今回は山梨県富士河口湖町の常在寺(じょうざいじ)について。
常在寺は河口湖の南岸、冨士御室浅間神社の参道の隣に鎮座している法華宗本門流の寺院です。山号は霊鷲山。
創建は不明。もとは真言宗の寺院だったようですが、日蓮によって日蓮宗に改宗されたようです。境内伽藍はほとんどが近現代のもので、境内の敷地と思しき場所には神社本殿が納められた西区公民館があります。
現地情報
所在地 | 〒401-0302山梨県南都留郡富士河口湖町小立139(地図) |
アクセス | 河口湖駅から徒歩30分 富士吉田ICから車で20分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
山門
常在寺の境内は東向き。
住宅地の生活道路に面しており、冨士御室浅間神社の参道に背を向けて鎮座しています。
山門は一間一戸の四脚門、入母屋、正面軒唐破風付、銅瓦葺。
四脚門ではめずらしい入母屋で、常在寺のすぐ近くにある妙法寺の山門を小型化・簡略化したような造り。
控柱は角面取りの角柱。
虹梁は無地で、木鼻は繰型のつけられた古風な形状のもの。
組物は出組。虹梁中備えにも出組が配置されています。一手先に持出された軒桁の下には軒支輪。
唐破風の棟は古風な板蟇股で受けられ、その左右には菊水の彫刻。
破風板、瓦、鬼板、棟には桔梗の紋。
破風板の兎毛通は猪目懸魚。桁隠しはありませんが、唐破風の桁の木口は飾り金具でカバーされています。
主柱は円柱。四脚門のセオリーに則っています。
扉は桟唐戸。格狭間は菱形のパターンで、桔梗の紋がついています。
主柱の上には梁がわたされ、中備えは板蟇股。こちらも桔梗の紋。
内部は格天井。鏡板は木目の向きを縦横互い違いに配置しています。
本堂などの伽藍
参道左手には鐘楼。入母屋、桟瓦葺。
鐘楼にしてはめずらしく、円柱が使われています。
虹梁は白い線で唐草が彫られ、中備えの蟇股ははらわたに白い蓮のような彫刻があります。
柱の上部には頭貫と台輪が通り、両者に木鼻がついた禅宗様木鼻。頭貫木鼻の繰型がちょっと風変わりだと思います。
柱上の組物は出三斗、中備えは平三斗。
内部は格天井、軒裏は二軒まばら垂木。
扁額は篆書体で「梵鐘」。
破風板の拝みには卍のパターン(紗綾菱)。懸魚は鰭のついた猪目懸魚。
大棟の鬼板は大きな台形でかなり目立つシルエット。
鬼板や鳥衾には桔梗紋。
参道右手には宝物庫。妙法寺と同様、八角形の平面。
案内板によると鎌倉期の「金銅薬師如来立像」が町指定文化財とのこと。
本堂はRC造、入母屋、向拝1間、本瓦葺。
向拝柱は几帳面取り。虹梁木鼻は繰型がつけられています。中備えは竜の彫刻。
母屋の扁額は「常在寺」。
軒裏は二軒まばら垂木。白地の板に細い化粧垂木が付き、あっさりとした軽快な軒裏です。
母屋柱は角柱。
向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。
西区公民館の本殿
常在寺本堂の左隣(南)には「西区公民館」の扁額(表札?)のついた建物。
公民館の後方につながった覆い屋の中には神社本殿があります。
調べても社名がわからないので、便宜的に「西区公民館の本殿」としています。
本殿は、一間社流造、向拝1間・軒唐破風付、屋根葺不明。
一間社流造で軒唐破風付は私の観察だと江戸後期のものに多く、彫刻の作風もその頃のものに見えるので、江戸後期から明治期の造営と思われます。
向拝柱は几帳面取り、木鼻は見返り唐獅子。
向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。手挟は繰型が彫られただけのシンプルなもの。
母屋正面の扉は板戸。
組物は出組で、中備えにも組物が配置されています。
以上、常在寺でした。
(訪問日2020/12/18)