甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

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【南アルプス市】神部神社(下宮地)

今回は山梨県南アルプス市下宮地(しもみやじ)の神部神社(かんべ-)について。

 

神部神社は南アルプス市の住宅地に鎮座しています。

創建は社伝によると垂仁天皇(11代天皇)の時代、大和国(奈良県)の三輪神社を勧請したのが由来とのこと。『延喜式』に記載された巨摩郡の「神部神社」に比定される論社のひとつです。平安期には小笠原氏の崇敬を受けたとのこと。

境内には比較的大規模な三間社の本殿を見ることができます。

 

現地情報

所在地 〒400-0405山梨県南アルプス市下宮地563(地図)
アクセス 南アルプスICから車で5分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と拝殿

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神部神社の境内は東向き。住宅地の生活道路に面しています。

社号標は「延喜式内社 神部神社」。

鳥居は木造の両部鳥居。稚児柱に屋根がついています。扁額は「正一位三輪大明神」。

 

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参道の先には拝殿。左手には簡素な手水舎。

拝殿は入母屋(平入)、向拝1間、銅板葺。

大棟の紋は三階菱。小笠原氏の家紋と思われます。

小笠原氏というと室町から戦国期にかけての信濃国守護のイメージが強いですが、祖先は当地(甲斐国巨摩郡)出身の加賀美遠光で、巨摩郡の小笠原という地名が名前の由来。

 

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向拝柱は角面取り。C面の幅が広くとられていて少し古風。柱上の組物は連三斗。

虹梁中備えは平三斗。

木鼻は象鼻で、巻斗を介して連三斗を受けています。

 

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向拝の縋破風は目立った意匠がなく、文字どおり平板な印象。桁隠しの懸魚は雲の意匠。

向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁でつながれています。手挟は雲状の繰型がついています。

 

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妻壁。破風内部は妻虹梁と束。

拝みの懸魚は、蕪懸魚とも三花懸魚ともつかない独特な形状。

 

本殿

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拝殿の後方には塀に囲われた本殿が鎮座しています。

桁行正面1間・背面3間・側面2間、三間社流造、正面千鳥破風付、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。

造営年は不明。各所の意匠より、江戸中期から後期と思われます。

祭神は大物主。

 

千鳥破風と軒唐破風がついていて、少し複雑な様式。流造はありきたりな様式ですが、ここまで複雑になると、純粋な流造とはだいぶ印象が異なります。

 

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向拝柱は几帳面取り。木鼻は見返り唐獅子、柱上の組物は連三斗。

虹梁中備えは蟇股。その上の小壁には大瓶束。

唐破風の兎毛通は彫刻になっていますが、題材不明。縋破風には雲の意匠の桁隠し。

 

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反対側(南面)。

向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。海老虹梁の母屋側は、柱のない場所に取りついています。

扉は母屋の前面ではなく、1間ほど奥まった場所に設けられています。これは甲府盆地周辺の本殿でしばしば見かける構造。なお、祭神は1柱のようですが扉は3組設けられていました。

 

母屋柱は円柱で、軸部は貫と長押で固定されています。

柱上には台輪がまわされ、台輪と長押に禅宗様木鼻が設けられています。

 

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右後方(北西側)から見た図。

組物は出組。中備えはありません。

持ち出された虹梁の下には板支輪。板支輪は彫刻などのない無地のもの。

 

 

背面は三間社なので柱間が3つ。軒下の意匠は側面と同様でした。

 

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妻壁。

妻飾りは豕扠首で、中央の束は円柱になっています。豕扠首と大瓶束のハイブリッド的な意匠。

拝みには彩色された蕪懸魚。拝みの鰭と桁隠しは雲状の意匠。

 

以上、神部神社(下宮地)でした。

(訪問日2021/01/30)