甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【大津市】三尾神社

今回は滋賀県大津市の三尾神社(みお-)について。

 

三尾神社は園城寺(三井寺)の南東部に隣接して鎮座しています。

創建は不明。859年(貞観元年)、円珍が琴尾谷(現在の三井寺霊園琴谷苑)に園城寺の鎮守として三尾明神を祀り、社殿が建立されたようです。室町時代には4代将軍・足利義持によって現在の本殿が造営され、安土桃山時代の豊臣秀吉による破却を免れて現存しています。1876年(明治九年)、当地へ移転・移築して園城寺から分離され、独立の神社となりました。

現在の境内は先述の本殿が現存し、国重文に指定されています。また、ウサギ(卯)にまつわる伝説があることから、境内社殿の各所にウサギの像や彫刻が見られます。

 

現地情報

所在地 〒520-0036滋賀県大津市園城寺町251(地図)
アクセス 三井寺駅から徒歩15分
京都東ICから車で15分
駐車場 10台(500円)
営業時間 09:00-17:00
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

神門

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三尾神社の境内は東向き。

裏手にある園城寺のほうから入ったため、境内入口の鳥居については未確認。

境内の中心部は塀で囲われ、神門の先に社殿が並び立っています。

 

神門は一間一戸、向唐門、銅板葺。

 

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柱はC面取りされた角柱。

木鼻は正面および側面に象鼻。

柱上の組物は出三斗。

 

柱の面取りや木鼻の彫刻を見るかぎり、江戸初期以降のものと思われます。

 

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門扉は桟唐戸。上部の花狭間は、正方形の格子に装飾がついたパターンになっています。

門の左右の塀の屋根には、破風隠しの板(写真右)が設けられています。ここにも若葉のような彫りが入っていて、凝っています。

 

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唐門の右手前には手水舎。

入母屋、桟瓦葺。

 

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手水の蛇口(?)は「波に兎」の像になっています。

サメの姿が見当たりませんが、因幡の白兎でしょうか。

 

拝殿

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唐門の先は拝殿。

入母屋、正面軒唐破風付、銅板葺。

神社の拝殿にしてはめずらしく、縁側が省略されています。

 

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正面中央の柱間。

柱は几帳面取りの角柱。柱上の組物は古風な舟肘木。

柱間には虹梁がわたされ、両端の下部に雲状の持ち送りがついています。

虹梁中備えは蟇股。妻壁には笈形付き大瓶束。

 

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虹梁中備えの蟇股のアップ。こちらも「波に兎」の彫刻。

白飛びしてしまっていますが、虹梁の中央の金具(釘隠し?)も兎の意匠。

 

本殿

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拝殿の後方には、塀に囲われた本殿が鎮座しています。

桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝3間、檜皮葺。

1426年(応永三十三年)再建。室町幕府4代将軍の足利義持による寄進。国指定重要文化財

祭神はイザナキ。

 

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正面の軒下。向拝は3間。

向拝柱は角柱。遠くてよく見えないですが、室町前期にしてはC面の幅が小さいように感じます。

水引虹梁はなく、柱上に舟肘木があるだけの非常にシンプルな向拝です。

 

母屋の正面には3組の板戸が設けられ、中央の扉だけ開かれていました。

 

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右側面(北面)。

向拝柱と母屋は、まっすぐな梁でつながれています。

母屋は側面2間で、前方の1間は板戸、後方の1間はしっくい塗りの壁。

母屋柱は円柱。組物は中央は大斗、隅は舟肘木。

妻飾りは豕扠首。

破風板には懸魚が4つ下がっていますが、破損が目立ちます。

 

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背面後方。

母屋は亀腹の上に建てられ、柱は床下も円柱に成形されています。

縁側は正面と両側面の計3面にまわされ、背面側は脇障子でふさがれています。欄干は跳高欄。縁束は円柱。

 

境内社

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三尾神社本殿の左手(南側)には阪下稲荷社。

社殿の周りは塀で囲われ、前方(写真左)には拝殿らしき屋根もついています。

本殿は一間社流造、銅板葺。

 

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三尾神社本殿の右手には日御前神社。

一間社流造、銅板葺、なのですが正面側に謎の庇が設けられていて珍妙なシルエットになっています。

 

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庇の軒裏は垂木がまばら。とはいえ、庇の縋破風と本殿の垂木のおさまりが意外と丁寧に処理されています。

後補なのか、あるいは当初からこういう構造なのか判断に困ってしまう造り。

 

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向拝柱は几帳面取り角柱、母屋柱は円柱。両者は海老虹梁でつながれています。

 

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長押の釘隠しは桜の花の意匠。

頭貫木鼻は拳鼻。中備えは蟇股で、植物の彫刻が入っています。

妻飾りは豕扠首。

破風板の拝みと桁隠しは猪目懸魚。

 

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縁側は3面にまわされています。

縁の下は三手先の腰組。ひょろりと伸びる肘木に拳鼻がついています。良く言えば軽快、悪く言えば頼りない趣。

 

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ほか、境内北側にも摂社・末社が並立しています。

左と中央は一間社流造、檜皮葺。右は一間社流造、銅板葺。

 

以上、三尾神社でした。

(訪問日2021/08/10)

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