甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【塩尻市】二柱神社

今回は長野県塩尻市の二柱神社(ふたはしら-)について。

 

二柱神社は塩尻市広丘の市街から少しはずれた田園地帯に鎮座しています。

創建は不明。社名は春日神と八幡神を祀っていることが由来のようです。2つの本殿が並立しているのですが、母屋の部分だけを連結させた独特な構成をしています。

 

現地情報

所在地 塩尻市広丘野村字上河原1242(地図)
アクセス 広丘駅から徒歩20分
塩尻北ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

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二柱神社の境内は西向き。

入口の鳥居は木造の両部鳥居。笠木には鉄板葺の屋根がついており、庇のついた扁額には「二柱神社」とあります。

 

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参道を進むと二の鳥居があります。

こちらも木造の両部鳥居。扁額は左が「春日大神」、右が「八幡大神」。

ひとつの扁額に複数の社名(祭神名)が書かれている例はしばしば見かけますが、扁額を2つ掲げている例は初めて見ました。

 

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二の鳥居の先には神楽殿と思しき社殿。鳥居、神楽殿、本殿が一直線に並んでいます。これは松本盆地の近辺ではよくある配置。

入母屋(平入)、銅板葺。柱は角柱で、柱間には格子の扉や窓が立てつけられています。

 

拝殿と本殿

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拝殿は入母屋、向拝3間、銅板葺。

年代は不明ですが、かなり新しいもののように見えます。

 

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向拝は4本の向拝柱で構成されており、柱間は3つ。中央の間口は広く、左右の間口は狭くなっています。

向拝柱はC面取りされた角柱。向拝柱をつなぐ虹梁には、とくに彫刻はありません。中備えには蟇股。木鼻は象鼻。柱上の組物は平三斗と出三斗。

柱の構成や木鼻の造りがなんとなく治田神社 上の宮(千曲市桑原)に似ている気がします。

 

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拝殿の後方には塀に囲われた2棟の本殿が鎮座しています。

こちらは右側(南側)の本殿で、鳥居扁額にあった「八幡大神」と思われます。なので便宜的に八幡社本殿と呼ぶことにします。

八幡社本殿は桁行3間・梁間1間、三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)、向拝1間、銅板葺。柱は角柱。

 

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向拝柱は几帳面取り、虹梁の中備えは板蟇股、木鼻は象鼻らしきものが使われているのがわかります。

母屋の正面には格子が張られていますが、柱で3間に分けられています。八幡宮はたいてい誉田別命などの3柱を祀るので、本殿の間口も3つあることが多いです。

 

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こちらは左側(北側)の本殿で、鳥居扁額の「春日大神」でしょう。春日社本殿と呼ぶことにします。

春日社本殿は一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)、銅板葺。母屋柱は円柱、向拝柱は角柱。

虹梁中備えはよく見えず、木鼻は象鼻。こちらの本殿は縁側があるだけでなく、母屋柱に円柱が使われていて、柱の使い分けがされています。

母屋の扉の上には鏡餅(?)らしき画が掲げられています。

 

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並立した本殿を八幡社のほうから見た図。

本殿は両者とも向拝1間のはずなのですが、なぜか八幡社(右手前)と春日社(中央奥)とのあいだに角材の階段が設けられています。

 

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背面。左手前が八幡社、右奥が春日社。

2つの本殿のあいだに窓のついた壁が設けられ、母屋を合体させている模様。床下の貫を見るかぎりでは、中央の連結部は後づけのものと思われます。

 

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背面から見た屋根。

母屋は連結されていますが、屋根は別々になっています。

三間社と一間社を1間おいて連結して五間社流造...とできたなら面白かったのですが、さすがに屋根まで後付けで連結するのは難しかったようです。

 

以上、二柱神社でした。

(訪問日2020/09/28)