東京都府中市
高安寺(こうあんじ)
2022/03/12撮影
概要
高安寺は市の中心部に鎮座する曹洞宗の寺院です。山号は龍門山。
前身にあたる見性寺は、平安時代に藤原秀郷により開かれたとのこと。分倍河原の戦い(1333年)では新田義貞が当地に本陣を置き、南北朝の騒乱で荒廃しました。
高安寺の創建は室町時代。初代将軍・足利尊氏によって改宗されて建長寺(臨済宗)の末寺となり、安国寺として隆盛しました。しかし地勢的・軍事的な要衝にあったため幾度となく戦乱に巻き込まれ、戦国期は北条氏の庇護を受けましたが荒廃しています。江戸時代には海禅寺(青梅市)の末寺となり、曹洞宗に改めました。
現在の境内伽藍は江戸後期から明治にかけて再建されたもの。観音堂が市指定文化財、独特な構造の山門などが都選定歴史的建造物となっています。
現地情報
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| 所在地 | 〒183-0021 東京都府中市片町2-4-1(地図) |
| アクセス | 分倍河原駅から徒歩5分 稲城ICまたは府中スマートICから車で10分 |
| 駐車場 | なし |
| 営業時間 | 随時 |
| 入場料 | 無料 |
| 寺務所 | なし |
| 公式サイト | なし |
| 所要時間 | 20分程度 |
境内
観音堂

高安寺の境内は東向き。
境内は大國魂神社の北西に鎮座し、入口は北側にあります。
境内入口には六地蔵と総門(高麗門)。
総門は、一間一戸、高麗門、切妻造、銅板葺。
扁額は「武野禅林」。

山門の手前を横切って進むと、境内の南東に観音堂が東面しています。
桁行3間・梁間3間、入母屋造、向拝1間、銅板葺。
享保年間(1716~1736)の再建とのこと(府中市教育委員会の案内板より)。

向拝は1間。
軒下は、江戸中期らしい白木の彫刻で飾られています。

向拝柱は几帳面取り。
正面には唐獅子、側面には象の木鼻。
柱上の組物は、連三斗を拡張したもの。

虹梁中備えは蟇股。
カササギと思しき鳥のつがいが彫られています。

海老虹梁は母屋の頭貫の位置から出て、向拝の虹梁の位置に取り付いています。向拝側は木鼻と斗栱で持ち送りされています。
向拝柱の上では手挟が軒裏を受けています。
縋破風の桁隠しには猪目懸魚。

母屋の前面。扁額は「観世音」。
中央は桟唐戸。左右は火灯窓。禅宗様の意匠です。

側面は、引き戸と横板壁が使われています。
縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。

柱は円柱で、上端が絞られています。
軸部は長押と頭貫で固定され、柱上に台輪が通っています。頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
柱上の組物は、禅宗様の尾垂木二手先。柱間にも組物が並んでいます。

軒裏は扇垂木の二軒繁垂木。
分類するなら折衷様建築かと思いますが、かなり禅宗様の割合の多い折衷様です。
山門

参道に戻って進むと、山門が鎮座しています。
桁行3間・梁間3間、三間一戸、二重、楼門、入母屋造、銅板葺。
1872年再建。
正面側面(桁行と梁間)が各3間という、非常にめずらしい構造の山門。
正面のシルエットはふつうの二重楼門と変わりないですが、側面に特徴があります。

まずは下層の正面から。
左右の柱間には仁王像。仁王門と呼んでも差し支えないでしょう。

柱は円柱で、前面には彫刻の木鼻がついています。
柱上には台輪がまわされ、組物は三手先。柱間にも組物があります。

彫刻は遠目に見ると獏のようなシルエットですが、近くで見ると雲をまとった天女が彫られています。トリックアートの一種といったところでしょうか。

隅の柱。
こちらも天女が彫られています。遠目には見返り唐獅子に見えます。

そしてこちらが問題の側面。上の写真は右側面(北面)です。
側面は3間あり、中央の柱間が通路になっています。つまり、門の内部は前後方向の通路と左右方向の通路が、十字に交差しています。
梁間(側面)2間の四脚門・八脚門タイプの楼門はありふれていますが、このような梁間3間の楼門は、私の知るかぎりほかに例がありません。分類不能の建築様式です。

上層の正面。扁額は山号「龍門山」。
柱は円柱。柱間は桟唐戸と連子窓。
木鼻は、遠くて目立たないからか、ふつうの象鼻が使われています。
組物は和様の尾垂木三手先。
軒裏は二軒繁垂木。下層は平行垂木ですが、上層は扇垂木です。

上層も側面3間。
柱間は格子戸。
破風板の拝みには鰭付き蕪懸魚。

背面。
各所の意匠は正面と同様。
下層背面にも仏像が置かれています。
鐘楼と本堂

参道左手には鐘楼。
宝形造、銅板葺。袴腰付。
1856年造営。

柱は円柱。木鼻は竜の頭の彫刻。
組物は和様の尾垂木二手先。
内部に吊るされた鐘は、江戸幕府の認可を受けた「時の鐘」とのこと。
1858年改鋳。明治以降も伝統に則って朝昼夕に鐘を撞いているようです。

境内の奥には本堂が鎮座しています。
寄棟造、銅板葺。
1803年(享和三年)再建。
本尊は釈迦如来。
案内板によると、内陣の組物周辺に特徴があるとのこと。

正面中央の扁額は「等持院」。当寺を開山した足利尊氏の戒名に由来するようです。
ほか、本堂周辺には「弁慶硯の井」なるものがあるらしいですが、見逃したため割愛。
以上、高安寺でした。