今回は長野県千曲市桑原(くわばら)の治田神社(はるた-)について。
治田神社上の宮は千曲市郊外の集落に鎮座しています。
千曲市稲荷山にある同名の神社(下の宮)とともに、信州の延喜式内社46社のうちの1つに比定されている古社です。社殿は新しいもののようですが、特に本殿は小ぎれいでバランスの良い均整が取れた外観となっています。
現地情報
所在地 | 〒387-0024長野県千曲市桑原1(地図) |
アクセス | 稲荷山駅または屋代駅から徒歩1時間 更埴ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と拝殿
治田神社の境内は南向き。鳥居は木製の明神鳥居で、扁額は「治田神社」。
参道の右手には手水舎。鉄板葺の切妻。
拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)。向拝3間。
向拝は中央の間口が広く、左右の間口は狭くとられています。
軒裏は二軒(ふたのき)のまばら垂木。
向拝柱はC面取りされた角柱で、向拝柱をつなぐ梁の中央にはくり抜かれた蟇股(かえるまた)が置かれています。
向拝柱に付けられた木鼻は象鼻で、断面が白く塗装されています。
母屋の正面の扉の上に掲げられた扁額は「延喜式内社 治田神社」。
本殿
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は鉄板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年代は不明ですが、あまり古いものには見えません。明治期以降のものでしょうか。
祭神は治田大神(はるたのおおかみ)、タケミナカタと八坂刀女、ウカノミタマの4柱。上の宮に置かれていた「公民館報ちくま(平成29年10月1日)」によると、戦国期の武田氏の影響を受けて諏訪(タケミナカタと八坂刀女)を合祀したようです。
向拝柱はC面取りされた角柱。新しめの本殿のわりに、C面の幅は大きめに取られています。
柱上の組物は出三斗(でみつど)。柱に付けられた木鼻は正面・側面ともに象鼻で、拝殿の向拝にあったものと同じ外観をしています。
海老虹梁(えびこうりょう)は文字どおり曲がった形状をしていて、向拝側は虹梁と木鼻の高さから、母屋側は頭貫よりやや低いところから出ています。
写真上端に見切れている手挟(たばさみ)はくり抜かれていないシンプルな造形。
母屋の柱は円柱で、柱上の組物は通常の出三斗。頭貫の木鼻は向拝などと同様の象鼻が使われています。
組物の上の梁は持出しされておらず、梁の上の妻壁は豕扠首(いのこさす)。
縁側は前後左右の4面にまわされており、床板は壁面と直交に張られた切目縁(きれめえん)。欄干は跳高欄(はねこうらん)。脇障子はありません。
母屋柱の床下を観察すると「床上は円柱だが床下は角柱」という定番の工作がなされていました。
屋根には外削ぎの千木と5本の鰹木。千木、鰹木ともに先端が金色になっていてきらびやか。千木には長方形の穴が開いており、先端が二股にわかれています。鬼板の紋は諏訪梶。
箕甲(みのこう:屋根の破風際)は柔らかな三次元曲面になっており、それに追従する銅板のラインが美しいです。
境内社
拝殿の左側には境内社が多数あります。
境内社の中でいちばん大きいものがこちら。銅板葺の一間社流造。
向拝柱はC面取りの角柱で、柱の間が格子戸でふさがれています。
向拝柱の柱上の組物は連三斗(つれみつど)。柱の側面には木鼻がついていますが、木鼻の上に斗(ます)が乗っていて、連三斗を受けています。変わった構造をしていますが、葛山落合神社(長野市)でも同様の構造が見られます。
母屋に掲げられた扁額は「杵■大神」(■部判読できず)。
妻壁には古風な蟇股があり、妻虹梁の上では大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。この部分は先述の本殿よりも凝った造りをしています。
以上、治田神社 上の宮(桑原)でした。
(訪問日2020/04/14)