甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【松本市】岡田神社

今回は長野県松本市の岡田神社(おかだ-)について。

 

岡田神社は松本市北部の住宅地に鎮座しています。

創建は654年と伝えられ、『延喜式』に記載のある式内社とされています。境内については一部が岡田冠者親義の居館跡となっているほか、平成初期に造られた神明造の本殿を見ることができます。

 

現地情報

所在地 〒390-0313長野県松本市岡田下岡田1395(地図)
アクセス 松本ICから車で20分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

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岡田神社の境内は東向き。

写真奥に見えるのは二の鳥居で、一の鳥居はここから数百メートルほど離れた幹線道路沿いの場所に立っています。

 

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境内の南側は岡田冠者親義の居館跡になっており、平安期の堀の跡が残っているとのこと。

岡田冠者こと源親義(?-1183)は当地に住んでいた武将で、木曽義仲の挙兵に重臣として迎え入れられ、倶利伽羅峠の戦いで戦死しています。

 

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二の鳥居は木造の両部鳥居。扁額はありません。

 

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神楽殿は切妻、桟瓦葺。

鳥居、神楽殿、拝殿・本殿が一直線に並んだ社殿配置になっています。

 

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神楽殿内部は天井がなく、小屋組や化粧屋根裏が見えます。

 

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参道の右手には手水舎。切妻、銅板葺。

 

拝殿と本殿

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拝殿は入母屋(妻入)、向拝1間・向唐破風、銅板葺。

 

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向拝柱は几帳面取り角柱。木鼻は正面が唐獅子、側面が象。

虹梁には唐草が立体的に彫られ、中備えの彫刻は牡丹と戯れる唐獅子。その上の小壁は笈形付き大瓶束。

破風板の兎毛通は鳳凰。

 

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向拝は屋根と一体化してはいますが、母屋の軒下の壁面から向唐破風を伸ばした構造になっています。

向拝内部は格天井が張られ、母屋の正面の扉には「岡田神社」の扁額。

母屋柱は角柱で、中備えには鶴などが彫られた蟇股が配置されています。

 

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拝殿の後方には一間社神明造(いっけんしゃ しんめいづくり)の本殿が鎮座しています。

桁行正面1間・背面2間・梁間2間、神明造、銅板葺。

1991年建立。祭神は保食神。

境内案内板によると仁科神明宮(大町市)と同様、過去には式年造替が行われていたらしいですが、岡田冠者の居館ができたため現在地に遷座されて今に至るようです。

 

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神明造なので正面に向拝はありません。

母屋柱は円柱。正面の柱間は1つ(桁行1間)で、引き戸が立てられています。

なお、正式な神明造は正面も背面も3間です。この本殿は簡略化された神明造といったところ。

 

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背面は柱間が2つ(桁行2間)。母屋柱の床下は、八角柱に成形されています。

室外では棟持柱が縁側の床を突き破って立ち、棟を受けています。棟持柱は強度にはあまり寄与しない部材ですが、この柱は棟持柱にしては細くて少々頼りない印象。

縁側は切目縁が3面にまわされています。欄干は擬宝珠。脇障子はありません。

 

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屋根の上には千木と鰹木。

千木は外削ぎで、風穴があいています。鰹木は3本ありました。

破風板の拝みからは鞭懸が伸びています。

見切れてしまっていますが妻飾りは古風な豕扠首になっています。

 

以上、岡田神社でした。

(訪問日2020/10/21)