今回は滋賀県栗東市の小槻大社(おつきたいしゃ)について。
小槻大社は市郊外の丘陵に鎮座しています。
創建は、社伝によると栗太郡を領する豪族の小槻山君が氏神を祀ったのが始まりとのこと。平安期の『延喜式』にも記載があり、式内社となっています。室町期には青地氏によって境内社殿が整備されました。江戸期には膳所藩からの寄進を受けたとのこと。
境内は深い社叢に覆われ、大規模な一間社の本殿は室町後期の造営で国重文に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒520-3011滋賀県栗東市下戸山1212(地図) |
アクセス | 草津駅から徒歩45分 栗東ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
参道と拝殿
小槻大社の境内は南東向き。入口は西側にあり、住宅地の生活道路に面しています。
境内は社叢が深く茂っていて、周囲の住宅地とは別世界のような趣。周辺には古墳時代の遺跡が点在しているようです。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「小槻大社」。
参道脇には大量の灯籠が並んでいます。灯籠にはウサギの顔が彫られています。御神兎なる像もあります。
「小槻」大社と「お月」さんを掛けて、月といえばウサギ、といった連想でしょうか。
鳥居の先へ進むと参道が左に90度折れ、南東向きの社殿が現れます。
写真は拝殿で、こちらはおそらく向かって左側面。
様式は入母屋(妻入)、桟瓦葺。
滋賀県内によくある神楽殿風の拝殿ですが、縁側がありません。
幣殿
拝殿の奥には幣殿と本殿が鎮座しています。
幣殿は一間一戸、唐門(妻入)、檜皮葺。
1956年の造営とのこと(Wikipediaより)。
柱は角面取り。面取りの幅が大きく、後述の本殿にあわせて室町時代の作風を再現しているように見えます。
木鼻は大仏様のもの。古風ですが、あまり神社らしくない意匠に感じます。
柱上の組物は舟肘木。ここも古風な意匠です。
虹梁の上では、蟇股が巻斗と舟肘木を介して棟を受けています。
蟇股のはらわたは、いかにも室町期らしい造形。
格子戸の扉。
縦横の格子のあいだには、懸魚を逆さにしたようなシルエットの装飾がついています。
本殿
幣殿の奥には本殿。
一間社流造、檜皮葺。
棟札写しや棟木の墨書より1519年(永正16年)の再建とされています。国指定重要文化財。
祭神は於知別命(おちわけのみこと)と大国主。
本殿内陣には鎌倉期の宮殿が安置され、本殿の附に指定されているとのこと。また、宮殿内の木像も単体で国重文に指定されているようです。
向拝柱は角面取り。室町後期のものなので、面取りの幅がやや大きめ。
柱上の組物は連三斗。連三斗の斗は、桁を直接受けています。
虹梁に中備えはありません。
向拝軒下には角材の階段が7段。階段の下には浜床。
この本殿は一間社として非常に大型のため、階段や浜床も広く感じます。
向拝柱と母屋をつなぐ虹梁は、まっすぐな材が使われています。
手挟はありません。
母屋正面は引違いの格子戸。内陣があるとのことなので、おそらく内部にも扉があると思われます。
母屋柱は円柱。
軸部は長押で固定され、頭貫木鼻はありません。柱上は舟肘木。
中備えはなし。
妻飾りは豕扠首で、束の上の舟肘木が棟木を受けています。
室町後期の比較的新しい本殿ですが、各所の意匠を見ると鎌倉後期~室町初期のものと見まちがえそうな技法・作風です。
背面。こちらもとくに目立った意匠はありません。
縁側はくれ縁が3面にまわされています。
欄干は跳高欄、縁の下は縁束。
母屋柱は床下も円柱に成形されています。
縁側の後方は脇障子でふさがれていて、脇障子の下には蹴込板がはめ込まれています。
全体的に質素で飾り気のない造りをしているなか、この蹴込板だけは凝った彫刻があり、個人的にとても印象に残りました。
右側面。
破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚が下がっています。向拝軒桁の桁隠しは少し風変わりなシルエット。
破風は反りが強く、それにともなって屋根の箕甲も分厚い曲面を呈しており、純朴で美しい本殿に仕上がっていると思います。
以上、小槻大社でした。
(訪問日2021/03/12)