今回は滋賀県東近江市大塚町(おおつかちょう)の八幡神社(はちまん-)について。
八幡神社は近江鉄道沿線にある集落に鎮座しています。
創建は社伝によると1308年(延慶元年)で、のちに六角氏や蒲生氏に仕える大塚氏により宇佐神宮から勧請されたとのこと。その後の沿革は不明ですが、室町時代に現在の本殿が造営され、明治時代に村社に列しています。
境内は小規模ですが、本殿は室町時代の造営と考えられ、市の文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒529-1512滋賀県東近江市大塚町345(地図) |
アクセス | 朝日大塚駅から徒歩5分 蒲生スマートICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
八幡神社の境内は西向き。入口は集落の生活道路に面していて、向かいに当地区の公民館があります。
入口の鳥居は石造の明神鳥居。扁額はなく、額束です。
右の社号標は「八幡神社」。
拝殿は、入母屋(妻入)、桟瓦葺。
柱間には格子戸などの建具があり、縁側はまわされていません。
柱は角柱、柱上は舟肘木。
軒裏は一重まばら垂木。
扁額は「八幡宮」。八の字が鳩の形状になっています。
拝殿の左手(北)には社務所。
切妻、桟瓦葺。
本殿
本殿は覆屋の中に収められています。
覆屋の扁額は「八幡宮」。なお、前述の社号標は「八幡神社」で、本殿の文化財指定上の名称は「八幡社本殿」*1となっており、社名の表記ゆれが目立ちます。
本殿は、一間社流造、こけら葺。
室町後期の造営と考えられます。1735年(享保二十年)の修理で現在の姿になりました。市指定有形文化財*2。
祭神は誉田別命などの八幡神。
向拝柱は几帳面取り角柱。ここを几帳面取りするのは室町時代にはあまり見られない技法ですが、この柱は1735年の修理によるものであることが附の棟札からわかっています。
柱上の組物は連三斗。実肘木がなく、軒桁を直接受けています。
向拝柱の側面には斗栱が出て、組物を持ち送りしています。
虹梁には若葉状の絵様が彫られ、神社本殿にしては新しめの作風。とはいえ、この部分は当初の材と思われます。
虹梁中備えはありません。
向拝の軒下には角材の階段が5段。
階段の下には浜床が張られています。
母屋柱は円柱。軸部は貫と長押で固定。
組物は連三斗。通し肘木で軒桁を受けています。
頭貫の位置からは出た斗栱は、組物を持ち送りしています。
正面の頭貫の上の中備えは、透かし蟇股。
植物をかたどった抽象的な意匠ですが、彫りが複雑で繊細です。中世の抽象的・平面的な造形から脱却して、近世の写実的・立体的な造形に移行する直前、といった感じ。
本殿のとなりには境内社。
3棟いずれも、一間社流造、銅板葺。
社殿の手前には、丸く平べったい形状の石が供えられています。
妙厳寺
八幡神社の北側には妙厳寺(みょうごんじ)という寺院があります。八幡神社とは直接の関係のない寺院と思われますが、当記事にて紹介。
左の寺号標は「曹洞宗 妙厳禅寺」。
参道の先に見える山門は、二重、入母屋、桟瓦葺。
下層。
柱は角柱。柱間は下見板としっくい塗りの壁となっています。
上層。扁額は山号「高岡山」。高の字は、はしご高。
正面には火灯窓が設けられています。
柱上は舟肘木。頭貫には拳鼻。
軒裏は一重まばら垂木。
山門の先には本堂。
入母屋、銅板葺。
棟が高く、傾斜の強い屋根が空に映えます。屋根はわずかにむくりがついているようで、軒先が若干垂れて見え、柔和な印象。
妙厳寺の向かいにはため池があり、弁天社と思しき小祠があります。
こちらもおそらく八幡神社とは関係のない神社かと思われます。
以上、八幡神社でした。
(訪問日2022/10/15)
*1:文化財一覧 東近江市ホームページ 2022/11/12閲覧
*2:附:棟札、絵馬