甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【北方町】円鏡寺

今回は岐阜県北方町の円鏡寺(えんきょうじ)について。

 

円鏡寺は町の市街地に鎮座している高野山真言宗別格本山の寺院です。山号は池鏡山。

創建は寺伝によれば811年(弘仁二年)。嵯峨天皇の勅命を受けた空海が開基したとのこと。当初は定照寺という寺号で、のちに補陀落院と改称されたようです。現在の山号・寺号になったのは988年(永延二年)、天皇家に鏡を献上したことから、一条天皇によって命名されています。以降、徳川家康などの権力者から庇護を受けています。

現在の境内伽藍は、楼門が鎌倉後期のもののため国重文に指定されています。また、年代不明ですが三重塔も鎮座しています。拝観はできないようですが、平安期の木造聖観音立像をはじめ多数の文化財を所蔵しています。

 

現地情報

所在地 〒501-0431岐阜県本巣郡北方町北方1345-1(地図)
アクセス 北方真桑駅から徒歩20分
大野神戸ICから車で15分
駐車場 20台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト 円鏡寺ホームページ
所要時間 15分程度

 

境内

楼門

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円鏡寺の境内は東向き。境内入口は閑静な住宅地と公園に面しています。

寺号標は「別格本山 池鏡山 圓鏡寺」。

 

楼門の様式は、三間一戸、楼門、入母屋、檜皮葺。

1296年(永仁四年)建立。八重則光・則定という大工による造営。国指定重要文化財。岐阜県内でも最古級の建造物です。

案内板(北方町教育委員会)によると“勾配ゆるやかな屋根と腰の均整が優美で、明治神宮の楼門はこの楼門を範としたほどの名建築です”とのこと。

 

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下層。

柱は円柱。鎌倉期のものだからか、柱は太めの材が使われています。

左右の柱間に安置されている仁王像(木造金剛力士像)は両者とも鎌倉期の作で、2体で国重文に指定されています。案内板によると“伝、運慶の作”らしいですが、真偽のほどは不明。

 

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中央、通路の柱間。

柱上の組物は三手先で、上層の縁の下を受けています。

柱の上部には頭貫が通り、中備えは間斗束が使われています。

 

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向かって左の柱。

見てのとおり、頭貫に木鼻が使われていません。また、長押も使われていません。

長押をいっさい使わずに貫を使っているところは鎌倉以降の技法ですが、細部意匠は混じり気のない純粋な和様となっていて、古式で格調高い造り。明治神宮楼門のモデルになったのも納得がいきます。

 

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側面は横板壁。

目立った意匠はありません。

 

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上層。

こちらも柱は円柱。柱間は、この写真だと見えないですが板戸と連子窓になっていました。

扁額は退色していて判読できず。

 

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柱上の組物は尾垂木三手先。隅の組物からは尾垂木が大きく突き出ているのが印象的。

持ち出された桁の下には軒支輪と格子の小天井。

軒裏は二軒繁垂木。

縁側は切目縁で、跳高欄が設けられています。

 

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内部手前、向かって左側の様子。

組物のあいだに虹梁が渡されています。

写真中央奥の斜め方向の梁には蟇股が使われています。この楼門では数少ない装飾的意匠。

 

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背面。

下層の背面側は何もない空間となっています。

上層の背面側は正面とほぼ同じ。

 

参道と鐘楼

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楼門から本堂へは、数十メートルの参道が伸びています。

 

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池のそばに鎮座する観音像。魚供養の観音らしく、鯉を抱えています。

 

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参道左手には鐘楼。

入母屋、桟瓦葺。下層は袴腰。

 

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下層の袴腰が黒一色の下見板であるのに対し、上層は紅白を基調とした配色。

上層の柱は円柱。軒裏は二軒繁垂木で、扇垂木となっています。

 

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円柱は上端が絞られていません。

頭貫木鼻は拳鼻。頭貫の上に台輪が通っています。

柱上の組物は尾垂木二手先。桁下には軒支輪。

 

本堂(観音堂)

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境内の奥には本堂。

入母屋、向拝1間、桟瓦葺。

公式サイトによると平成後期の造営のようです。

本尊は聖観音菩薩。

 

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向拝柱は几帳面取り。

木鼻は正面が唐獅子、側面が獏。新しいもののだけあって、きれいな造形。

 

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水引虹梁の中備えは蟇股。鯉にまたがった仙人らしき人物像が彫られていますが題材不明。

蟇股とその上の大瓶束だけ材が黒ずんでいますが、これは古材を再使用したのでしょう。

 

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向拝柱と母屋は、ゆるやかにカーブした海老虹梁でつながれています。

向拝側の軒裏には手挟。菊が彫られています。

母屋柱は円柱。

 

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正面3間に対し側面は5間。壁面はしっくい塗り。

破風板の拝みには三花懸魚。

 

三重塔

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本堂向かって右側には三重塔。

三間三重塔婆。屋根葺きの確認を失念してしまいましたが、銅板葺か鉄板葺と思われます。

造営年不明。文化財指定もないようなので、近現代のものでしょう。

紅白を基調とした配色で、安土桃山時代の作風を意識したような外観。

 

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初重正面。柱の間隔が狭く、腰高な印象。

柱は円柱。中央は板戸、左右は緑色の連子窓。

縁側には擬宝珠付きの欄干が立てられています。

 

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柱には長押が打たれています。頭貫木鼻はありません。

柱上の組物は尾垂木三手先。桁下には軒支輪と小天井。

中備えは、中央の扉の上にのみ間斗束が置かれています。

 

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二重および三重。

各所の意匠は初重とほぼ同じ。ただし欄干は跳高欄になっています。

軒裏はいずれの重も二軒繁垂木。

 

以上、円鏡寺でした。

(訪問日2021/06/26)

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