今回は愛知県名古屋市の熱田神宮(あつたじんぐう)について。
熱田神宮は熱田区の市街地に鎮座しています。
創建は社伝によると646年(大化二年)。延喜式内社です。三種の神器のひとつである草薙剣が安置される神宮で、成立以来、国家的な崇敬を受けています。
広大な社叢に覆われた境内には多数の社殿がありますが、主要な社殿は戦後の再建であるうえ、本殿は見ることができません。
現地情報
所在地 | 〒456-8585愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1(地図) |
アクセス | 名鉄 神宮前駅から徒歩3分 名古屋高速 呼続出入口から車で10分 |
駐車場 | 400台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 熱田神宮 |
所要時間 | 1時間程度 |
境内
参道
熱田神宮の境内は南向き。こちらは正門(南門)。
一の鳥居は木造の神明鳥居。
参道を進むと二の鳥居。
こちらも木造の神明鳥居。
二の鳥居の先の参道左手には手水舎。
切妻、銅板葺。
柱は円柱で、柱上に組物はありません。内部は格天井。
妻壁は豕扠首。軒裏は一重のまばら垂木。破風板に懸魚などの意匠はありません。
参道右手には熱田神宮の歴史を解説したパネル。
神代(ヤマトタケルの時代)から現代に至るまでの1900年の歴史が、絵図をまじえて全23枚のパネルで事細かに詳述されています。
熱心な参拝者はパネルの前に立って熟読し始めますが、ほとんどの人が最初の3枚くらいと織田信長が登場するあたりだけ読んでギブアップしていました... 私も文章量を見て即刻ギブアップし、写真だけ撮って先へ進みました。
パネルの中にはこのような写真が載っていました。
これは1945年に焼失した鎮皇門(ちんこうもん)で、現在の西門にあったようです。
1600年頃に加藤清正によって造営されたもの。旧国宝(現在の国重文に相当)。
様式は三間一戸、楼門、入母屋、正面軒唐破風付、檜皮葺?。
現存していれば確実に国指定重要文化財になっていただけに、戦災での焼失が惜しまれます。
三の鳥居。木造の神明鳥居。
本宮
参道の先には本殿などが鎮座する「本宮」があります。
写真は拝所で、参拝者はこれより内部には入れません。
拝所(祭文殿)は神明造風の切妻、銅板葺。
大棟の鰹木は10本ありました。
千木は風穴があき、先端が二股にわかれています。先端の木口は水平にカットされ、俗にいう女千木。
破風板の拝みからは、4本の棒(鞭懸)が突き出ています。
拝所の左右には回廊が設けられ、簡易的な尾張造(おわりづくり)の社殿配置になっています。尾張造は拝殿・祭文殿・本殿を一直線に配置して回廊でつなぐ形式で、当地に特有の建築様式です。
もともと熱田神宮は尾張造だったとのことですが、戦後の再建では単純な神明造になってしまったようです。
祭神は熱田大神(アマテラス?)で、神体は草薙剣。ほか、アマテラス、スサノオ、ヤマトタケルなどが合祀されています。
拝所からどうにか本殿を見られないものかと思いましたが、写真中央の神門の先にも二重三重の塀が巡らされており、とても見えそうにありません。
境内の裏手へ周れる「こころの小径」なる参道が向かって左(西側)にあり、そこから自撮り棒を伸ばせば本殿が見えるかもと目論みましたが、こころの小径は撮影禁止となっており目論見は失敗。
意地でも本殿を見せないつもり、というか一介の参拝者ごときに見せて良いものではないようです。
なお、本殿は戦後に再建された神明造とのこと。
「酸っぱいブドウ」ですが、神明造なので装飾や意匠がほとんどない質素で見栄えしない本殿だと思います。戦後のものなので文化財としての価値もあまりなさそうです。
その他の社殿
本宮の右手(東)には神楽殿。
神明造の意匠を取り入れた大規模な現代建築。
神楽殿の南には西楽所(にしがくしょ)。東向き。
桁行4間・梁間3間、切妻、檜皮葺。
1686年(貞享三年)再建。徳川吉宗の寄進とのこと。
柱は角柱。柱上には舟肘木。
柱間には蔀と盲連子。
妻壁は二重虹梁。
板蟇股と豕扠首が使われています。
西楽所の手前には信長塀。
織田信長が当社で戦勝祈願し、その結果桶狭間で大勝したため奉納された塀。瓦を積み重ね、土と石灰と油で塗り固めたもの。屋根は本瓦葺。
案内板いわく“三十三間堂の太閤塀、西宮神社の大練塀と並び日本三大土塀の一つとして名高い”とのこと。「日本三大土塀」を知っている人がどれだけ居るのか謎ですが、まるで周知の事実のように書かれています。
東口の近くには宝物館。
壁面は校倉造を意識したと思われる蛇腹状。軒裏には垂木のような意匠があります。
館内には国重文の刀剣などが多数展示されています。
宝物館の近くには佐久間灯籠。
案内板いわく“京都南禅寺、東京上野東照宮の大灯籠と共に日本三大灯籠として名高い”とのこと。皆様ご存知「日本三大灯籠」のひとつです。恥ずかしながら私は知りませんでした。
南門に戻り境内東側に入った先には南新宮社(みなみしんぐうしゃ)。西向き。
一間社流造、檜皮葺。
案内板によると熱田神宮で唯一の朱塗りの社殿。祭神はスサノオ。
目立つ装飾は向拝木鼻くらいで、他はシンプルな意匠でまとめられています。
母屋には木鼻も組物も使われていません。
破風板の拝みと桁隠しには、ハート形に開口された猪目懸魚が下がっています。
南新宮社のはす向かいには清雪門(せいせつもん)が東向きに建っています。
一間一戸、切妻、檜皮葺。
柱は1組しかなく、腕木(男梁)を伸ばして桁を受けています。腕木の下には女梁として組物で持ち送りされています。
左右の袖塀は前述の信長塀と似た造りで、屋根は本瓦葺。
南門から境内西側に入ると上知我麻神社(かみちかま-)と別宮八剣宮。
こちらは上知我麻神社拝殿。東向き。
後方には流造の本殿がありました。祭神は乎止與命(おとよのみこと)。
別宮八剣宮は南向き。
熱田神宮本宮と似た神明造風の拝所が建ち、本殿は見えませんでした。
以上、熱田神宮でした。
(訪問日2021/02/22)