今回は長野県木曽町新開黒川(くろかわ)の白山御嶽神社(はくさん おんたけ-)について。
白山御嶽神社は木曽と高山を結ぶ国道361号線の沿道の里山に鎮座しています。
創建については詳細不明ですが、鎌倉末期と伝えられています。社殿は、立川流の宮大工によって造られた二間社の本殿があり、明治期の新しいものですが多数の彫刻が配されていて派手で見応えのある内容になっています。
現地情報
所在地 | 〒397-0002長野県木曽郡木曽町新開7553−ロ(地図) |
アクセス | 塩尻ICから車で1時間 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
境内の入口には木造の両部鳥居が立っています。扁額は「白山神社 御嶽神社」。
鳥居は東向きですが、拝殿や本殿は南向きとなっています。
参道を進むと拝殿の右側面(東面)に行き当たります。
拝殿は銅板葺の切妻。向拝1間。
向拝の軒下。扁額は「白山神社 上御嶽神社」。
写真左奥にあるのは花火筒で、案内板(木曽町の設置)によると大正中期まで「花火講」なる集まりがあって各集落で競うように花火を打ち上げたとのこと。
本殿
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の二間社流造(にけんしゃ ながれづくり)。正面2間・側面1間、軒唐破風(のき からはふ)の向拝1間。
案内板によると1885年(明治十七年)の造営で、当地の出身で立川流に学んだ宮大工・斎藤常吉が棟梁とのこと。
祭神は白山神にあたる菊理媛命(ククリヒメ)と、御嶽神社の祭神であるオオナムチ(大国主)とスクナビコナの計3柱。
向拝の軒下。
正面の軒先を支える向拝柱は、几帳面取りされた角柱。正面には錫杖彫りが施されています。柱についた木鼻は、正面は唐獅子、側面は象。
向拝柱は虹梁(こうりょう)でつながれており、その上では組物が正面の唐破風を受けています。中備えの彫刻は通玄仙人の「瓢箪から駒」が題材。
見切れてしまっていますが、写真上端の万寿頭では力神がふんばったポーズで唐破風の棟を受けています。
向拝柱(左)と母屋(右)をつなぐ梁には竜の彫刻。こちら側(東面)は昇り龍、反対側は降り龍となっています。
竜の彫刻の上方では、牡丹が籠彫りされた手挟(たばさみ)が垂木を受けています。
母屋の正面には木階(きざはし)が5段。その下の空間にも波の彫刻が配置されています。木階の下には浜床。
つづいて母屋。白山神社と御嶽神社が一体になっているので、母屋の正面には両開きの桟唐戸(さんからど)が2組立てつけられています。
正面の間口が2つあるため、この本殿は二間社というちょっとめずらしい規模のものになります。ちなみに、ほとんどの神社本殿は一間社か三間社です。
向拝には角柱が使われているのに対し、母屋は円柱で構成されています。
見えづらいですが桟唐戸の両脇や頭貫の上にも小さな彫刻が配置されています。
左側面の妻壁。
柱上の組物は二手先の出組。持出しされた妻虹梁の下には、波や雲の彫刻と蟇股(かえるまた)が見えます。小さくてほとんど見えませんが、蟇股の内部は梅に鶯の彫刻。反対側の蟇股は竹に雀でした。
妻虹梁の上では、雲の意匠の笈形(おいがた)が添えられた大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。
縁側は正面と左右の3面にまわされています。欄干は擬宝珠付き。
背面側は脇障子でふさがれており、脇障子の彫刻は右側面が鳳凰、左側面が麒麟。
縁の下は三手先の腰組が支えています。
彫刻は「鯉の滝登り」と降り鯉、そして唐獅子。とくに鯉は躍動感とリアリティのある造形で秀逸だと思います。
背面の軒下。
組物が二手先なのは側面と同様ですが、蟇股は内部に彫刻がない簡素なものになっています。
頭貫の木鼻には、波状の意匠が彫られています。
背面の床下。母屋柱は床下まで円柱に成形されています。
床下の柱間には巻斗がびっしりと並べられ、その下には雲状の蟇股が2つ置かれています。ここに蟇股を使うのはちょっと風変わりに感じます。
最後に本殿の前にある案内板。
上に見切れている大きな案内板は、本殿の彫刻についての解説が書かれています。その下には案内板を縮刷したものがあり、参拝者は縮刷版を手に持って参照しながら本殿を鑑賞することができます。管理者のかたの粋な計らいなので、是非とも使いましょう。
なお、使ってみたところ片手がふさがって、写真を撮るのに不便だったのは内緒です...
以上、白山御嶽神社(黒川)でした。
(訪問日2020/06/27)