甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【岡崎市】妙源寺

今回は愛知県岡崎市の妙源寺(みょうげんじ)について。

 

妙源寺は岡崎市の住宅地に鎮座する浄土真宗の寺院です。山号は桑子山。

創建は1258年とされ、安藤信平によって開かれた妙眼寺が前身。三河一向一揆のさいに徳川家康を助けたため現在の寺号に改称し、江戸期には幕府から庇護を受けたようです。寺宝として多数の文化財を有し、伽藍は室町中期の柳堂が国重文に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒444-0931愛知県岡崎市大和町沓市場65(地図)
アクセス 西岡崎駅から徒歩5分
岡崎ICから車で20分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

薬医門

妙源寺薬医門

妙源寺の境内は南東向き。

境内入口には薬医門。一間一戸、薬医門、切妻、桟瓦葺

 

楼門

妙源寺楼門

薬医門をくぐると境内が二手にわかれています。まずは楼門と本堂のほうから。

こちらの楼門は三間一戸、楼門、入母屋、桟瓦葺。

 

楼門下層

下層。

石の台に柱が立てられ、軸部は前後に連結されています。軸部を左右につなぐ貫がないのがちょっと変わっています。

 

楼門下層

柱の上部は虹梁でつながれ、虹梁の木鼻は渦状の繰型のついた拳鼻。

柱上の組物は三手先で、持ち出された桁が上層の縁側を支えています。組物と組物のあいだには間斗束。

 

楼門上層

上層。組物の下に後補と思われるつっかい棒が設けられています。

中央の間口の柱間(写真右)は両開きの桟唐戸。そのほかの柱間は壁板が横方向に張られています。

頭貫の木鼻は拳鼻で、柱上の組物は和様の尾垂木が出た三手先。組物のあいだには間斗束。軒裏は二軒の平行繁垂木。

 

本堂

妙源寺本堂

楼門の先には本堂が鎮座しています。本尊は阿弥陀如来。

本堂は入母屋、向拝1間、桟瓦葺。

広々と横に伸びた向拝と、極太の水引虹梁が力強い印象を与えます。

 

四脚門

妙源寺四脚門

境内の南側には四脚門と国重文の柳堂があります。

四脚門は一間一戸、四脚門、切妻、鉄板葺

柱はいずれも円柱。たいていの四脚門は前後の控柱に角柱を使うのですが、この門は円柱が使われています。

 

妙源寺四脚門

控柱についた木鼻は拳鼻。柱上には出三斗が置かれ、手挟が軒裏を受けています。

親柱と梁の上では、大瓶束に載せられた出三斗が棟を受けています。

 

柳堂

妙源寺柳堂

門の奥には柳堂(やなぎどう)が鎮座しています。柳堂という名前は、堂の前に柳の大樹があったのが由来。

柳堂は桁行3間・梁間3間、寄棟、向拝1間、檜皮葺。

国指定重要文化財。附(つけたり)に厨子と須弥壇と棟札があるようです。

案内板によると、造営年代は室町中期の1400年代前半とのこと。詳細および内部の様子は下記のとおり。

(※前略)

建立年代は明らかではないが、残存する棟札によると、現在の堂は正和三年(1314)から慶長十八年(1613)までの再建と考えられる。三間四方、寄棟造、檜皮葺、向拝一間付で、内部は仏壇表に禅宗様須弥壇を置き、その上に一間入母屋造の厨子を安置し、簡素な棹縁天井が低く張られている。様式的には十五世紀前半(室町時代)のものであり、浄土真宗寺院の初期の建築様式がよく残る、きわめて貴重な建造物である。

明治三十六年四月十五日指定

岡崎市教育委員会

 

妙源寺柳堂

建築様式は寄棟ですが、屋根がやや高めに造られているからか大棟が短くなっています。屋根の四隅は軽めの反りがついています。室町期らしい調和の取れたバランスだと思います。

手前の石柱は「國寶柳堂」。ここでいう国宝(國寶)は戦前の法律で指定されたいわゆる旧国宝で、現在の国重文のこと。

 

柳堂向拝

向拝の軒下。

向拝の桁を支える向拝柱は、無地の虹梁でつながれています。虹梁の中備えには蟇股(かえるまた)が配置されており、内側には題材不明の植物が彫られています。室町中期のものなので彫刻はあまり立体的な造形ではありません。

 

柳堂向拝

向拝柱はC面取り(角面取り)された角柱。C面の幅が大きく取られています。このC面の幅は時代が下るにつれて小さくなってゆく傾向があります。

案内板によれば室町中期の造営とのことですが、おそらくこの面取りや前述の蟇股から年代を推定したのでしょう。

 

虹梁の木鼻は拳鼻。うっすらと繰型(渦巻きの彫り)がついています。

柱上の組物は連三斗。

 

柳堂側面

母屋の右側面。

柱間は桟唐戸、蔀戸、横板壁が立てつけられています。

軸部は貫と長押で固定されていますが、頭貫には木鼻がついていません。

母屋柱は円柱で、柱上の組物はシンプルな三つ斗。組物のあいだには間斗束。軒裏は二軒の平行繁垂木。

 

桟唐戸は禅宗様の意匠ですが、それを除けばほとんどが和様の意匠で構成されており、室町初期にしてはやや古風な造りと言えるのではないでしょうか。

 

柳堂背面

背面。中央には桟唐戸がついています。

軒下の意匠は正面や側面と同じ。

縁側は切目縁が4面にまわされています。欄干は擬宝珠付き。床下は縁束。

 

以上、妙源寺でした。

(訪問日2020/09/12)