兵庫県神戸市
六條八幡宮(ろくじょう はちまんぐう)
2025/05/01撮影
概要
六條八幡宮は北区の山際の集落に鎮座しています。
創建は不明。社伝によると神功皇后の行宮が当地にあったらしく、995年(長徳元年)に基灯という僧侶が円融寺(神宮寺)と社殿を造ったのが当社のはじまりと伝わります。事実上の創建は平安後期で、当地の領主の源為義が、京都六条の自邸に祀っていた八幡宮(石清水八幡宮の分霊)を1123年に当社に合祀しています。六條という社号も、源為義に由来します。室町前期には現在の三重塔が建てられ、江戸中期には現在の本殿が再建されています。明治初期には、神宮寺の円融寺が廃寺となり、「八幡神社」として独立しています。
現在の社殿は室町中期から江戸時代にかけての古いもので、神仏習合の時代のおもかげを残します。室町中期の三重塔は国の重要文化財、江戸中期の本殿と舞台は市の文化財に指定されています。ほか、流鏑馬の神事が市の無形文化財に登録されています。
現地情報
タップして展開/収納
| 所在地 | 〒651-1253兵庫県神戸市北区山田町中宮ノ片57(地図) |
| アクセス | 箕谷駅から徒歩40分 神戸西ICから車で15分 |
| 駐車場 | 10台(無料) |
| 営業時間 | 随時 |
| 入場料 | 無料 |
| 社務所 | あり(要予約) |
| 公式サイト | 六條八幡宮 |
| 所要時間 | 20分程度 |
文化財情報
境内
参道と舞台

六條八幡宮の境内は南向き。入口は川沿いの農地に面しています。
右の社号標は「郷社 八幡神社」。
参道には石造明神鳥居が立ち、扁額は「六條八幡宮」。

参道を進むと、右手(東側)に舞台があります。
切妻造、桟瓦葺。
市指定有形文化財。

柱は角柱で、柱上は舟肘木。
柱間は貫でつながれ、貫と柱とのあいだには円弧状の持ち送り材が入っています。貫の上の中備えは板蟇股。
内部に天井はなく、化粧屋根裏です。

妻面。
妻飾りも板蟇股。
破風板の拝みには蕪懸魚。

神楽殿の北側には手水舎。
入母屋造、桟瓦葺。
内に大きく転んだ角柱が使われ、入母屋破風には木連格子が張られています。
拝殿

参道の先には拝殿があります。向拝がついているように見えますが、手前の庇は独立していて、別棟です。
拝殿は、梁間3間・桁行3間、入母屋造(妻入)、桟瓦葺。

拝殿正面の入母屋破風。
木連格子が張られ、破風板の拝みには蕪懸魚。

柱間は正面側面ともに3間で、壁や建具がなく吹き放ち。
縁側は切目縁で、跳高欄が立てられています。

柱は面取り角柱が使われ、柱上は舟肘木。
軒裏は二軒まばら垂木。

拝殿の手前の庇。
片流、銅板葺。

正面の貫にはしめ縄がかけられ、中備えは蟇股。

柱は角柱が使われ、柱上は舟肘木。
柱間は貫や梁でつながれています。
中門と薬師堂

拝殿の後方には中門が設けられ、左右の透塀で本殿を囲っています。
中門は、三間一戸、切妻造、銅板葺。

柱は角柱が使われ、柱上は舟肘木。後方の柱(写真中央下)は側面の中心線から後方にずれた位置に立っており、薬医門を前後逆にしたような構造となっています。
妻面の梁の上には角柱の束が立てられています。
破風板には蕪懸魚。

中門および透塀の左側(西側)には、薬師堂が南面しています。神仏習合の時代の遺構のようです。
桁行3間・梁間3間、寄棟造、本瓦葺。
屋根は本瓦葺の寄棟造で、寺院風の造り。

正面は3間。柱間は半蔀。

側面も3間。柱間は舞良戸と横板壁。
縁側は切目縁が3面に設けられ、欄干や脇障子はありません。

柱は円柱。軸部は長押と貫で固められ、頭貫に拳鼻がつきます。
柱上は大斗と肘木を組んだもの。中備えはありません。
本殿

透塀の内には本殿が鎮座しています。祭神は誉田別命。
本殿は、桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝1間、銅板葺。
1688年(貞享五年)再建。市指定有形文化財。

向拝柱は几帳面取り角柱。側面に拳鼻がつき、柱上の組物は皿斗と肘木を組んだもの。
向拝は1間で、正面は母屋の幅と同じ広さです。虹梁の上には組物を配しています。

海老虹梁は向拝の組物の上から出て、母屋の頭貫に取りついています。母屋側の袖切りの近くには、猪目型のくぼみが彫られています。

中門から本殿正面をのぞき込んだ図。
正面の階段は母屋の中央の柱間よりやや広い幅で造られ、段数は7段あります。昇高欄の親柱は擬宝珠付き。
母屋の正面は3間あり、柱間は格子の引き戸が入っています。

母屋柱は円柱。軸部は長押と貫で固められています。
妻飾りは二重虹梁。大瓶束を立て、肘木(木鼻?)を介して棟木を受けています。
破風板の拝みには蕪懸魚。桁隠しの懸魚は雲状の彫刻。

頭貫には拳鼻がついています。
組物は大斗、木鼻、巻斗を組んだもので、出組のような構造になっています。風変わりな構成の組物です。

背面は3間。
縁側は背面をのぞいた3面にまわされていて、側面後方は脇障子を立ててふさいでいます。

本殿向かって左側には2棟の境内社。
2棟とも、見世棚造、一間社流造、銅板葺。

本殿東側にも2棟の境内社が西面しています。
こちらの2棟も、見世棚造、一間社流造、銅板葺。
三重塔

境内の東側の区画には、三重塔が鎮座しています。

三間三重塔婆、檜皮葺。
1466年(文正元年)造営。「八幡神社三重塔」として国指定重要文化財。
棟札によると、当地の国人の鷲尾綱貞によって造られたもので、藤原周次と藤原光重という工匠の作。

初重南面。
柱間は3間で、中央は板戸、左右は連子窓。
縁側は切目縁。欄干はありません。

軸部には多数の長押が打たれ、左右の柱間は窓の下にも長押があります。
左右の連子窓は板材を連子状に彫ったもので、盲連子です。


柱は円柱。頭貫木鼻はなく、和様の造りです。
柱上の組物は尾垂木三手先。尾垂木は和様のもので、先端が平たいです。
中備えは間斗束。こちらも和様の意匠。
桁下には軒支輪が張られ、母屋とのあいだには格子の小天井があります。

東面。
構造や意匠は南面と同じです。

二重の東面。
柱間は3間で、板戸、連子窓、組物は初重と同様の構造です。
組物のあいだの中備えは、中央のみ間斗束があり、左右は省略されています。
縁側には跳高欄が立てられ、縁の下は平三斗などの腰組で支えられています。

三重東面。
構造は二重と同じですが、柱間がせまく、左右の柱間は中備えを入れられそうなスペースがほぼありません。

南面。
軒先は隅が大きく反りかえっていて、優美な趣。軒裏はいずれの重も平行の二軒繁垂木。
細部の意匠はいずれも和様で構成されており、木鼻などの禅宗様の意匠は見当たりません。純然たる和様建築といえます。

三重の頂部には相輪。
反花と九輪の上に水煙がつき、頂部に宝珠が乗る構成。
以上、六條八幡宮でした。
*1:附:棟札3枚