甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【栄町】駒形神社

今回は千葉県栄町の駒形神社(こまがた-)について。

 

駒形神社は安食地区の住宅地の丘に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると1151年(仁平元年)、大浦朝臣廣足という人物が当地に保食神を祀ったのがはじまりとされます。近世までの沿革は不明。1786年に書かれた当村の検地の明細表に「駒形明神」とあり、遅くとも江戸中期には確立されていたようです。年代は不明ですが「川崎神社」と改称し、のちに現在の社号に改められました。

現在の境内は江戸後期から戦後にかけてのもの。本殿は彫刻で満たされた江戸後期の流造で、町の文化財となっています。また、境内にある御神木は内部がくり抜かれ、胎内くぐりができるようになっています。

 

現地情報

所在地 〒270-1516千葉県印旛郡栄町安食1(地図)
アクセス 安食駅から徒歩20分
成田スマートICまたは下総ICから車で25分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

拝殿

駒形神社の境内は南西向き。境内は集落の一画の丘の中腹にあります。

入口には石造の明神鳥居。扁額はなく、額束になっています。

 

参道右手には手水舎。

切妻、銅板葺。

木鼻や懸魚などの意匠が使われています。

 

二の鳥居。石造明神鳥居で、扁額は「駒形神社」。

 

拝殿は、入母屋、向拝1間、銅板葺。

1969年再建。

 

向拝柱は糸面取りの角柱。側面には象鼻。柱上の組物は出三斗。

向拝と母屋はまっすぐな梁でつながれ、梁の母屋側は斗栱で持ち送りされています。

 

虹梁は眉欠きだけがついた無地のもの。中備えは蟇股。

 

拝殿左手から奥の本殿へ向かうと、御神木があります。2019年に台風で倒伏してしまったとのこと。

右が切り株、左が幹の部分。幹は中心部がくり抜かれ、内部をくぐる胎内くぐりができるようになっています。

 

本殿

拝殿の後方には、塀に囲われた本殿が鎮座しています。

一間社流造、銅板葺。

1806年(文化三年)*1または1807年(文化四年)*2の造営。町指定有形文化財。

主祭神は保食神。コノハナノサクヤビメとスサノオが合祀されています。

 

向拝は1間。虹梁には若葉の絵様が彫られています。

角度がついていて見づらいですが、虹梁中備えには竜の彫刻が配されています。

 

反対側、左側から向拝を見た図。

向拝柱は几帳面取り角柱。側面には唐獅子の彫刻。正面には菊らしき植物の籠彫りがついています。

 

写真手前の向拝柱には、菱形の文様が彫られています。

奥の母屋は正面に扉が設けられ、扉の上や左右に樹木の彫刻が入っています。母屋柱は円柱が使われています。

 

母屋左側面の彫刻。

題材は二十四孝の「唐夫人」。歯が抜けてものを噛めない義母に、乳を飲ませてやるという逸話です。

 

縁の下は三手先の腰組で支えられています。

床下の欄間には、波に亀の彫刻。

 

背面の彫刻。

題材はおそらく二十四孝かと思うのですが、二十四孝のどの逸話なのか私には解りません...

 

右側面の彫刻。

題材は二十四孝の「楊香と虎」。親子が虎に襲われ、子が父をかばって進み出ると、虎はその孝心に恐れ入って山へ帰っていったという話。

 

右側面の妻壁。

破風板の拝み懸魚は、内側をくり抜いた繊細な造形。桁隠しの懸魚は雲の意匠。

 

組物は尾垂木三手先。軒下に波板の屋根がかかっていて母屋柱が見えないですが、写真中央の組物は詰組です。

妻飾りは二重虹梁になっていて、大虹梁の上には鳳凰の彫刻。鳳凰の左右の組物は出組で、上の二重虹梁を持ち出ししています。

 

以上、駒形神社でした。

(訪問日2022/11/19)

*1:擬宝珠の刻銘より

*2:棟札の墨書より