今回は山梨県甲州市の玉諸神社(たまもろ-)について。
玉諸神社は甲州市の山際の集落に鎮座しています。
創建は不明ですが、甲府市の玉諸神社とともに延喜式内社に比定されている1社(論社)です。境内や社殿については至って標準的な規模で、式内論社として過不足ない内容です。
現地情報
所在地 | 〒404-0051山梨県甲州市塩山竹森3389(地図) |
アクセス | 勝沼ICから車で15分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
玉諸神社の境内は南向き。
参道の右手にある手水舎は、2本の柱に屋根を載せただけの簡素なもの。鉄板葺の切妻。
鳥居は石造の明神鳥居で、扁額は「玉諸神社」。
参道の途中には随神門が建っています。
随神門は鉄板葺の切妻、正面1間・側面2間・背面3間。柱は角柱。三間一戸。
正面側の1間は壁がなく、梁間にも柱が立てられていません。山梨県の神社の随神門ではよく見られる造り。
大棟には3つの環を組み合わせた輪違紋が描かれていました。
随神門の軒下。軒裏はまばら垂木。
虹梁と木鼻のほか、これといった意匠は見られません。
拝殿と本殿
境内の中央にある拝殿は、鉄板葺の入母屋(平入)、向拝1間。
向拝の軒下。
虹梁(こうりょう)、木鼻、海老虹梁はいずれもシンプルなもの。
扁額は「■威徳」(■部判読できず)。
柱上の組物は舟肘木。母屋の天井を軒先まで伸ばしてあります。向拝の軒裏もまばら垂木。
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は鉄板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年は不明。江戸期以降のものと見て間違いないでしょう。
祭神は天羽明玉命(アメノハアカルタマノミコト)。
流造ですが箕甲(みのこう:屋根の破風ぎわの曲面)の厚みなく、なんとなく味気ない屋根。
大棟には内削ぎで先端が二股に別れた千木と、3本の鰹木。輪違紋が大棟と鬼板にあります。
正面の軒先を支える向拝柱は、几帳面取りされた角柱。柱上の組物は出三斗(でみつど)。
2つの向拝柱は虹梁でつながれており、虹梁の上の中備えにはくり抜かれていない蟇股(かえるまた)が見えます。向拝柱の側面には木鼻がありますが、正面側には木鼻はつけられていません。
向拝柱と母屋(写真右奥)の柱は、ほぼまっすぐな梁でつながれています。
向拝は角柱が使われているのに対し、母屋は円柱で構成されています。
扉は母屋正面の柱間ではなく、少し奥まった場所に立てつけられています。
母屋の正面には木階(きざはし:角材の階段)があり、神社本殿の木階としてはかなりゆるやか。それにともなって昇高欄(のぼりこうらん:階段の手すり)もやや間延びした印象。
縁側は、壁面と直交に板を張った切目縁(きれめえん)が4面にまわされています。背面側は脇障子が立てられてふさがれています。欄干は擬宝珠付き。床下は縁束。
妻壁。
妻虹梁は組物によって二手先に持出しされています。持ち出された梁には波の模様が描かれていて派手。
その一方で、妻虹梁の上では古風な豕扠首(いのこさす)がつかわれていて、二手先の派手な妻虹梁から一転して地味な意匠に。たいていの場合、ここは豕扠首ではなく大瓶束をつかうのが普通だと思います。
破風板から垂れ下がる懸魚(げぎょ)にはハート形を逆さにした穴(猪目)が開けられていて、写真左右の桁隠しの雫型の穴もよくみるとハート形でした。
背面。こちらにも縁側がまわされています。
母屋柱の床下を見てみたところ、床上は円柱ですが床下は四角柱になっていました。
以上、玉諸神社でした。
(訪問日2020/05/24)