甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【富士河口湖町】妙法寺

今回は山梨県富士河口湖町の妙法寺(みょうほうじ)について。

 

妙法寺は河口湖の南岸に鎮座している法華宗本門流の寺院です。山号は蓮華山。

創建は1269年(文永6年)で、日蓮によって開かれた法華堂が起源とのこと。何度かの移転を経て1559年に現在地に再興されています。明治期には火災で伽藍を焼失しており、現在の伽藍はいずれもその前後のものです。

 

現地情報

所在地 〒401-0302山梨県南都留郡富士河口湖町小立692(地図)
アクセス 河口湖駅から徒歩30分
富士吉田ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

山門

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妙法寺の境内は南向き。入口は集落の生活道路に面しています。

境内入口に建つ山門は四脚門形式ですが、非常に独特な凝った造りをしています。

様式は一間一戸の四脚門、入母屋(平入)、正面千鳥破風付、正面背面軒唐破風付、銅板葺。

詳細な造営年は不明ですが、1886年(明治19年)に伽藍を焼失しているので、その後の再建でしょう。

 

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軒裏は二軒繁垂木、軒唐破風まで付けられており、四脚門としては異質かつ規格外の物件。左右には袖塀もついています。

 

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前後の控柱は几帳面取り角柱。柱についた木鼻は見返り唐獅子。

虹梁には菊花のついた唐草が彫られ、下部は菊が彫られた持ち送りで受けられています。

虹梁中備えは出組と波の蟇股。桁下には軒支輪。

唐破風の軒下は、四角い大瓶束と波の笈形。

 

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柱の下部は、四角い礎盤を介して礎石に載っています。

 

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見えづらいですが側面も梁の周りは正面とほぼ同じ造りをしています。

左右の袖塀もしっかりとした垂木や腕木、梁があり、決して手抜きではない造りです。

 

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主柱は円柱で、ここだけは律義に四脚門のセオリーを踏襲しています。

控柱と主柱のあいだには格狭間。輪違をベースにした幾何学的なパターン。

格狭間は桟唐戸の上部に使われることが多い意匠ですが、ここでは欄間の意匠として単体で使われています。

右に見える門扉は桟唐戸。紋は三羽の雀を図案化したような、あまり見かけないもの。

 

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内部。写真右が正面側、左が背面側です。

柱の上には虹梁がわたされ、ふつうの唐草が彫られています。虹梁の下部は繰型のついた持ち送りで受けられています。

虹梁の下にも雲状の意匠の大きな板材があります。このような部材は初めて見たので、どう呼称したら良いのかわからず困惑。

虹梁の上の中備えは蟇股で、こちらも雲の意匠。

 

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内部を正面側から見た図。

柱の上部に通された頭貫には、花菱の文様が彫られています。

梁の上には三猿の彫刻。

天井は組物と軒支輪で持ち出された折り上げの格天井。

 

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背面。

唐破風の兎毛通は波。破風板には金色の鶴の紋がついています。

 

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右側面(東面)と入母屋破風。

破風板の拝みには鰭のついた蕪懸魚、紋は前述の鶴と三羽の雀。

軒下は非常に凝った意匠でしたが、屋根や軒反りもそれに見劣りしない優美な曲面構成となっています。

 

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山門の裏には手水舎。銅板葺、切妻。

あっさりした作風で、濃厚な内容の山門とくらべると落差を感じます。

木鼻は繰型のない古風なもの。柱上には台輪がまわされ、組物は出三斗。

一重まばら垂木で化粧屋根裏。破風板の拝みには蕪懸魚。

 

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手水舎の隣には八角形の堂。

扁額の字が読めなかったので経蔵かと思いましたが、右の面に「御宝蔵」とあり、宝物庫のようです。

 

本堂

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境内の中心部には大規模な本堂が鎮座しています。

桁行5間・梁間6間、入母屋(平入)、向拝3間、桟瓦葺。

1899年再建。町指定文化財。

本尊は十界曼荼羅。

 

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正面の向拝は3間。

向拝柱は几帳面取り。虹梁の若葉は菊水が彫られています。中備えは竜の彫刻。虹梁下部には波の持ち送り。

木鼻は正面が唐獅子、側面が獏。

 

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母屋正面中央の扁額は「妙法寺」。

向拝と母屋をつなぐ懸架材(海老虹梁など)はありません。

母屋柱は上端が絞られた円柱。頭貫には繰型が彫られ、柱上には台輪がまわされています。

組物は尾垂木三手先。桁下には白い軒支輪と波が彫られた板支輪。組物のあいだの中備えは蟇股(題材不明)。

 

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頭貫木鼻は雲の意匠。

組物の尾垂木は先端が平らで、和様の尾垂木となっています。

軒裏は二軒繁垂木。

 

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縁側は切目縁が4面にまわされています。欄干は擬宝珠付き。

縁の下は木鼻のついた縁束で支えられています。

縁束の木鼻は、掃除用と思しきハシゴをひっかけるために使われていました。

 

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入母屋破風の内部は二重虹梁になっています。

大虹梁は3つの出三斗で受けられ、その上には3つの大瓶束。大瓶束のあいだには連子窓がついています。

大瓶束の組物は出組で、二重虹梁を持出ししています。二重虹梁の下には軒支輪、上は笈形付き大瓶束。

破風板の拝みは鰭のついた黒い蕪懸魚。

 

三十番神堂

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境内左手(西側)には二層構造の奇妙な建物があります。

案内板には「三十番神堂」とありますが、この中にある社殿のことです。

 

内部に収められている三十番神堂は、入母屋(平入)、向拝1間、屋根葺きは不明。

1890年再建。棟梁は勝呂万之助浪義。町指定文化財。

祭神は三十番神。神仏習合の時代の日蓮系の神々です。

 

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覆いの中にあるため全体像はわかりませんが、多数の彫刻で飾られていることがわかります。

彫刻については、案内板によると下記のとおり。

 この堂は法華経守護の三十番神像(三十躰)を祀る堂宇であり、明治二十三年、伊豆の宮大工、勝呂万之助浪義の手による折衷様の建築である。

 各細部にわたっては極めてすぐれた技能を示す彫刻が配施され、明治期における日本建築最後の傑作とみるべき貴重な建造物である。

富士河口湖町教育委員会
富士河口湖町文化財審議会

 

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三十番神堂の向かいには、参道のほうを向いた廻り舞台があります。

宝形、銅板葺。

本堂と同様、1899年頃の再建とのこと。町指定文化財。

戸板で締め切られているため、内部の廻り舞台は見られませんでした。

 

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最後に、山門の本堂側から見た富士山。

 

以上、妙法寺でした。

(訪問日2020/12/18)

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