甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【宇治市】旦椋神社

今回は京都府宇治市の旦椋神社(あさくら-)について。

 

旦椋神社は大久保駅の西側の住宅地に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると、720年(養老七年)には確立されていたとのこと。当初は現在地の西側にある同市大久保町旦椋にあったようです。『延喜式』の式内論社に比定されています。1550年に社殿を焼失しましたが、1566年(永禄九年)に現在地へ移転し、もとあった天満宮と合祀したうえで再建されています。江戸初期には現在の本殿が再建されました。

境内は社叢に覆われた参道が南北に長く伸びています。本殿は桧皮葺で、安土桃山から江戸初期の美麗な作風で造られています。

 

現地情報

所在地 〒611-0033京都府宇治市大久保町北ノ山109-1(地図)
アクセス 大久保駅から徒歩5分
久御山ICまたは城陽ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

旦椋神社の境内は南向き。周辺は住宅地で、境内の近くを近鉄京都線が並行しています。

右の社号標は「式内 旦椋神社」。

奥に見える一の鳥居は、石造の明神鳥居。扁額は「旦椋神社」。

 

参道は生活道路によって南北に分断されています。

道路を越えた先には二の鳥居。石造の明神鳥居で、扁額は「旦椋神社」。

 

二の鳥居の先には神門。切妻、桟瓦葺。

左右各1本の主柱で棟を受けた形式。主柱の前後には石造の控柱があり、両部鳥居のような構造で主柱を支えています。

 

参道の左手には手水舎。切妻、桟瓦葺。

柱は内に転びがついています。とくに目立った装飾はありません。

 

拝殿

拝殿はコンクリート造、切妻、桟瓦葺。内部は通路になっており、割拝殿の構造です。

写真右端に見える屋根の下には牛の像。この神社が天満宮であることがわかります。

 

拝殿の後方には、本殿へつづく通路(幣殿?)の屋根が伸びています。

切妻(妻入)、桟瓦葺。

 

柱や束の上には舟肘木が使われています。

破風板の拝みには蕪懸魚。

 

拝殿の右手には境内社。覆い屋の中に2棟が並び、どちらも一間社流造。

祭神は不明。

 

本殿

拝殿と通路の奥には、透かし塀に囲われた本殿が鎮座しています。

一間社流造、桧皮葺。

1672年(延宝二年)造営。府登録有形文化財。

祭神はタカミムスビ、カミムスビ、菅原道真(天神・天満宮)の3柱。

 

正面の軒先を支える向拝柱は、几帳面取りの角柱。上端は極彩色の塗装になっています。

向拝柱の側面には、象頭の木鼻。白く彩色され、造形もかなり良いと思います。

柱上の組物は連三斗。こちらも極彩色で塗り分けられ、江戸初期らしい作風。

 

正面の虹梁には波が描かれています。鶴と思しき鳥も描かれていますが、独特な画風。

虹梁中備えの蟇股には、唐獅子の彫刻が入っています。造形も彩色も美麗です。

 

向拝の軒下には、角材の階段が7段。昇高欄は擬宝珠付き。

階段の下には浜床が張られ、欄干が立てられています。欄干は跳高欄ですが、写真中央部あたりが独特な渦状のカーブになっています。ほかでは見たことのない個性的な意匠。

 

母屋柱は円柱。向拝柱と同様に、上端が極彩色の模様になっています。

母屋柱と向拝柱は、ゆるやかにカーブした海老虹梁でつながれています。母屋側は頭貫の下から出ていて、向拝側は組物の上に取り付いています。海老虹梁の母屋側は風変わりな場所から出ているため、すぐ上に頭貫木鼻が窮屈そうに収まっています。

 

母屋の正面は板戸。

側面は横板壁で、唐獅子が描かれています。

縁側には跳高欄が立てられています。

 

母屋側面の妻壁。

頭貫は菱形のパターンで塗り分けられています。頭貫木鼻は大きく切れ込みが入った形状をしています。

組物は連三斗。側面に出た頭貫木鼻の上に巻斗が乗り、組物を持ち送りしています。

中備えは蟇股。彫刻は、梅と思しき花。

妻虹梁の上には大瓶束が立てられ、組物を介して棟木を受けています。

 

背面には松が描かれています。

軒下の組物や木鼻は側面とほぼ同じ。

縁側は3面にまわされ、背面側は脇障子でふさがれています。

 

破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。

大棟には梅鉢の紋が描かれています。

 

以上、旦椋神社でした。

(訪問日2022/02/24)