』に「味耜高彦根」(あじすきたかひこね)と記載されており、平安時代には確立されていたようです。その後の沿革は不明。
境内の周辺にある池は日本最古の庭園とされ、県指定名勝となっています。本殿は江戸後期に造られた桧皮葺の流造で、こちらも県指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒529-1171滋賀県犬上郡豊郷町安食西663(地図) |
アクセス | 河瀬駅または尼子駅から徒歩30分 彦根ICから車で15分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
拝殿
阿自岐神社の境内は南向き。境内は集落の一画にありますが、社叢に覆われています。
入口の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「阿自岐神社」。
右の社号標は「縣社 阿自岐神社」。
参道右手、境内の東側には池があります。
「阿自岐神社庭園」という名称で県指定名称となっているようです。
もとは社殿の四方すべてが池に囲われていて、島のような地形だったらしいですが、道路工事や昭和後期の整備で現在の地形になったとのこと。
参道左手には社務所。
入母屋、桟瓦葺。玄関部分は入母屋(妻入)。
拝殿は、入母屋、桟瓦葺。
縁側がなく土間床で、中央が通路になっています。割拝殿に近い構造。
柱は角柱。柱上は実肘木。
中央の扉の上には長押が打たれ、中備えに束が立てられています。
軒裏は二軒まばら垂木。
内部は格天井。
奥には本殿前の中門が見えます。
破風板の拝みには鰭付きの懸魚。
入母屋破風の妻飾りは暗くてよく見えず。
中門
拝殿の後方には渡り廊が伸び、中門へつづいています。中門の先(写真左奥)は本殿。
中門は、一間一戸、四脚門、入母屋、正面軒唐破風付。
前方の控柱は角柱。頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついています。
柱上の組物は出三斗。
虹梁にはしめ縄がかけられています。
虹梁中備えは蟇股。
正面の軒唐破風の部分。
破風板の兎毛通には猪目懸魚。
唐破風の小壁には大瓶束が立てられています。
本殿
本殿は、桁行3間・梁間3間、三間社流造、向拝1間、檜皮葺。
1819年(文政二年)造営*1。県指定有形文化財。
棟梁は安食西村の田中嘉助と、今在家村の木澤甚六なる人物とのこと。
祭神はアヂスキタカヒコネと道主貴(宗像三女神)。ほか、天児屋根、保食神、スサノオなども祀られているようです。
向拝部分は板や幕で覆われていて、ほとんど観察できず。
向拝柱の上に連三斗が使われているのと、縋破風の桁隠しに懸魚がついているのは確認できます。
母屋は側面3間。ただし後方の2間は柱間のスパンが狭く、窮屈な印象。
母屋の前方の1間通りは前室(外陣)となっていて、床が一段低く造られています。これは滋賀県の神社本殿でよく見られる構造。
柱間の建具は蔀。
前室の部分。
頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついており、ここはあまり神社らしくない造り。
柱上の組物は尾垂木二手先。尾垂木の先端は丸い雲状になっていて、繰型がついています。この尾垂木は、あまり見かけないめずらしい意匠だと思います。
後方の内陣の部分。
柱は円柱で、柱上の組物は尾垂木二手先。
頭貫に木鼻がついていますが、台輪には木鼻がありません。
台輪の上の中備えは蟇股。花鳥を題材にした彫刻が入っていますが、日が暮れてしまい詳細な写真が撮れませんでした。
妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形は雲のような意匠。
破風板の拝みには雲状の懸魚。桁隠しはなく、軒桁の木口が露出しています。
縁側は切目縁が3面にまわされています。背面側は脇障子を立ててふさいでいます。欄干は擬宝珠付き。
縁の下には縁束が立てられ、大斗と実肘木で桁を受けています。
背面も3間。軒下の意匠は側面とほぼ同じで、中備えに蟇股があります。
軒裏は二軒繁垂木。
背面の柱間は横板壁。
母屋柱は床下まで円柱に成形されています。
大棟には千木と鰹木。
千木は屋根の上に乗った置き千木。長方形の風穴があけられ、先端は垂直方向に切り落とされた形状(外削ぎ)。
鰹木は紡錘形のものが3本乗っています。
以上、阿自岐神社でした。
(訪問日2022/10/15)
*1:棟札および妻壁板の墨書より