今回は静岡県静岡市駿河区の久能山東照宮(くのうざん とうしょうぐう)について。
久能山東照宮は、静岡市の海岸近くにそびえる久能山に鎮座しています。
境内の最奥には徳川家康の霊廟があり、家康がこの地に葬られているため、徳川家の聖地とされています。
また、社殿も非常に豪華かつ大規模なもので、権現造という建築様式の社殿として屈指の古さであるため国宝に指定されています。
当記事では久能山東照宮の参道と、重要文化財の社殿の解説をして行きます。
国宝の社殿についての紹介と解説は、後編をご覧ください。
なお、アクセス方法は石段(徒歩)とロープウェイの2通りがありますが、今回は1159段ある石段で参拝しています。
現地情報
所在地 | 〒422-8011静岡県静岡市駿河区根古屋390(地図) |
アクセス | しずてつジャストライン日本平バス停下車、または久能山下バス停下車 日本平久能山スマートICから車で20分 |
駐車場 | 日本平ロープウェイ利用:200台(無料) 久能山下から徒歩:50台(200円) |
営業時間 | 08:00-17:00 |
入場料 | 500円(博物館との共通券は800円) |
社務所 | あり |
公式サイト | 久能山東照宮|静岡 |
所要時間 | ロープウェイは片道5分、久能山下からの徒歩は片道20分 境内の拝観は40分、博物館は20分程度 |
1159段の石段
それでは、ここから1159段の石段を登って行こうと思います。
後方の山の中腹には一の門が見えますが、それは通過地点。東照宮はこの山の頂上付近にあります。
入口の鳥居から東照宮までは、ゆっくりめに登って20分程度かかります。
参道の途中には徳音院や駿河稲荷社などがありますが、稲荷社をすぎるとあとはひたすら石段を登る道になります。
壁のようにそびえる斜面に、つづら折りの参道が延々と続きます。
樹木が生い茂って眺望のない参道が続きますが、半分くらい登ったあたりから視界が開け、眼下に雄大な駿河湾を望めるようになります。
海を眺めつつ石段を進むと、割とすぐに一の門に到着できます。
ここまでたどり着けば、東照宮は目前です。
入口の鳥居から社務所の拝観受付までは、写真を撮りながらゆっくり登って20分弱。道中の眺めもよかったので、まったく疲れを感じませんでした。
石段が1159段、と聞くと恐ろしい数字に聞こえるかもしれないですが、実際に登ってみるとあんがい楽でした。
境内の社殿
境内に入るには拝観料500円が必要です。
境内には国宝1棟と重要文化財13棟があり、以下の解説でとくにことわりがない社殿はいずれも重要文化財です。
楼門
境内に入ってまず最初に現れるのが楼門。1617年(元和3年)の造営で重文。
楼門は銅瓦葺の入母屋(平入)で、正面3間・側面2間。柱は円柱。
扁額の字は「東照大権現」で、この字は後水尾天皇の筆であることから勅額御門とも言うとのこと。
2階を見上げた図。
縁側の床下を支える組物は、三手先(みてさき)ですが赤一色。
それに対し、2階の屋根を支える組物は、同じく三手先ですが極彩色に塗り分けられているうえ、尾垂木がつき出ていて凝った外観になっています。
このように、楼門はたいてい上階のほうを凝った造りにして、格のちがいを表示します。
五重塔跡と鼓楼、神楽殿
楼門をくぐると、一段高くなった場所に鼓楼と神楽殿があります。
鼓楼の反対側、参道の左手にあるのは五重塔跡。
徳川家康の命によって造営された五重塔が明治6年までこの場所にあったのですが、神仏分離令によって破却されたとのこと。解体された材は、おそらく薪にでもされたのでしょう...
もしここに五重塔が立っていたなら、境内はより一層のこと壮麗な景観になっていたのはまちがいありません。それだけに破却という短慮が悔やまれます。
五重塔跡と参道をはさんで向かいにあるのが鼓楼。鐘楼ではないので、鐘はありません。
鼓楼は銅板葺の入母屋。正面3間・側面2間。柱は円柱。
こちらも床下の組物が単色であるのに対し、屋根を支える組物は極彩色となっています。
鼓楼の裏には神楽殿。
神楽殿は銅板葺の入母屋。正面3間・側面3間。
壁がサッシの引き戸になってしまっているのが残念ですが、こちらも鼓楼とともに重文です。
なお、この神楽殿の縁側には奉納されたプラモデル(番外編で紹介します)が展示されており、境内でもひときわ異彩を放っています。
神庫と日枝神社
神楽殿の脇を通り過ぎ、境内の奥へ向かうと神庫と日枝神社があります。
こちらは神庫で、銅板葺の入母屋、正面5間・側面3間の大規模なもの。
こちらは日枝神社(ひえ-)。
日枝神社は銅瓦葺の入母屋で、正面3間・側面3間、向拝1間。母屋は円柱、向拝は角柱。
神仏習合の時代は本地仏の薬師如来が安置されていたようですが、前述の五重塔が破却された折に日枝神社に改められたとのこと。
ちなみに、晩年の徳川家康は医者でさえ舌を巻くほどに薬学に精通しており、そのため東照宮の本地仏は薬師如来となっています。実際、日光東照宮の「鳴き龍」がある堂宇は「薬師堂」といい、文字通り薬師如来が収められています。
順路で行くと次はいよいよ本殿ですが、本殿やその奥の神廟については語ることが多いので、当記事はここまでとさせて頂きます。
拝殿・幣殿・本殿と神廟の解説は後編をご参照ください。
(後編につづく)