今回は山梨県笛吹市の福光園寺(ふっこうおんじ)について。
福光園寺は市南部の山際の集落に鎮座する真言宗智山派の寺院です。山号は大野山。
創建は不明。寺伝によると推古天皇の時代の草創で、行基や空海も当地を訪れたらしいです。平安後期には衰退したようですが、1157年(保元二年)に領主の大野重包によって「大野寺」として再興されたとのこと。再興後の詳細な沿革は不明ですが、鎌倉時代には三枝氏の庇護を受け、木造吉祥天像が造立されています。
現在の境内伽藍は江戸後期以降のものと思われる楼門と本堂が残ります。当寺の所蔵する木造吉祥天像と二天像は鎌倉時代のもので、国の重要文化財に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒406-0817山梨県笛吹市御坂町大野寺2027(地図) |
アクセス | 一宮御坂ICから車で10分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
三密門(鐘楼門)
福光園寺の境内は西向き。境内入口は集落の生活道路に面しています。
左の寺号標は「真言宗智山派 大野山福光園寺」。
三密門(鐘楼門)は、一間一戸、楼門、入母屋造、銅板葺。
案内板*1によると内部の梵鐘は1672年(寛文十二年)の鋳造で、鐘楼門も同年代の造営のようです。
下層。
正面1間、側面2間で、柱の配置は四脚門に近いです。
左手前の柱。
柱は円柱で、頭貫には木鼻がついています。柱上は出三斗。
正面の頭貫の上の中備えにも出三斗が配され、通肘木で上層の床板を受けています。
内部の通路上にも頭貫がわたされ、中備えに蟇股が2つ配されています。
蟇股には猪らしき獣の彫刻があります。
上層。扁額は「三密門」。
縁側は切目縁で、欄干は擬宝珠付き。
軒裏は二軒まばら垂木。
右側面(南面)全体図。
上層は側面1間で、梵鐘と鐘撞き棒が吊るされています。
柱は上端が絞られた円柱で、頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
柱上の組物は出三斗、台輪の上の中備えは平三斗で、通肘木を共有しています。
破風板の拝みには蕪懸魚。左右の鰭は若葉のような意匠です。
妻面は暗くて見づらいですが、木連格子が使われています。
本堂
参道の先には本堂が鎮座しています。
桁行3間・梁間3間、宝形造、正面軒唐破風付、銅板葺。
正面の軒唐破風。
金網がかかっていて見づらいですが、鳳凰の彫刻が下がっています。
破風板の飾り金具には三つ巴の紋。
正面は3間。
中央の柱間は桟唐戸のような外観の引き戸。左右の柱間は舞良戸。
中央の引き戸の上には、竜の欄間彫刻。
欄間彫刻の上には頭貫と台輪が通り、「普光」の扁額があります。
柱は上端が絞られた円柱で、柱上の組物は尾垂木三手先。軒桁の下の支輪板には雲の彫刻が入っています。
向かって右の柱間。
隅の柱には唐獅子の木鼻がついています。
台輪の上の中備えは蟇股。こちらの蟇股の彫刻は、桃と猿。
右側面(南面)。
側面も柱間は3間。前方の2間は舞良戸で、後方の1間は縦板壁です。
縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。
側面後方。
後方の柱にも唐獅子の木鼻があります。
台輪の上の蟇股の彫刻は、南面中央(写真左)が馬、南面向かって右が蛇。方角にあわせて十二支を配しています。
背面は3間。柱間は縦板壁。
床下。
縁側は、縁束と腰組で支えられています。
母屋柱は床下が八角形に成形されています。
頂部の宝珠。
露盤と伏鉢の上に、火炎のついた宝珠が乗っています。
本堂向かって右側には収蔵庫。
内部には「木造吉祥天及び二天像」と、「木造香王観音立像」が保管されています。
木造吉祥天坐像は胎内の銘より1231年の造立で、その脇侍の二天像も同年のものと考えられます。国指定重要文化財。
木造香王観音立像は平安時代のものらしいですが破損が著しく、大部分は元禄年間の補作とのこと。こちらは県指定文化財です。
以上、福光園寺でした。
(訪問日2024/12/28)
*1:福光園寺による設置