甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【南アルプス市】八王子社(落合)

今回は山梨県南アルプス市落合(おちあい)の八王子社(はちおうじしゃ)について。

 

八王子社は市南部の住宅地に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると鎌倉期には弘安の役(2度目の元寇)の戦勝祈願を行ったとのこと。室町後期には武田信虎が刀剣を奉納しているようです。

境内には随神門があり、本殿は小規模ながら丹塗りの華やかな造りとなっています。

 

現地情報

所在地 〒400-0423山梨県南アルプス市落合1092(地図)
アクセス 市川大門駅から徒歩1時間
南アルプスICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

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八王子社の境内は南向き。社頭から数十メートルほど離れた農道に鳥居があります。

社号標は「創建千五百年 八王子社」。その側面には「武田信玄公大井夫人 祈願社」とあり、信玄との関連性をアピールしています。大井夫人は信玄の母。

鳥居は木造の両部鳥居。稚児柱に屋根がついています。扁額は「八王子社」。

 

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社頭には随神門。

三間一戸、切妻、鉄板葺。

柱はいずれも角柱で、母屋は下半分が吹き放ち。甲府盆地近辺でよく見るタイプの門。

 

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内部。扁額は「八王子社」。

柱上には舟肘木が置かれ、虹梁が渡されています。扁額の影には蟇股。

天井はなく化粧屋根裏。軒裏は一重まばら垂木。

 

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側面。

柱と長押と破風板は黒、そのほかの材は赤く塗装されています。

妻虹梁の上では大きな蟇股が棟を受けています。

破風板の拝みには蕪懸魚。

屋根のケラバには箕甲瓦のような意匠もついています。

 

拝殿

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随神門の先には拝殿。

入母屋、向拝1間、鉄板葺。

 

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向拝柱、水引虹梁、木鼻は赤く塗装されています。

向拝柱は角面取り。柱上の組物は連三斗。側面の木鼻は拳鼻で、拳鼻にのった巻斗が連三斗を受けています。

水引虹梁は唐草が彫られ、中備えには板蟇股が置かれています。

母屋柱は角柱。扁額は「八王子社」。

 

本殿

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拝殿の後方には塀に囲われた本殿が鎮座しています。

一間社流造、銅板葺。

造営年は不明。各所の意匠から、江戸初期以降のものと思われます。

祭神は五男三女神。都合8柱いるため八王子と呼ばれる神々です。

 

紅白を基調とした配色で、各所の意匠もバランスが取れていてくどくなく、清楚かつベーシックな流造といった印象。

 

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向拝柱は角面取り。C面の幅はあまり大きくなく、古いものには見えません。

柱上の組物は連三斗。

木鼻は側面に唐獅子。彩色されていて、非常に目力が強いです。木鼻の上には巻斗が置かれ、連三斗を受けています。

 

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向拝の下には角材の階段が5段。木口は白く塗装されています。

母屋の前面には黒い板戸。

 

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向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。海老虹梁は黒と白の線で唐草が描かれ、下部の眉は白く塗り分けられています。

 

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母屋柱は円柱。軸部は黒い長押と赤い頭貫で固定されています。

頭貫木鼻は断面の白い拳鼻。

組物は出組。持ち出された妻虹梁の下には軒支輪。中備えには黒い巻斗が見えます。

妻虹梁は黒線で渦状の絵様が描かれ、袖切と眉は白く塗り分けられています。

妻飾りは豕扠首。中央の束は単純な角柱ではなく、下に行くほど太い台形のような形状で、力強い印象の豕扠首になっています。

 

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箕甲(屋根面)は緑青(錆びた銅板の色)、裏甲は赤、木負いは白木、破風板は黒、破風板下端は金色。部材ごとに色分けされており、重層的で厚みのある破風になっています。

箕甲や破風板の曲面・曲線もきれいだと思います。

 

懸魚は拝みと母屋の桁隠しが猪目懸魚、向拝の桁隠しが蕪懸魚。黒地に金縁で重厚な印象。

大棟は箱棟になっており、鬼板には鬼面が掲げられています。

 

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背面。

壁面や脇障子の壁板は白く塗装されています。

縁側はくれ縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き、床下は腰組。

 

以上、八王子社(落合)でした。

(訪問日2021/01/30)

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