今回も京都府京都市の八坂神社について。
当記事では西楼門とその周辺の社殿について述べます。
西楼門
境内西端の、幹線道路に面した場所には、西楼門が鎮座しています。室町時代の造営で、当社の社殿のなかでもとくに古いものです。
三間一戸、楼門、切妻、本瓦葺。
1497年(明応六年)造営。「八坂神社」28棟1基として国指定重重要文化財。
下層。
正面は3間。左右の柱間には随神像が置かれています。
向かって左手前の柱。
柱はいずれも円柱。頭貫に木鼻はありません。
組物は二手先。中備えは間斗束。
左側面(北面)。
側面は2間で、柱間は白壁。
腰貫の下の低い位置に、連子窓が設けられています。
上層。
正面は3間で、中央は板戸、左右は連子窓。
軸部は長押と頭貫で固定されています。下層と同様に、頭貫木鼻は使われていません。
組物は、下層が二手先であるのに対し、上層は出組です。下層のほうが手数が多いというのは、変わった造りだと思います。
中備えは間斗束。通肘木が使われ、組物と肘木を共有しています。
上層の左側面。
柱間は連子窓。
縁側は切目縁で、跳高欄が立てられています。
妻面。
ふつう、このような楼門の屋根は入母屋なのですが、この楼門は切妻となっています。
妻飾りは二重虹梁で、虹梁の上には板蟇股が置かれています。
中央の柱の上からは、梁が突き出ています。
背面から見た図。
西楼門翼廊と西手水舎
楼門の左右には、くの字型に折れ曲がった翼廊(よくろう)が並んでいます。
こちらは向かって左側にある北翼廊。
こちらは反対の右側にある南翼廊。北翼廊を左右反転した造りです。
北翼廊と南翼廊は、桁行折曲り延長5間、梁間1間、切妻、本瓦葺。
両者とも1925年(大正十四年)の造営で、西楼門と同様に国重文。
南翼廊の軒下。
軒と頭貫は、楼門と高さを合わせるために曲がった形状になっています。
柱は円柱で、柱上は出三斗。中備えは間斗束。通肘木が使われています。
南翼廊の北面。
虹梁の上には板蟇股が置かれ、組物を介して棟木を受けています。
破風板の拝みと桁隠しは猪目懸魚。
南翼廊の折れ曲って手前に伸びた箇所の北面と西面。
柱間は連子窓。
妻面の意匠は、北面と同様です。
背面。
こちらは南端の1間(写真左端)に板戸があります。
屋根は2つの切妻が交差した形式で、背面は入母屋のようになっています。
北翼廊については、南翼廊を左右反転させただけの構造で、同じ意匠のため解説は割愛。
西楼門をくぐると、左手に西手水舎があります。
切妻、桟瓦葺。
1928年造営。国重文。
柱は角柱。柱上は舟肘木。
柱間の欄間には、細かな連子が張られています。
妻飾りは豕扠首。破風板には懸魚が下がっています。
絵馬堂
境内の北側の区画には、絵馬堂が南面しています。
桁行7間・梁間2間、入母屋、桟瓦葺。
1744年(延享元年)造営。国重文。
軒下には多数の扁額が掲げられ、金網もかかっているため、細部の観察はむずかしいです。
柱は円柱で、頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
柱上は花肘木のような部材が使われています。
ここまでで、国宝「八坂神社本殿」1棟と、重要文化財「八坂神社」28棟1基のうちの21棟1基を紹介しました。
残りの7棟は、境内北側にある境内社3棟と、鴨川対岸の河原町駅近辺にある四条旅所などの4棟なのですが、見落としてしまったため割愛。再訪の機会があれば、加筆したいと思います。
以上、八坂神社でした。
(訪問日2023/02/24)