今回は山梨県北杜市の根古屋神社(ねごや-)について。
根古屋神社は市東部の峡谷の集落に鎮座しています。
創建や沿革は不明。武田信満の三男・江草信泰の居城である獅子吼城がすぐ近くにあり、城の鎮守として祀られていたようです。境内に生育するケヤキの大樹は江戸後期の『甲斐国志』にも記載されているとのこと。
境内には2本のケヤキの大樹があり、「根古屋神社の大ケヤキ」として国指定天然記念物となっています。社殿は神楽殿と拝殿・本殿があり、神楽殿は彫刻と花の絵で飾られた独特の意匠を見ることができます。
現地情報
所在地 | 〒408-0103山梨県北杜市須玉町江草5336(地図) |
アクセス | 須玉ICから車で30分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
根古屋神社の大ケヤキ
根古屋神社の境内は西向き。めずらしい方角を向いています。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「根古屋大明神」。
神社に向かって右側(南)にあるのが畑木(はたぎ)。
つっかい棒が何本も立てられ、幹が空洞化していますが、それでも葉を茂らせていて樹勢は衰えていない様子。表面の大部分は分厚く苔むしています。訪問時は紅葉の季節で、黄色く色づいていました。
向かって左側(北)が田木(たぎ)。
こちらもつっかい棒で枝を支えられています。空洞化した部分を補強するためなのか、セメントらしき材質で穴埋めされています。
畑木と田木は両者とも樹齢800年、樹高20メートル以上のケヤキの大木で、「根古屋神社の大ケヤキ」として国指定天然記念物に登録されています。
当地ではこの2つの大樹の新緑の芽吹きを見ることで、その年の田畑の取れ高を占ったとのこと。
神楽殿
鳥居のすぐ隣には神楽殿。寄棟、桟瓦葺。
大棟や鬼瓦には武田菱の紋が描かれていました。
軒裏は密な垂木、軒下は彫刻で飾られ、天井には花の彫刻があり、にぎやかな造りをしています。
柱は角柱。やや小さめに角面取りされています。
柱の斜め方向には唐獅子の木鼻がついています。
組物は出三斗。大斗の大きさに対して肘木や巻斗が小振りです。
虹梁は唐草が彫られています。中備えは木鼻付きの平三斗と、蟇股。
蟇股には説話を題材にしたと思われる人物像が彫られていましたが、私の知識では題材が解らないため割愛。
内部の天井の羽目板には、立体的な花の意匠があしらわれています。非常に個性的でおもしろい意匠だと思います。
元の色がほとんど分からないくらいに退色してしまっていますが、造形が良いからか菊や牡丹といった花の種類はしっかりと識別できます。中には家紋らしきものが取り入れられたものも混じっています。
華やかな内部に対し、軒先は妙なことになっています。
おそらく当初は茅葺だったのでしょう。軒先のほうのまばら垂木の軒裏は、桟瓦葺に改めるとき、茅負をカバーするために改造で付加されたものと思われます。
拝殿と本殿
神楽殿の方向には拝殿。立地に制約のある谷間に鎮座しているからか境内が手狭で、鳥居、神楽殿、拝殿の距離が異様に近いです。
拝殿は入母屋、桟瓦葺。
大棟には菊の紋と武田菱。こちらも当初は茅葺だったと思われます。
拝殿の後方には本殿が鎮座しています。
本殿は覆い屋の中にありますが、壁面は透明なアクリル板になっているおかげで本殿を観察できます。以降の写真は私の手指が反射で映り込んでしまっていますが悪しからず。
祭神は境内入口の社号標によると天児屋根のようです。
本殿は一間社流造。屋根葺きは不明。造営年は、彫刻の内容などから判断すると江戸中期以降でしょうか。
向拝柱は几帳面取り角柱。よく見えないですが、木鼻は正面が唐獅子、側面が象。
母屋の正面は1間で、少し奥まったところに扉が設けられています。山梨県内の神社本殿で見受けられる造り。
縁側の後方に立てられた脇障子には竹の彫刻。
母屋柱は円柱。頭貫には拳鼻、中備えは蟇股。蟇股には波が彫られています。
組物は二手先。持ち出された虹梁の下には板支輪。こちらも波の彫刻。
反射でほとんど見えないですが、妻飾りは当地(山梨県北西部)でよく見られる大きな蟇股が配されていました。
背面。こちらには縁側がまわされず、とくに目立った意匠はありません。
母屋柱の床下は八角形に成形されていました。
以上、根古屋神社でした。
(訪問日2021/11/03)