甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【京田辺市】佐牙神社

今回は京都府京田辺市の佐牙神社(さが-)について。

 

佐牙神社は市南部の山際の住宅地に鎮座しています。

創建は社伝によると573年(敏達天皇三年)とのこと。平安時代の『延喜式』に記載があり、式内社に列しています。当初は北東の山本地区にあったようですが、永享年間(1429-1441)に現在地へ移転したようです。

現在の本殿は安土桃山時代のものが2棟並立し、国重文に指定されています。また、境内の一角には三山木廃寺跡という遺跡が残されています。

 

現地情報

所在地 〒610-0314京都府京田辺市宮津佐牙垣内164(地図)
アクセス 近鉄宮津駅またはJR三山木駅から徒歩10分
精華下狛ICから車で5分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

参道

佐牙神社の境内は東向き。入口は府道22号線に面し、府道を挟んだ向かいには2本の鉄道(学研都市線と近鉄京都線)が並行しています。

一の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「佐牙神社」。

右の社号標は「式内 佐牙神社」。

 

二の鳥居は木造の両部鳥居。扁額は崩した字体で「佐牙神社」。

 

拝殿

拝殿は切妻、桟瓦葺。

正面および背面の柱間は格子戸で、奥の本殿が透けて見えます。

 

拝殿の右側面(北面)には、孫庇がついています。

妻飾りは豕扠首。角度がついて見づらいですが、破風板に猪目懸魚が下がっています。

 

拝殿の手前、左手には手水舎。

切妻、銅板葺。

 

本殿

拝殿の奥には、塀に囲われた2棟の本殿が鎮座しています。

両者とも、一間社春日造、檜皮葺。

1585年(天正十三年)再建国指定重要文化財

祭神は、向かって左の南殿が佐牙弥豆女神(さがみづめのかみ)、右の北殿が佐牙弥豆男神(さがみづおのかみ)。

 

建築様式や細部の意匠は、左右どちらも同じ。

向拝は面取り角柱。柱上は連三斗。

虹梁の中備えは蟇股、木鼻は拳鼻。

 

向拝柱と母屋柱は、まっすぐな梁でつながれています。梁の上は白い板でふさがれています。

軒裏は、向拝部分の垂木と母屋部分の垂木が板で区切られています。隅木の使われていない、純粋な春日造です。

 

縁側は3面にまわされ、欄干は跳高欄。背面側をふさぐ脇障子は、烏帽子をかぶって刀を差した人物が描かれています。

 

母屋柱は円柱。柱上は出三斗。

軸部は長押と頭貫で固定されています。頭貫木鼻は、繰形のないシンプルなもの。

 

中備えは透かし蟇股。案内板(京田辺市・京田辺市文化財保護審議会)によると“身舎の蟇股は左右対称の図案で室町時代初期と考えられ、旧建物の再利用とみられる”とのこと。

はらわたにはスミレと思しき花が彫られています。平面的で古風な造形ですが、造形も彩色も繊細で美しく、秀作だと思います。

 

破風板の拝みには飾り金具がつき、蕪懸魚が下がっています。

見えづらいですが、破風の奥の妻飾りは板蟇股。

 

三山木廃寺跡

境内の一角には三山木廃寺跡(みやまぎ はいじあと)があります。

周辺では、飛鳥時代後期から平安時代にかけての古瓦が発掘され、かつて当地に寺院があったと考えられます。文献がないため、寺院名は不明。当地は古代の山陽道の沿線で交通の要衝だったことから、大規模な寺院があったと想像できます。おそらく佐牙神社とも関連の深い寺院だったのでしょう。

 

以上、佐牙神社でした。

(訪問日2022/02/24)