今回は長野県佐久市蓬田(よもぎだ)の佐久八幡神社(さくはちまん-)について。
佐久八幡神社は佐久市郊外の仲仙道沿いにある宿場町・八幡宿に鎮座しています。
境内には、彫刻で満たされた派手な楼門と本殿のほか、国重文に指定された境内社もあり、非常に充実した見ごたえあふれる内容になっています。
しかし、今回は縁日があることを知らずに訪問してしまったため、境内の社殿をあっさりめに紹介するだけの内容と相成りました... ご了承願います。
現地情報
所在地 | 〒384-2107佐久市蓬田101-1(地図) |
アクセス |
佐久平駅にて仲仙道線に乗車 八幡神社前バス停下車 または中佐都駅から徒歩1時間 佐久中佐都ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道と随神門
訪問した日は十五夜の前日だったからなのか、夜にお祭りの縁日がある様子で、境内では屋台を立てていました。
鳥居は木製の両部鳥居で、笠木と島木の反りがちょっと強め。扁額には力強い筆致で「八幡宮」とあります。
鳥居の向こうには、あまり神社らしくない瓦葺の豪華な楼門(随神門)が建っています。
随神門は本瓦葺の入母屋で、正面3間・側面2間。柱はいずれも円柱。
垂木は平行かつ二重。垂木を受ける桁は、三手先(みてさき)の組物で大胆に持出しされています。桁は、菊や波の彫刻が施されています。
扁額の字は「戈止爲武」(ほこをとめてぶをなす)。端的に言うと「戈+止=武」という意味です。無用な戦いを避けるのが「武」である、という意味もあります。この言葉にはいろいろな解釈があるようですが、意味はどうであれ八幡神は武神とされるので、この額が掲げられるのも頷けます。
随神門の1階部分の正面右側。
桁の上下の彫刻には、長い尾羽を引いた鳥が彫られています。桁の上は松に鵲(カササギ)、下は鳳凰でしょう。
縁日なので楼門はいろいろと飾り付けされており、ちょっと鑑賞しづらいですね...
正面左側から見上げた図。
組物は、1階も2階も三手先となっています。ですが、2階の組物は尾垂木(おだるき)が突き出ていたり実肘木(さねひじき)が使われていたりと、こちらのほうが明らかに豪華で格上の造りになっています。
こちらは社務所と思しき建物。
彫刻がついている上、なぜか入口の唐破風の上だけこけら葺です。
随神門を過ぎると、大きな蟇股(かえるまた)が2つもついた神門があります。この向こうに重要文化財の高良社が、左奥に佐久八幡神社本殿が鎮座しています。
旧本殿・高良社と拝殿
摂社・甲良社はこけら葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面1間。
1491年の建立(設置者不明の案内板より)で、1783年の現本殿の建立にともない旧本殿は高良社となったとのこと。重要文化財です。
正面3間なので扉も3つあり、中央の扉の紋は菊、右側は五七の桐、左側は三つ柏(みつかしわ)。高良社と呼ばれる神社の主祭神は武内宿禰(たけのうちのすくね)なので、中央の菊は武内宿禰の紋でまちがいないのですが、左右の紋がどの神のものなのかは不明。
案内板によると虹梁や手挟み、木鼻に室町期の特徴が現れているとのことですが、垂れ幕やちょうちんなどの飾りのせいで図解できるような写真が撮れず。寺社建築の鑑賞は、縁日のときにするものではないですね...
今回は軽く写真を掲載するだけにして、いずれ再訪して詳細に解説したいと思います。
拝殿は銅板葺の入母屋、向拝に軒唐破風付き。
向拝は中備えに派手な龍が、木鼻には唐獅子が彫られていました。こちらも高良社同様、再訪したらまた詳しく語ることにしたいと思います。
本殿
拝殿の裏には本殿があります。
本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。背面3間・側面2間で、壁で塞がれていて見えないですがおそらく正面3間・向拝3間です。建立は1783年。
ご覧のとおり梁の周辺だけでなく壁面にまで彫刻が施されており、圧倒的な情報量です。前述の質素な高良社とは対照的。
左側面の床下。
床下にまでびっしりと彫刻が配置されていますが、退色が目立ちます。往時は極彩色の派手な塗装がされていたのでしょう。
彫刻のせいでスルーしそうになってしまいますが、縁側を支えるために梁と組物を4回も持出ししているところもおもしろいです。
背面の床下。
中国の伝説や故事(竹林の七賢人とか?)を題材にしたと思しき彫刻が配置されていますが、完全に塗装が剥げてヒビまで入っており、やや痛々しい状態。吹きさらしなので、こうなるのは致し方なしです。
余談になりますが、同日に訪問した水上布奈山神社本殿は1789年建立でこちらの本殿と同年代の建築なのですが、水上布奈山神社は室内に保存されているため彫刻も非常にきれいな状態で保たれていて、同年代とは思えないほどの差がありました。
背面左側から見上げた図。
壁面は鳥獣の姿が彫られ、その上では多数の唐獅子や龍が首を出していて、とにかく賑やか。こういった彫刻が多数配置された本殿は、わかりやすい派手さがあったので江戸期に人気を博して数多く造られました。
人によって感性は異なりますが、私はこういう神社本殿をあまり美しいとは思えません... とはいえ、見ていて楽しいとは思います。
最後に、背面右側から見た本殿と拝殿。
各所のディテールについてもっと語りたかったのですが、今回はなんともタイミングの悪いことに縁日の準備中に来てしまったため、思うように鑑賞・撮影できませんでした。よって、今回の記事は境内について大まかに語るだけの消化不良な内容となってしまいました。
そういうわけで、次回(期日未定)は縁日のないときを狙って訪問し、詳細な鑑賞と解説をしたいと思います。
以上、佐久八幡神社でした。
(訪問日2019/09/14)