今回は山梨県大月市猿橋町(さるはしまち)の三嶋神社(みしま-)について。
三嶋神社(猿橋町)は甲州街道の要衝「甲斐の猿橋」から西へ1kmほどの場所にあり、市街地の国道20号沿いに鎮座しています。
案内板などがなく詳細不明ですが、社名からして伊豆の三島大社(三島市)から勧請したと思われ、本殿は江戸期の甲州風の作風で美麗な外観をとどめています。
現地情報
所在地 | 〒409-0617山梨県大月市猿橋町5(地図) |
アクセス | 猿橋駅から徒歩10分 大月ICから車で10分 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
鳥居と社殿
三嶋神社の境内入口は南向き。境内の手前の道路は国道20号線。
鳥居は石製の両部鳥居。扁額と社号標は「三島大明神」。
鳥居の左側には、反りのついた切妻の手水舎があり、その右奥には神輿が納められた社殿があります。
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。向唐破風(むこう からはふ)の向拝1間。
虹梁の中備えの蟇股(かえるまた)はくり抜かれておらず、菊の紋が描かれていました。鬼板や大棟の紋も菊です。
本殿
拝殿の後方には、屋根で保護された本殿があります。
郡内地方の神社本殿はこういった屋根で保護されているところが多く、鉄柱がやや無粋に感じなくもないですが、鑑賞や撮影が非常にやりやすくてありがたいです。
本殿は鉄板葺の一間社入母屋(いっけんしゃ いりもや)、平入。向唐破風の向拝1間。
造営年代は不明ですが、彫刻などの意匠からして江戸中期以降でしょう。
祭神については、三嶋神社なのでオオヤマツミと事代主が祀られていると思われます。
右正面から見た向拝。
虹梁の上の中備えは龍の彫刻。かなり大胆な造形をしていて、良くも悪くも派手。この造形はいかにも江戸中期・後期あたりの雰囲気です。
向拝柱の木鼻には、正面側は唐獅子、側面は獏の彫刻。両者ともひげやたてがみ、爪などが塗り分けられていますが、全体的に赤っぽいです。
向拝の右側面。
向拝柱と母屋をつなぐ海老虹梁(えびこうりょう)は、高低差があるわけでもないのに湾曲しています。
向拝柱の上では三手先の組物が置かれており、母屋のほう(写真だと右側)では菊が籠彫りされた手挟(たばさみ)が垂木を受けています。
入母屋なので垂木は四方に伸びており、先端は黒く塗り分けられています。
軒を支える組物は、木鼻がついて尾垂木が突き出た三手先の出組。詰組(柱間に置く組物のこと)まで使われていて、この近辺の神社でよく見かけるいかにも甲州らしい作風。
母屋の柱をつないで固定する黒い長押(なげし)には金具がついており、金具には猪目(いのめ)というハート形の切り欠きがついています。長押の上の頭貫には、渦状の意匠の木鼻がつけられています。
母屋の正面には金具のついた黒い板戸が設けられています。
縁側は4面にまわされており、背面をふさぐ脇障子はありません。床はおそらくくれ縁。欄干は金色の擬宝珠付き。床下は暗くなってしまって見えづらいですが、木鼻のついた三手先の組物で支えられています。
右側面の妻壁。
大棟の鬼板には鬼の面。ここも非常に甲州らしい作風といえます。
破風板は赤と黄に塗り分けられており、拝み(中央のいちばん高いところ)から垂れる懸魚は造形こそ良いのですが左半分が破損してしまっています。
破風の内部の妻にも意匠があり、2つの出三斗で虹梁が受けられています。
最後に左後方から見た図。
母屋の壁面はこれといった意匠がなくプレーンな印象。それに対し、小屋組の組物や垂木はにぎやかで派手な印象。
以上、三嶋神社(猿橋町)でした。
(訪問日2020/01/24)