甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【羽咋市】妙成寺 その2(丈六堂、三十番神堂、三光堂)

今回も石川県羽咋市の妙成寺について。

 

その1では二王門、経堂、五重塔などについて述べました

当記事では丈六堂、三十番神堂、三光堂について述べます。

 

本堂、祖師堂、鐘楼などについてはその3をご参照ください

 

丈六堂

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五重塔のとなりには三十番神堂がありますが、順路だとこちらの丈六堂が先となっています。

二重、入母屋、こけら葺。1686年(貞享三年)建立。県指定文化財。

上層の屋根は鉄板でカバーされており、ケラバの箕甲のあたりだけこけらが露出しています。

二階建てに見えますが平屋で、窓から内部をのぞき込むと全高1丈6尺(約4.8メートル)の釈迦牟尼仏立像があります。

 

禅宗様建築の典型である「一重裳階付、入母屋」に似ていなくもないですが、まったく別の様式で、プロポーションもちがいます。私の知るかぎりほかに類例がない、独特でユニークな造りをした仏堂。

 

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下層。

中央の柱間は桟唐戸、左右は火灯窓が使われています。

縁側がなく土間になっており、禅宗様建築の技法が多く採用されています。

 

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中央の桟唐戸の上の中備えは、大きな透かし蟇股。梅の木にとまる鷹が彫刻されています。

板の張られた欄間に透かし蟇股を置くのは風変わりだと思います。

 

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柱は几帳面取りの角柱。頭貫に木鼻はありません。

柱上の組物は舟肘木。舟肘木にしてはめずらしく、繊細な繰型がついています。

 

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見上げた図。

下層の軒裏は一重まばら垂木。上層は二軒まばら垂木。どちらも平行垂木です。

上層はすべての柱間が横板壁。中央の扁額は「丈六堂」。

 

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上層の柱も几帳面取り角柱。上端がわずかに絞られています。

柱上には台輪がまわされ、台輪と頭貫に禅宗様木鼻がつけられています。

柱上の組物は三斗。

 

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側面。

上層は側面3間で横板壁。下層は側面4間で縦板壁。側面の柱間と壁板の使いかたが上層・下層で異なります。

 

三十番神堂拝殿・本殿

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五重塔のとなりには三十番神堂の拝殿と本殿が東向きに鎮座しています。

こちらは拝殿。入母屋、正面背面軒唐破風付、こけら葺。

造営年不明ですが、各所の意匠が後述の本殿と似ているため江戸初期のものと思われます。県指定文化財。

 

三十番神とは日蓮宗系寺院の境内社として祀られることが多い神で、八幡神をはじめとする30の神々が日替わりで1ヶ月を守護するというもの。

 

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正面中央の柱間。拝殿にしてはめずらしく、向拝がありません。

柱は面取りされた角柱で、C面がやや広く取られています。柱の上端は絞られています。

柱の上部には頭貫が通り、台輪がまわされています。組物は出三斗。

 

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唐破風と蟇股の部分の拡大図。

中備えは蟇股で、はらわたの彫刻の題材は草木。鎌倉・室町期の平面的で幾何学的な造形から脱却し、江戸中期・後期の立体的かつ写実的な造形へと変遷してゆく途中といった感じ。

蟇股の上では角柱の大瓶束が唐破風の棟を受けています。

 

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右側面(北面)。側面は2間です。

頭貫と台輪には禅宗様木鼻が設けられています。

側面も、台輪の上の中備えには彫刻の入った蟇股が配置されています。

軒裏は二軒繁垂木。

 

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背面。こちらも中央に軒唐破風がついています。

意匠は正面や側面とほぼ同じですが、こちらは蟇股が欠損しています。

縁側は切目縁が4面にまわされ、跳高欄が立てられています。

 

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拝殿の後方には本殿が鎮座しています。

三間社流造、向拝1間、軒唐破風付、こけら葺。

1614年(慶長十九年)建立。他の堂宇とともに国重文

祭神は三十番神。

 

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向拝は1間で広々とした印象。虹梁の中備えに組物があるため、組物の下の柱を省いた設計です。

 

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虹梁中備えは組物(出三斗)と蟇股。蟇股のはらわたは鳥獣が題材。

唐破風の小壁には大瓶束が立てられています。大瓶束の上の組物は出三斗と連三斗を組み合わせたようなもので、ここにこのような組物を使うのは風変わり。

また、大瓶束の左には人物像の彫刻があり、これもまた風変わりです。

 

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向かって右側。

向拝柱は角面取り。木鼻は象鼻ですが、江戸初期だからか造形がやや粗いです。

柱上の組物は連三斗。

蟇股ははらわたがありません。欠損してしまったものと思われます。

 

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母屋は正面3間で、3組の板戸が設けられています。

扉の上の欄間にも蟇股があり、こちらは雨風の当たりにくい場所のため状態が良いです。

側面は2間。柱上には三斗が使われています。妻飾りは豕扠首。

縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。背面側に脇障子が立てられていますが、彫刻の類はありません。

 

三光堂

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三十番神堂のとなりには三光堂が南面して鎮座しています。

桁行5間・梁間5間、入母屋、こけら葺。

1623年(元和九年)建立。ほかの堂宇とともに国重文

堂内に日天、月天、明星天が祀られていることから三光堂というようです。

 

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柱はいずれも円柱で、上端がわずかに絞られています。

中央とその左右の3間は桟唐戸、両端の柱間は連子窓が立てつけられています。

柱の上部には頭貫と台輪が通っています。写真を撮り忘れてしまいましたが、頭貫と台輪には禅宗様木鼻がついています。

柱上の組物は三斗。中備えはありませんが、中央の柱間だけは間斗束が2本立てられています。

 

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堂内をのぞき込むと外陣・内陣を区切る格子戸があり、その上の欄間には菊水らしき彫刻が見えます。

 

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右側面(東面)。

前方の4間は桟唐戸。後方の1間は横板壁。

 

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左側面(西面)。

こちらは5間あるうちの4間が横板壁で、中央だけが格子戸。

 

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入母屋破風。

破風内部は妻虹梁と大瓶束。破風板拝みには鰭付きの三花懸魚。

大棟鬼板には鬼瓦がついています。

箕甲はこけらの薄板が折り重なっている様がよく観察できます。

 

丈六堂、三十番神堂、三光堂については以上。

その3では本堂、祖師堂、鐘楼などについて述べます

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