世をひねる

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【大月市】春日神社(七保町)

今回は山梨県大月市七保町(ななほまち)の春日神社(かすが-)について。

 

春日神社(七保町)は大月市北東部の集落に鎮座しています。

境内の雰囲気や拝殿については至って標準的で特筆するほどの内容ではないです。その一方で本殿は白木の彫刻がびっしりと配置された派手な内容。郡内地方の神社本殿は派手好みな傾向があるのですが、その中でも屈指の情報量と密度を楽しむことができます。

 

現地情報

所在地 〒409-0622山梨県大月市七保町1225(地図)
アクセス

猿橋駅から徒歩30分

大月ICから車で10分

駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

鳥居と拝殿

春日神社の鳥居

春日神社の境内入口は南向き。

鳥居は前後に稚児柱のついた両部鳥居。柱の転び(中央への傾き)がやや強めになっています。扁額は「春日宮」。

 

春日神社の拝殿

石段を登ると、鉄板葺の切妻(平入)、向拝1間の拝殿があります。

拝殿の扁額は「春日宮」、賽銭箱の紋は五七の桐。

 

春日神社の手水舎

参道の右側には手水舎

鳥居を前後に2つ並べ、貫で連結したような造り。

屋根にはいちおう垂木がありますが、棟は鳥居の笠木のような意匠。

 

本殿

春日神社本殿

拝殿の裏には覆いのかけられた本殿があります。

本殿は銅板葺の一間社入母屋(いっけんしゃいりもや)、平入。向唐破風(むこう からはふ)の向拝1間。

 

案内板などがないため造営年代は不明。全体に彫刻がびっしりと配置されており、この手の本殿は古くてもせいぜい200年くらい前のものです。なのでこの本殿も江戸後期あたりの新しいものでしょう

祭神は不明ですが、春日神社なのでタケミカヅチや天児屋命(あめのこやねのみこと)などの4柱が祀られていると思われます。

 

春日神社本殿の唐破風

向拝の唐破風の軒下。

正面の唐破風についた兎毛通(うのけどおし)はおそらく鳳凰。

軒下の虹梁(こうりょう)は大量の彫刻で彩られており、虹梁そのものにも立体的なツタの彫刻が使われています。虹梁の上の中備えは龍。

白飛びで見づらいですが向拝柱と向拝との接続部には持ち送りとして菊(?)の意匠の籠彫(かごほり)がついています。向拝柱の木鼻は、正面側が唐獅子、側面が獏。

中備えの龍がやや大味な造形なのに対し、木鼻の唐獅子と獏のほうが流麗な造形をしていると思います。

 

春日神社本殿の向拝

向拝を左側から見た図。写真右が正面側になります。

向拝柱と母屋はゆるやかにカーブした海老虹梁(えびこうりょう)でつながれており、その上では菊の籠彫がなされた手挟(たばさみ)が垂木を受けています。

垂木にかけられた蛍光灯とその配線が無粋だと思うのは私だけでしょうか...?

 

春日神社本殿の正面左の床下

正面左側の縁の下。

階段の側面や縁側の床下にも彫刻が配置されています。それだけでなく縁の下の組物の木鼻にも彫刻があり「隙あらば彫刻」といった造り。

鳳凰と思しき鳥の頭の彫刻が3つ並んだ様は、どこかシュールささえ感じられます。

 

春日神社本殿の軒下

垂木を受ける桁は、尾垂木のついた三手先の出組で持出しされています。柱上に置くはずの組物を柱間に置く詰組(つめぐみ)が使われており、ここは非常に甲州らしい作風。床下と同様、組物には木鼻がついていました。

頭貫の木鼻に唐獅子があるだけでなく、組物と詰組の間の空間にも抜かりなく鳥獣や樹木の彫刻が配置されていました。

 

春日神社本殿の棟

左側面の棟。棟と妻壁では五七の桐の紋が金色に輝いています。

大棟には風穴の開けられた外削ぎの千木、そして四角い部材の鰹木が3本。

 

春日神社本殿の左側面

左壁面。

壁面には牛を連れた老人の彫刻が置かれています。何かしらの故事を題材にしたのでしょう。

正面側の扉の両脇や長押の下にも彫刻。

縁側は4面にまわされており、床板はおそらくくれ縁。欄干は擬宝珠付き。背面をふさぐ脇障子にはやはり彫刻。

 

春日神社本殿の背面

背面にも側面と同様に詰組や唐獅子があります。

壁面の彫刻は、梅(あるいは桃?)の下に豪傑風の男が3人。「桃園の誓い」を思い浮かべましたが、たぶん別の故事でしょう。

 

春日神社本殿の右側面

右壁面の彫刻。

松の木の下で老人2人が碁を打っています。例のごとく私には何が題材なのかわかりません...

 

春日神社本殿の床下

右側面の縁の下。

縁側は三手先の木鼻付き組物で支えられています。床下の柱には龍と唐獅子の木鼻が付けられており、その間の空間にも人物像の彫刻があります。

 

春日神社本殿

最後に右側面の全体図。

屋根裏の垂木や小屋組・縁の下の組物もあいまって、非常に情報量が多いです。隙あらば彫刻がはめ込まれており、どれも主張の強い意匠ばかりで「目の付けどころに困る」本殿になっています。

これを美しいと思うかどうかは人によりけりですが、私はあまり美しいとは思えません。とはいえ見栄えのする力作であるのは確かなので、とにかく派手な本殿が見たいという人にはお薦めできます。

 

以上、春日神社(七保町)でした

(訪問日2020/01/24)

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