甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【松本市】埴原神社

今回は長野県松本市の埴原神社(はいばら-)について。

 

埴原神社は市南東部の集落に鎮座しています。

創建については詳細不明。十五所神社と八幡社を江戸初期に合祀し、明治期に現在の社名になったとのこと。社殿については標準的な内容で、比較的新しいものと思われる三間社の本殿を見ることができます。

 

現地情報

所在地 〒390-0823長野県松本市中山5730(地図)
アクセス 塩尻ICから車で30分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

鳥居

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埴原神社の境内は西向き。集落の生活道路に面した場所にあります。

鳥居は木造の両部鳥居。笠木に銅板の屋根があり、主柱は内に転びがつけられています。

 

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扁額は「埴原神社」。唐破風の庇が付けられています。

庇の兎毛通や、扁額のふちには波や龍の彫刻がついており、見栄えのする扁額になっています。

 

拝殿

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拝殿は入母屋、正面軒唐破風、銅板葺。

 

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虹梁は波のような唐草が立体的に彫られています。

ほか、目立った意匠はなし。

 

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賽銭箱には3つの紋が描かれています。左から三つ巴、諏訪梶、地紙。

釘隠しの中央部は花菱の紋の意匠。

 

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拝殿の左手には社務所が南向きに建っています。

入母屋、正面軒唐破風、銅板葺。

 

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虹梁の唐草は拝殿とは異なる作風。虹梁の左右には唐獅子の木鼻。

中備えには波の意匠の蟇股が置かれ、その両脇では出三斗が唐破風の桁を受けています。

軒裏は二重になっていますが、おそらく軒先のほうは後付けと思われます。

 

本殿

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拝殿の後方には塀に囲われた本殿が鎮座しています。様式は三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)ですが、同様式の中では小さめの部類。

桁行3間・梁間1間、三間社流造、向拝1間、銅板葺。

造営年は不明ですが、あまり古くは見えません。近現代のものでしょうか。

祭神は境内の石碑によるとタケミナカタほか14柱(おそらく八坂刀女とその御子神13柱)に加えて、八幡神やイザナキなど、計21柱とのこと。

 

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向拝は1間。母屋の正面は桁行3間(三間社)ですが扉は中央に1組あるのみ。

なお、三間社流造は正面に扉を3組設ける例が多いです。この本殿のように「三間社で正面の扉が1組」という例は、流造よりも神明造に多い構造です。

 

向拝柱は几帳面取りの角柱。水引虹梁の中備えは、中央が蟇股、その両脇が間斗束。木鼻は側面に象鼻。

向拝の下には角材の階段が5段あり、その下には浜床が張られています。

縁側は切目縁が3面にまわされ、背面側は脇障子でふさがれています。欄干は跳高欄、床下は縁束。

 

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母屋柱は円柱。軸部を固定する長押には、笹竜胆の紋をかたどった釘隠しが使われています。

頭貫には拳鼻。中備えは蟇股。

妻虹梁は唐草が彫られ、妻飾りはシンプルかつ古風な豕扠首。

 

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破風板は拝みに鰭のついた蕪懸魚が下がっています。そのほか、桁の木口を隠す懸魚はありません。

屋根には外削ぎの千木と、鰹木が載せられています。

 

以上、埴原神社でした。

(訪問日2020/10/21)