甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【京田辺市】白山神社(宮津)

今回は京都府京田辺市宮津(みやづ)の白山神社(はくさん-)について。

 

白山神社は宮津白山地区の山際の田園地帯に鎮座しています。

創建は、社伝によると第26代・継体天皇の時代に西宮神社(兵庫県西宮市)から勧請されたとのこと。かつてはえびす社(夷社、蛭子社)と呼ばれたようです。

境内は鳥居と本殿だけの簡素な内容ですが、白山神社本殿は室町時代後期の造営で、国重文に指定されています。境内の石灯籠や石段にも室町時代の銘があるとのこと。

 

現地情報

所在地 〒610-0314京都府京田辺市宮津白山41(地図)
アクセス 下狛駅、狛田駅または近鉄宮津駅から徒歩15分
精華下狛ICから車で5分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

境内

白山神社の境内は南向き。近隣は田畑になっています。

鳥居は木造の明神鳥居。扁額は「蛭子大明神」。

 

拝殿はなく、後方に見えるのは本殿の覆い屋です。

向かって右に見切れている石灯篭は、1433年(永享五年)の銘があり、重要美術品に認定されているとのこと。写真を撮り忘れてしまったため、詳細は割愛。

 

本殿の覆い屋は、切妻、桟瓦葺。

内部には2棟の本殿(左から末社と白山神社)が収められています。

本殿は両者とも、屋根が厚板で葺かれています。屋根の前面は2枚の板をあわせて造っており、角ばっていてぎこちない外観。

 

白山神社本殿

向かって右は白山神社本殿。国指定重要文化財

一間社流造、板葺。見世棚造。

手書きの案内板によると“石段耳石に永禄二年(1559)の銘があり、建築年代の参考になる”とのことで、具体的な年代は不明。文化遺産オンラインによると1532年(享禄五年)の造営とのこと。

 

祭神は事代主。

えびす神社はヒルコや大国主が祀られることが多く、事代主(大国主の子)をえびすとして祀るのはめずらしいです。また、白山神社というとククリヒメなどを祀ることが多いです。祭神と社伝と社名がまったくかみ合っておらず、なんとも奇妙です。

 

向拝。

虹梁中備えの蟇股には、猪が彫られています。

彫刻は写実的な造形で、比較的新しい年代のものだとわかります。

 

向拝柱は角柱。柱上は出三斗。

 

側面には象頭の木鼻。

シルエットは禅宗様木鼻の象鼻とほぼ同じですが、目や牙や耳がしっかりと造形されていて、後世(安土桃山時代以降)の立体的な象頭の彫刻へと発展してゆく過程が見て取れます。

 

見づらいですが母屋柱は円柱、柱上は舟肘木。

頭貫木鼻はありません。

 

末社本殿

向かって左は末社本殿。

一間社流造、板葺。見世棚造。

 

祭神は大国主。

大国主はえびすと同一視されることが多いです。「白山神社と末社の左右をまちがえたのでは?」「本来はこちらが主祭神だったのでは?」などと勘繰りたくなってしまいます。

 

虹梁などの部材が省かれ、簡略なつくりになっています。

向拝柱は角柱、母屋柱は円柱。

目立った意匠はありません。

 

以上、白山神社(宮津)でした。

(訪問日2022/02/24)