甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【富士川町】飛川神社

今回は山梨県富士川町の飛川神社(ひかわ-)について。

 

飛川神社は最勝寺地区の田園地帯に鎮座しています。

創建は不明。山梨県神社庁によると当地区の鎮守。

境内は小規模ですが、覆い屋に収められた本殿には大量の彫刻が配されており、峡南地域の神社本殿の中でも屈指の力作です。

 

現地情報

所在地 〒400-0502山梨県南巨摩郡富士川町最勝寺字猿尾田646(地図)
アクセス 市川大門駅または鰍沢口駅から徒歩1時間
増穂ICから車で5分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と拝殿

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飛川神社の境内は南向き。

一の鳥居は木造の両部鳥居。稚児柱に屋根がついています。扁額は「飛川宮」。

 

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二の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「飛川宮」。

参道左手には手水舎。

 

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拝殿は入母屋(妻入)、銅板葺。

 

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妻壁はしっくいで塗り込められています。

妻壁と大棟鬼板の紋は花菱に似たもの。

破風板の拝みには鶴の意匠の懸魚。

 

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拝殿手前の狛犬。

ほかの神社では見かけない独特のスタイルで、とても印象深い狛犬だと思います。

 

本殿

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拝殿後方には覆い屋に収められた本殿が鎮座しています。

覆い屋には金網が張られていて見づらいですが、胴羽目などの彫刻を鑑賞するには支障ありません。

 

様式は桁行正面1間・背面2間・梁間1間、一間社入母屋、正面背面千鳥破風付、向拝1間・軒唐破風付、こけら葺。

境内案内板によると1864年(文久四年)建立。棟梁は下山村(現身延町)の松木佐内。脇棟梁が当地の芦澤六良左ヱ門貴英。彫刻は“当時宮系彫刻の第一人者である後藤功祐が大部分を手がけて”いるとのこと。

 

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向拝柱は几帳面取り。面には紗綾菱の文様が彫られています。

見づらいですが木鼻は見返り竜。虹梁中備えにも彫刻がありますが、暗くて題材がわからず。

海老虹梁の下部には波の意匠の持ち送りが設けられています。

 

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浜床の下の羽目にも彫刻。題材は波。

 

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母屋の右側面(東面)。

母屋柱は円柱。頭貫木鼻は唐獅子。

柱間にも組物と木鼻が配置されています。中備えの彫刻は題材不明。

正面の扉は母屋の奥まった場所に設けられています。

 

胴羽目彫刻は、馬にまたがった人物が2人並んで河辺を歩いています。案内板によると題材は「三顧の礼」。劉備が諸葛孔明のもとを訪れた場面のようです。

 

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右側面の縁の下の腰羽目。

下半分には人物像が彫られていますが題材不明。

 

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背面。こちらは柱間2間となっています。

胴羽目の題材は張良。張良が橋の上の老爺の落とした靴を拾い、そのお礼として兵書を与えられるという著名な逸話の一場面らしいですが、そのようには見えません...

 

縁側は4面にまわされ、縁の下は腰組で支えられています。

脇障子は後方斜め方向へ向けて張られています。

 

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背面の縁の下。

題材は上が唐獅子、下が鴛鴦(オシドリ)あるいは鴨。

 

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左側面(西面)。

胴羽目の題材は「韓信の股くぐり」。

道行く若者に絡まれた韓信が、挑発に乗ることなく若者の股をくぐる場面。韓信の思慮深さをあらわす逸話として知られています。

 

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左側面の腰羽目。

上は唐獅子、下半分は題材不明の人物像。

 

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屋根。

暗くて写真ではわかりにくいですが、千鳥破風が正面だけでなく背面にもあり、棟が十字になっています。

甲府盆地周辺の神社ではときどき十字棟の神楽殿がありますが、本殿で十字棟の例は初めて見たので驚きました。

 

以上、飛川神社でした。

(訪問日2021/01/30)