甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【笛吹市】石和八幡宮

今回は山梨県笛吹市の石和八幡宮(いさわ はちまんぐう)について。

 

石和八幡宮(石和八幡神社)は石和の市街地に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると第12代・景行天皇の時代に創建され、「物部神社」として崇敬を集めたらしいです。1192年(建久三年)には甲斐国守護に任命された武田信光によって、鎌倉の鶴岡八幡宮から八幡宮が勧請されました。室町後期には武田信虎(信玄の父)が本拠地を石和館から躑躅ヶ崎館(甲府市の武田神社の前身)へ移転しましたが、本拠地移転後も武田氏の崇敬がつづきました。甲州征伐では織田氏の攻撃を受けて荒廃しますが、徳川氏や浅野氏により復興され、歴代の甲府藩主の崇敬を受けました。

現在の主要な社殿は、平成中期の火災ののち、2009年に再建されたものです。また、社宝として所蔵される江戸時代の絵馬が市の文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒406-0031山梨県笛吹市石和町市部1094(地図)
アクセス 石和温泉駅から徒歩20分
一宮御坂ICから車で20分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

鳥居と随神門

石和八幡宮の境内は南向き。入口は石和市街の幹線道路に面していて、向かって右側(東側)へ300メートルほど行くと遠妙寺があります。

入口には縄鳥居と石橋がかかり、その先に木造両部鳥居があります。両部鳥居の扁額は「八幡宮」。

 

参道左手には手水舎。

切妻、銅板葺。

 

参道の途中には随神門があります。

桁行正面1間・背面3間、梁間2間、三間一戸、八脚門、切妻、鉄板葺。

 

左右の柱間には随神像、中央の柱間は通路で、三間一戸の構造です。ただし正面側は通路部分の柱を省略しており、柱間が1つだけとなっています。このような構造の門は甲府盆地周辺でよく見られます。

大棟の紋は三つ巴です。

 

正面の虹梁。

中央の中備えは板蟇股。その左右の、本来ならば柱のある位置には、平三斗が置かれています。

蟇股と平三斗は、1本の通肘木を共有しています。

 

右手前の隅の柱。

柱はいずれも面取り角柱。側面には拳鼻。

 

右側面。

組物は、正面側(写真左)の柱では出三斗が使われ、実肘木で梁を受けています。対して中央と後方の柱の上は、舟肘木が使われています。

虹梁の上の妻飾りは、笈形付き大瓶束のような部材が使われています。

破風板の拝みと桁隠しには蕪懸魚。

 

内部の通路の左右には主柱が立ち、梁の上に蟇股が置かれています。蟇股には、波や菊と思われる彫刻が入っています。

 

拝殿と本殿

参道の先には拝殿が鎮座しています。

切妻、向拝1間、銅板葺。

 

向拝の虹梁中備えは蟇股。

中央には三つ巴をアレンジした意匠が配され、その周りは渦状の若葉となっています。

 

向かって右の向拝柱。

柱は面取り角柱で、上端が絞られています。正面と側面には木鼻。

柱上の組物は平三斗。

 

向拝柱と母屋柱は、海老虹梁でつながれています。

母屋柱も面取り角柱で、柱上は斗と舟肘木が使われています。

母屋正面の扉の上の扁額は「八幡宮」。

 

側面は3間。

正面および側面の柱間は、連子窓と引き戸が使われています。

妻飾りは豕扠首。

縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は跳高欄。

 

拝殿の後方には幣殿(写真左の低い屋根)がつづき、本殿につながっています。

幣殿は、両下造、銅板葺。

本殿は、切妻、銅板葺。

拝殿、幣殿、本殿、いずれも2009年の造営のようです。

 

本殿は側面2間。

柱はいずれも円柱で、頭貫に木鼻があります。柱上の組物は出三斗と平三斗。

虹梁の上の妻飾りは蟇股で、三つ巴の紋が描かれています。

 

背面は3間。

大棟には千木と鰹木。千木は外削ぎのものが2つ。鰹木は円柱形のものが5つあります。

 

境内社

境内の東側には境内社が並立しています。

こちらは拝殿と本殿の右側にある稲荷社の鳥居。

 

中央が稲荷社の社殿。

左は摂社・和珥臣社(わにのおみしゃ)で、案内板*1によると当社の前身にあたる神社らしいです。

 

稲荷社の右側にも名称不明の末社があります。

写真左の社殿は、母屋の正面に4組の扉があり、四間社というめずらしい造りです。

 

以上、石和八幡宮でした。

(訪問日2024/03/16)

*1:設置者不明