甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【草津市】伊砂砂神社

今回は滋賀県草津市の伊砂砂神社(いささ-)について。

 

伊砂砂神社は草津市の中心市街に鎮座しています。

創建は不明。社伝によれば1468年(応仁二年)に六角高頼が河内国の渋川神社(大阪府八尾市)を勧請したのが始まりとのこと。古くは天大将軍社と称し、雨乞いの祈願で霊験あらたかだったため崇敬されたようです。

境内や社殿は決して大きくはないですが、室町後期に建立された檜皮葺の本殿が現存しており、国重文となっています。

 

現地情報

所在地 〒525-0026滋賀県草津市渋川2-2-1(地図)
アクセス 草津駅から徒歩10分
栗東ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

拝殿

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伊砂砂神社の境内は南東向き。

入口は西向きで、市街地の裏道に面しています。手前の道路は旧中山道とのこと。

鳥居は石造の明神鳥居。扁額なし。

右の社号標は「伊砂砂神社」。

 

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参道右手には手水舎。

切妻、桟瓦葺。

垂れ幕の紋は桐。

 

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拝殿は入母屋(妻入)、桟瓦葺。

滋賀県内によくある神楽殿風の拝殿です。

 

訪問時は拝殿向かって右にある社務所が工事中でした。

 

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柱はいずれも角柱。柱上には舟肘木。

扁額は「伊砂砂神社」。

軒裏は二軒まばら垂木。

 

本殿

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拝殿の後方には中門と透かし塀に囲われた本殿が鎮座しています。

中門は一間一戸、切妻、檜皮葺。

透かし塀は檜皮葺。柱間には連子窓。

 

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本殿は一間社流造、檜皮葺。

棟札より1468年建立国指定重要文化財

祭神はイワナガヒメ、寒川比古命、寒川比女命、イザナキ、スサノオの5柱。

 

各所の造りは、近在の栗東市にある大宝神社境内社の追来神社本殿(1283年造営)と似通った箇所が多いです。室町の中頃である応仁年間に造られた本殿であるためか、作風は室町前期あたりのものに見えます。

 

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解説は下記のとおり。私の素人解説は無用のため省略。

 建物は棟札により応仁二年(1468)に建立され、元禄四年(1691)に修理を受けていることがわかる。軸部は当初材をよく残こ(原文ママ)しているが、軒廻りや縁、高欄、脇障子などの造作材は、大正時代の修理によるものである。

 小規模な一間社であるが、母屋は内部を内外陣の二室に区画し、正面に向拝を付ける。組物は三斗組、妻飾は豕扠首組として、母屋には三方に縁、高欄を巡らし、脇障子が取り付く。

 この本殿は建立年代が明確で、木割が細く、正面の建具を吹寄せ格子戸とするなど軽快な建物で、室町時代後期の本殿建築を知るうえで貴重である。

滋賀県教育委員会

 

境内社

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本殿の左右には境内社があります。両者とも一間社流造、見世棚造、檜皮葺。

こちらは伊砂砂神社本殿の右隣(西側)にある天満宮。手前には牛の石像。

 

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こちらは左隣にある八幡宮。手前には1対の狛犬。

 

以上、伊砂砂神社でした。

(訪問日2021/03/12)