今回は長野県松本市の沙田神社(いさごだ-)について。
沙田神社は信濃国で第3位の格を持つとされる神社です。
中信地方(長野県中部)のほとんどの神社は大なり小なり諏訪大社から何かしらの影響を受けていますが、ここも例外ではなく、諏訪とは特に関係のない神を祭っているにもかかわらず、境内の四囲には御柱が立てられています。
現地情報
所在地 | 〒390-0852長野県松本市島立三ノ宮3316(地図) |
アクセス | 上高地線大庭駅から徒歩10分 松本ICから車で5分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
鳥居
松本市内を流れる奈良井川の左岸の堤防を走っていると、立派な両部鳥居が立っています。奥に見える茂みが沙田神社の社叢です。
鳥居をくぐって先へ進むと2つ目の両部鳥居があります。
最初の鳥居から本殿まではせいぜい200メートルくらいですが、社叢と参道が非常に細長いです。
根だけの神木(?)と手水舎。
神木に巻き付けられているのは御柱祭に使う綱でしょうか。
仮殿
参道を進んでゆくと最初に行き当たるのが仮殿。
四方が吹き放ちで、用途は神楽殿と同じかと思います。
側面から見た仮殿。瓦葺きの入母屋(妻入)。妻入の入母屋というのは、ちょっと珍しいです。
写真の右半分に写っているのは一之御柱。
境内社など
拝殿と本殿は後回しにして、続いては境内社の紹介を。
拝殿の左側面に回り込むと多数の境内社が並んでいます。大きさや造りからして、この中でいちばん格が高いのは“御小安神社”という石柱のある社殿でしょう。
後述しますが沙田神社の主祭神は、日本神話で最初に生まれた女神のうちの一柱であるスヒヂニです。そしてここに小安社があるからなのか、信濃国三宮(三之宮)である沙田神社は「産の宮」の別名があります。
本殿の裏へ行くと、「物臭太郎の碑」なるものがあります。
昔話の『ものぐさ太郎』は信州とゆかりのある物語だというのはなんとなく聞いたことがあったのですが、主人公の出身地が松本だったとは知りませんでした。
閑話休題ということで、こちらは拝殿の右側にあった横長の社殿。
フェンスで防護されていますが、詳細は不明。鳥居の額も、風化して判読できず。
拝殿と本殿
拝殿は瓦葺の入母屋(平入)。
賽銭箱にある紋は“三階菱”。戦国時代に中信地方を治めた小笠原氏の家紋です。
拝所にあった案内板の解説によると、祭神はホオリ(彦火火出見尊 ひこほほでみのみこと)とトヨタマヒメ(豊玉姫)とスヒヂニ(沙土煮尊 すいじにのみこと)の三柱。
ホオリが最初に書かれているので、これが筆頭の祭神っぽいです。しかし、“産の宮”という別名があるのに男神のホオリが祭神の筆頭というのは、いまひとつ納得いきません。そして、社名に“沙”の字があるあたり、スヒヂニ(沙土煮尊)がメインの祭神であると考えたほうが腑に落ちる気がします。
なお、スヒヂニは『古事記』と『日本書紀』の天地開闢(てんちかいびゃく)と呼ばれるくだりに登場する神で、それまで神に性別がなかった世界にイザナミらとともに生まれた最初の女神です。
本殿は銅板葺の神明造(しんめいづくり)。
裏側は木が茂っていてよく見えなかったのですが、神明造なので間口3間、奥行き2間と見て間違いないでしょう。
母屋(身舎)の外側にある棟持柱(むなもちばしら)が屋根を支えていたり、棟の近くに鞭掛(むちかけ)という4本の棒が突き出ていたり、神明造という建築様式の特徴が見られます。
以上、沙田神社でした。
(訪問日2019/06/22)