甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【大津市】日吉大社 その2 宇佐宮、白山姫神社

今回も滋賀県大津市の日吉大社について。

 

その1では西本宮について述べました

当記事では摂社の宇佐宮と白山姫神社について述べます。

 

摂社

宇佐宮

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西本宮の東側には、摂社の宇佐宮と白山姫神社が隣接しています。

こちらは宇佐宮(うさぐう)の拝殿。境内は南向き。

宇佐宮拝殿は桁行3間・梁間3間、入母屋(妻入)、檜皮葺。

1598年(慶長三年)再建国指定重要文化財

 

柱は角柱、柱上は舟肘木など、西本宮拝殿とよく似た造り。

 

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宇佐宮本殿は桁行5間・梁間3間、日吉造、向拝1間、檜皮葺。

拝殿とともに1598年再建国指定重要文化財

祭神はタキリビメ(田心姫)。

 

こちらも西本宮本殿とまったく同じ様式。

日吉造についての解説は、その1の西本宮本殿の項で既出のため割愛。

非常に立派なたたずまいで、西本宮より手前にあるため、これが西本殿と勘ちがいする人もいるかも。私は勘ちがいしそうになりました...

 

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向拝柱は角面取り。柱上は舟肘木。

2つの向拝柱をつなぐ虹梁はありません。また、向拝柱と母屋をつなぐ梁もありません。

 

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母屋は正面(桁行)5間。

案内板(大津市教育委員会)いわく“正面の階段前に吹寄格子をいれた障壁が設けてある”のが西本宮・東本宮との大きなちがいらしいですが、正面はすだれがかかっていて吹寄せの格子戸は見えず。

 

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母屋柱は円柱。

組物は隅の柱上にのみ舟肘木が置かれています。

長押や柱の飾り金具は黒色で、西本宮のものと較べてグレードが下げられているように見えます。こちらは格下の摂社なので、当然といえるでしょう。

長押の上はしっくい塗りの壁になっており、中備えはありません。

 

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背面。

西本宮本殿と同様に日吉造のため、こちらも背面の屋根が独特の形状になっています。軒裏の納まりも西本宮と同様。

 

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宇佐宮の手前にある末社。

両者とも一間社流造、こけら葺。

右端に見切れているのは、後述の白山姫神社拝殿。

 

白山姫神社

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宇佐宮の東側には、白山姫神社(しらやまひめ-)の境内が平行して伸びています。

白山姫神社拝殿は桁行3間・梁間3間、入母屋(妻入)、檜皮葺。

1598年(慶長三年)再建国指定重要文化財

 

こちらもまた西本宮拝殿と同じ様式。

 

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柱は角柱。柱上は舟肘木。

軒裏は二軒まばら垂木。

 

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拝殿の後方には白山姫神社本殿。こちらは日吉造ではなく、神社本殿の定番といえる流造です。

桁行3間・梁間3間、三間社流造、向拝1間、檜皮葺。

拝殿とともに1598年再建国指定重要文化財

祭神はククリヒメ。

 

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向拝柱は角柱、柱上は舟肘木。ほか、虹梁などの材はありません。

様式はメジャーな流造ですが、各所の意匠は西本宮本殿などの社殿に準じたものになっています。

 

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母屋は正面(桁行)3間。神社本殿として標準的な規模です。

母屋柱は円柱。柱上はいずれも舟肘木。

中備えはありません。

 

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右側面(東面)。

側面(梁間)は3間ですが、母屋の本体は後方(写真右)の2間で、前方の1間は前室であることが推測できます。

これは滋賀県内の神社本殿でよく見かける構造。

 

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妻飾りは豕扠首。

破風板の拝みと桁隠しには、猪目懸魚が下がっています。

 

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背面。こちらも3間。

とくに目立った意匠はありません。

 

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白山姫神社本殿のとなりにある末社。

いずれも一間社流造。

看板に書かれているように、こちらから東本宮の境内へ最短距離で移動できます。東本宮へは徒歩3分程度

 

三宮・牛尾宮遥拝所

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西本宮から東本宮への道の途中には、三宮と牛尾宮の入口があります。

向かって左が三宮(さんのみや)遥拝所、右が牛尾宮(うしおみや)遥拝所

 

この先は八王子山という標高381メートルの山になっているとのこと。

ここから徒歩30分程度の山中に三宮と牛尾宮があり、両者とも拝殿と本殿が国重文となっているようです。

 

今回は体力的にも時間的にも余裕がなかったため断念。

パンフレットに掲載されていた参拝コースも、三宮と牛尾宮だけ省略されていました。一般の参拝者はスルー推奨、というのが日吉大社の公式の見解のようです。

 

宇佐宮と白山姫神社については以上。

その3では東本宮について述べます