今回は滋賀県東近江市の山部神社と赤人寺について。
山部神社
所在地:〒529-1524滋賀県東近江市下麻生町214(地図)
山部神社(やまべ-)は近江鉄道沿線の下麻生町の集落に鎮座しています。
創建は不明。当地は三十六歌仙に数えられる歌人・山部赤人が晩年を過ごしその生涯を閉じた場所と伝わり、彼の廟として神社がつくられたとされます。室町時代には小松宮、江戸時代には小松大明神と称し、明治時代に現在の社号に改められました。
本殿は室町後期の造営とされ、市指定文化財です。
境内
山部神社の境内は南東向き。入口は集落の生活道路に面しています。
入口の鳥居は石造の明神鳥居。左の社号標は「山部神社」。
参道右手、赤人寺のほうには手水舎があります。
切妻、桟瓦葺。
拝殿は、入母屋(妻入)、桟瓦葺。
柱間に建具がなく、全方向が吹き放ち。滋賀県の神社でよく見かける形式の拝殿。
拝殿の柱は角柱。柱上は舟肘木。
内部は小組格天井。
本殿は、このような覆屋の内部に収められています。
覆屋は、前方が妻入、後方が平入になっています。屋根葺きは桟瓦葺。
本殿は、一間社流造、こけら葺。
造営年不明。室町後期の造営と考えられています*1。市指定有形文化財。
祭神は山部赤人。
向拝柱は角面取り。
組物は連三斗で、向拝柱の側面の斗栱で持ち送りされています。連三斗の上には実肘木がなく、桁を直接受けています。
本殿覆屋の左手には境内社。
2棟とも、一間社流造、銅板葺。
社殿の階段の手前には、丸く盛られた米飯と、丸い石が供えられています。この近くにある大塚町の八幡神社でも同様の丸い石が供えられていたため、当地に特有の風習のようです。
以上、山部神社でした。
赤人寺
所在地:〒529-1524滋賀県東近江市下麻生町212(地図)※要確認
赤人寺(しゃくにんじ)は山部神社に隣接する天台宗の寺院です。山号は養老山。
創建は不明。寺伝によれば奈良時代、山部赤人が田子の浦*2から移した観音像を当地に祀ったのが始まりとのこと。赤人の供養のために立てられたと伝わる石造七重塔は、鎌倉時代の銘があり国重文に指定されています。
赤人寺の境内は南東向き。山部神社の東側に、並立して鎮座しています。
境内入口には、地蔵堂(?)が西面しています。
境内の中央部には本堂。
入母屋、向拝1間、上部は茅葺形鉄板葺、下部は桟瓦葺。
本尊は観音菩薩。
ボリュームのある茅葺形の屋根の周囲に、桟瓦葺の屋根がついています。おそらく改修を繰り返した結果こうなっただけで、狙ってデザインしたわけではなさそうですが、インパクトのある外観です。
本堂向かって左から裏手へまわると、石造七重塔が立っています。
1318年(文保元年)造立。国指定重要文化財。
山部種生なる人物により立てられたもので、造立年を記した刻銘が塔身に彫られているとのこと。
頂部の宝輪は、後世の修理によるもののようです。
案内板によると、もし完全な状態で残っていたら高さ十尺(約3メートル)の塔だったとのこと。
以上、赤人寺でした。
(訪問日2022/10/15)