今回は山梨県市川三郷町の弓削神社(ゆげ-)について。
弓削神社は町中央部の住宅地に鎮座しています。別名は二之宮(甲斐国ではなく市川三郷の二の宮という意味)。
創建は不明。延喜式内社に比定されています。ヤマトタケルが東征の帰途に酒折宮(甲府市)に立ち寄り、従者に靭部(ゆげいのとものお)の支配を任せたのが神社と社名の由来のようです。巨摩郡と八代郡の境界近くにあるため、時代によって何度か所属・管轄が変わっているとのこと。
境内には江戸後期の随神門のほか室町後期のものとされる本殿があり、3棟が町指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒409-3601山梨県西八代郡市川三郷町市川大門6373(地図) |
アクセス | 市川大門駅から徒歩15分 増穂ICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
随神門
弓削神社の境内は西向き。少しめずらしい方角を向いています。
社号標は「郷社 弓削神社」。
鳥居は木造の両部鳥居。主柱は内に転びがつき、稚児柱には屋根が設けられています。扁額はありません。黒い笠木の上には桟瓦の屋根。
随神門は三間一戸、楼門、入母屋、桟瓦葺。
下層は水引虹梁のあいだの柱が2つとばされ、柱間1間となっています。甲府盆地周辺の楼門でよく見られる造り。
大棟の紋は抱き茗荷のようなシルエットの中央に剣が描かれたもの。
1830年(天保元年)の造営(拝殿のパンフレットより)。
町指定有形文化財。
下層。柱は円柱。
虹梁には唐草が彫られ、木鼻は正面に唐獅子。
組物は二手先。柱間には巻斗。
上層。こちらも円柱。
中央の柱間には板戸。頭貫木鼻は象鼻。
組物は木鼻の入った出組。持ち出された桁の下には板支輪があり、雲状の意匠が彫られています。
軒裏は二軒まばら垂木。
参道右手には手水舎。
切妻、銅板葺。
拝殿
拝殿は入母屋、向拝1間、銅板葺。
町指定有形文化財。
向拝柱は角面取り。柱上には連三斗。
虹梁中備えは板蟇股、木鼻は拳鼻。
母屋扁額は「弓削神社」。
向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。母屋側は束の上部に取りついていて、かなり高い場所を通っています。
縋破風は唐草と眉が彫られています。桁隠しには蕪懸魚があり、鰭は植物の葉のような意匠。
妻壁には出三斗と板蟇股、妻虹梁の上は角柱の束。
破風板の拝みには鰭のついた蕪懸魚。
大棟鬼板には鬼面。
本殿
拝殿の後方には玉垣に囲われた本殿が鎮座しています。
桁行3間・梁間2間、三間社流造、銅板葺。向拝の間数は不明。
パンフレットによると1556年(弘治二年)建立とのこと。
祭神はニニギ、コノハナノサクヤ、ホオリ、ヤマトタケル、そして創建の由来となった大伴武日命(おおとものたけいのみこと)。
向拝部分はベニヤ板で塞がれ、観察できない状態。
母屋柱は円柱。軸部は貫と長押で固定されています。頭貫に木鼻はなく、ここは簡素かつ古風。
柱上には平三斗と連三斗。中備えなし。
縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。脇障子に彫刻はありません。
妻壁は豕扠首。
背面は3間。こちらも目立った意匠はありません。
母屋柱の床下は八角柱になっていました。
左側面(南面)の妻壁。
破風板の拝みと桁隠しには、鰭のついた蕪懸魚。
大棟は箱棟で、鬼板には鬼面がついていました。
この本殿はパンフレットによると室町後期1556年の建立とのことで、事実なら県内でもかなり古い建築(上位10~20位くらい)になります。
しかしあまり室町期らしい意匠が見当たらず、かといって室町期説を否定するような材料も見つからず、私としては釈然としないもやもやが残る社殿でした。
以上、弓削神社でした。
(訪問日2021/01/30)