今回は山梨県北杜市の身曾岐神社(みそぎ-)について。
身曾岐神社(身曽岐神社)は小淵沢町の東部に鎮座する教派神道の神社です。
創建は1985年(昭和六十年)。前身となったのは禊教(みそぎきょう)の教祖・井上正鉄を祀った井上神社(東京都台東区上野、1876年創建)で、井上神社を当地に遷座して現在の社号に改めたのがはじまり。2004年には宗教法人かむながらのみちの所有となり、現在に至ります。
境内社殿は新しいものですが、境内は整然としていて独特の雰囲気。本殿は伊勢神宮を踏襲した神明造。能楽殿は檜皮葺で周囲を池に囲まれ、見栄えのする造りになっています。
現地情報
所在地 | 〒408-0041山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3401(地図) |
アクセス | 小淵沢駅から徒歩40分 小淵沢ICから車で10分 |
駐車場 | 50台(無料) |
営業時間 | 09:00-17:00 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 身曾岐神社 |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道と水祥殿
身曾岐神社は小淵沢の山間に鎮座しています。
基本的に車で来ることになるため、かなり広く快適な駐車場が設けられています。駐車場に面した場所に一の鳥居がありましたが、撮り忘れたため割愛。
写真は二の鳥居で、石造の神明鳥居。
参道の途中にある小屋では烏骨鶏が飼われていました。
二の鳥居と駐車場のあいだには水祥殿。車のお祓いをする社殿のようです。
切妻、鉄板葺。柱間に建具がないおかげで太い柱が強調され、力強い印象。
大棟には外削ぎの千木。長方形の風穴が開けられています。
破風板の拝みのあたりには鞭懸(4本の棒)が突き出ています。
影になって見づらいですが、軒下には棟木を直接受ける棟持柱が立てられています。
千木、鞭懸、棟持柱、これらはいずれも神明造の意匠です。
能楽殿
二の鳥居を通って境内中心部へ入ると右手に池があり、能楽殿が西向きに鎮座しています。入母屋、檜皮葺。
水上に建つ姿は厳島神社(広島県廿日市市)を彷彿とさせ、総檜皮葺かつ総ヒノキ造りの贅を尽くした豪華な社殿となっています。
案内板(身曾岐神社の設置)によると“中央に能舞台、向かって右に「貴人席」、左に「橋掛り」から「鏡の間」と設えられた、十五世紀初頭室町時代に能祖世阿弥によって完成された調和ある完全な姿が再現されている”とのこと。よく読まないと「この社殿は室町時代に世阿弥が再現したもの」と誤解しかねない文章です。
造営年は昭和末期から平成初期と思われます。立派な社殿なので、できれば案内板に具体的な造営年を明記してほしかったところ。
中央の「能舞台」を横から見た図。
柱は角柱、柱上は出三斗、中備えは透かし蟇股。
軒裏は二軒まばら垂木、入母屋破風は木連格子で、破風板拝みには梅鉢懸魚。
内部に天井はなく、化粧屋根裏になっています。
向かって右の「貴人席」。切妻、檜皮葺。
こちらは組物や中備えといった意匠は簡略化されています。
向かって左の「鏡の間」と、それをつなぐ「橋掛り」。
鏡の間は入母屋、檜皮葺。
こちらは中央2間に連子窓。ほかは横板壁となっています。
拝殿と本殿
参道の先には拝殿および本殿が南向きに鎮座しています。
こちらは拝殿。切妻、銅板葺。
神明造を意識した直線的な切妻屋根と、左右対称の整然としたファサード。
拝殿の奥には3棟の本殿が鎮座しています。
いずれも桁行3間・梁間2間、三間社神明造、銅板葺。
祭神はアマテラスと井上正鉄。
井上正鉄(いのうえ まさかね、1790-1849)は幕末の国学者・神道家。幕府の寺社奉行から邪教の嫌疑をかけられて流刑になり、三宅島で亡くなっています。彼の教義をもとにして生まれた教派神道のうちの一派が禊教です。雑な言いかたをすると、天理教や御嶽教の同類といったところでしょうか。
中央の本殿は前方に切妻の庇がありますが、伊勢神宮の本殿を踏襲した「唯一神明造」らしいです。なお、戦前は伊勢神宮の格式を高めるため唯一神明造の社殿を他社に造ることを政府が禁じたという歴史があり、現存する唯一神明造の社殿はすべて戦後のものです。
これらの本殿は能楽殿と同様、昭和末期から平成初期のものでしょう。
拝殿向かって左側には火祥殿。祈祷やお祓いをする社殿のようです。
火祥殿の手前、社務所の脇には身曾岐神社の旧社号標「井上神社」が置かれていました。
以上、身曾岐神社でした。
(訪問日2021/11/03)