今回は岐阜県神戸町瀬古(せこ)の春日神社(かすが-)について。
春日神社は町の南部の住宅地に鎮座しています。
創建は不明。古くから当地の氏神として崇敬され、棟札の記録によれば遅くとも江戸初期には確立されていたようです。
境内は非常に小規模ですが本殿は江戸初期の造営で、極彩色の派手な彫刻で彩られています。
現地情報
所在地 | 〒503-2318岐阜県安八郡神戸町瀬古235(地図) |
アクセス | 広神戸駅または東赤坂駅から徒歩30分 大野神戸ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
春日神社の境内は南向き。狭い生活道路に面しています。
社号標は「村社 春日神社」。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「春日神社」。
参道の左手には手水舎。
切妻、桟瓦葺。
目立った意匠はないですが、破風板の拝みに蕪懸魚が使われています。
拝殿
鳥居から10メートルほど進むと拝殿があります。
拝殿は入母屋、桟瓦葺。
拝殿正面中央の軒下。
柱は几帳面取りの角柱。柱上に台輪がまわされ、組物は出三斗。
中備えは蟇股で、はらわたには彩色された彫刻が入っています。題材は十二支。上の写真の彫刻はなんとなく鹿に見えなくもないですが、南面の中央なので午(馬)です。
左側面(西面)。
側面は柱間が2つとなっていますが、蟇股はしっかりと3つ配置されています。
彫刻の題材は右から申・酉・戌。
隅の軒下。
頭貫と台輪に禅宗様木鼻が設けられています。
軒裏は二軒繁垂木。隅木の下には気を吐く蜃の彫刻があり、こちらも彩色されています。
中門と本殿
拝殿の後方には、瑞垣に囲われた中門と本殿が鎮座しています。
中門は一間一戸、唐門、檜皮葺。
中門の右側面(東面)。
1本の角柱から前後に腕木を伸ばし、桁をかけて軒裏を受けています。
破風板は唐破風にしては頂部がとがっていて、本当に唐破風といっていいのか判断に困ってしまう形状。大棟は箱棟になっており、屋根の頂部がとがっているのもこの辺の雨仕舞の都合だと思います。
破風の拝みには蕪懸魚。
本殿は一間社流造、向拝1間・軒唐破風付、檜皮葺。
1667年(寛文七年)造営。岐阜県の公式サイトの当該ページによると、造営当初からここにあったわけではなく、どこかから移転された可能性があるとのこと。県重要文化財。
祭神はタケミカヅチなどの春日神と思われます。
向拝柱は几帳面取り。この材は明治期の修理による後補と考えられているようです。側面には麒麟の木鼻。
向拝中備えには、人物像が彫られています。題材は不明。
見づらいですが中備えの彫刻の左右には大瓶束が立てられ、唐破風の桁を受けています。ここに大瓶束を使うのはかなり風変わり。
唐破風の軒下では力神らしき像がふんばっており、そのとなりには鹿(あるいは馬?)がいます。
各所の桁に描かれた紋は下り藤。春日大社の紋です。
向拝柱の組物は連三斗。極彩色に塗り分けられ、安土桃山期の流れが色濃い作風。
組物の上で軒裏を受ける手挟は、天女が彫られています。
向拝柱と母屋をつなぐ懸架材はありません。海老虹梁があればもっとにぎやかになると思うのですが、それをあえて設けないのは意味深で奥深い気がします。
母屋柱は円柱。
母屋正面には桟唐戸をアレンジしたような扉が設けられています。
扉の上の欄間と蟇股には彫刻がありますが、題材不明。
側面は白い横板壁。
縁側は3面にまわされ、擬宝珠付きの高欄が設けられています。脇障子には何かの故事を題材にした彫刻があります。
側面の全体図。
様式は流造で、「へ」の字型の屋根がきれいな曲線を描いています。ただし破風の拝みのあたりにアクリル板がつき、美観を損ねてしまっているのが残念。
破風板の拝みと桁隠しには蕪懸魚。写真右の丸桁の桁隠しは金色の鳳凰の彫刻。
側面の軒下。
こちらも多数の彫刻があり、極彩色に塗装されています。
頭貫木鼻は唐獅子。台輪にも木鼻がつき、唐獅子の頭の上に載っています。
母屋の組物は出組で、桁下には軒支輪。
妻飾りは二重虹梁になっています。
大虹梁は輪違の文様。その上には大瓶束と蟇股。蟇股は雲に竿を突き立てる男性が彫られていて、題材は「国産み」のイザナキと思われます。
二重虹梁の上では力神がふんばっており、実肘木を介して棟木を受けています。
背面。
壁や脇障子は真っ白な板となっていますが、こちらも軒下の欄間や蟇股に彫刻があります。
母屋柱は床下も円柱に成形されていました。
最後に本殿の右隣(東)にある境内社。
一間社流造、銅板葺。
木鼻や脇障子に極彩色の彫刻があり、小規模ながら凝った造り。
以上、春日神社(瀬古)でした。
(訪問日2021/06/26)