今回は長野県佐久市の伊豆箱根三島神社(いず はこね みしま-)について。
伊豆箱根三島神社は鳴瀬地区の農地の一角にある城跡に鎮座しています。
創建は不明。鎮座地の岩尾城は室町中期に造られ、戦国時代末期まで大井氏の居城として使われていたとのこと。社殿は本丸跡と思しき場所に建てられており、佐久地域らしい胴羽目彫刻のついた本殿があります。
現地情報
所在地 | 〒385-0016長野県佐久市鳴瀬(地図) |
アクセス | 佐久南ICまたは佐久中佐都ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
伊豆箱根三島神社の境内は東向き。
境内入口の前の道路は軽トラックが辛うじて通れるくらいの農道で、乗用車での乗りつけはほぼ不可能。なお、南側は崖になっており、私は崖下にあった空き地に車を置いて徒歩で急坂を登ってきました(入口まで徒歩3分くらい)。
鳥居は木造の両部鳥居。扁額および社号標は「伊豆箱根三島神社」。
由緒や沿革は不明ですが、合祀を繰り返した結果このような社名になったのでしょう。偶然にも静岡県の東のあたりにある観光名所が3つ連なっています。
もっとたくさん合祀すれば寿限無みたいに長くなっておもしろいのでは、と思いましたが、もしそうなったら四柱神社、五社神社といった感じのありふれた社名になるかと思います。なので、「伊豆箱根三島」はインパクトと適度な長さを両立した、絶妙なあんばいの社名なのかもしれません。
参道左手には手水舎。切妻、桟瓦葺。
参道の途中にある案内板は岩尾城についての解説で、伊豆箱根三島神社についての記述はありませんでした。
拝殿
拝殿は入母屋(平入)、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。
向拝柱は几帳面取り。木鼻は側面に古風な意匠のものがついています。
柱上の組物は連三斗。
虹梁中備えは蟇股と組物。
母屋柱は角柱。
向拝柱と母屋柱は海老虹梁でつながれています。
向拝柱の上の手挟は、繰型のついた独特の形状のもの。
本殿
拝殿の後方には覆い屋と金網で防護された本殿が鎮座しています。
桁行3間・梁間1間、三間社流造、こけら葺。向拝の間数は不明。
造営年は不明。作風から江戸後期以降のものと思われます。
祭神も不明。長野県神社庁ホームページを見ても、社名の記述すらありません(おそらく神社庁非加盟)。
向拝柱は几帳面取り。象の木鼻がついています。
海老虹梁は竜が彫刻されています。北面(上の写真)が昇り竜、南面(下)が降り龍。
柱上の組物は出三斗をベースとしたもので、手挟と3つの桁で軒裏を受けています。手挟は菊が籠彫されています。
壁面には同羽目。
胴羽目彫刻は、北面(上)・南面(下)ともに鳳凰のようです。あまり立体感のない造形。
母屋の組物は二手先。柱間にも組物が置かれ、詰組になっています。
持ち出された妻虹梁の下には軒支輪と板支輪。
妻飾りは笈形付き大瓶束。こちらの笈形も平べったい造形。
背面。母屋柱の床下は角柱になっています。
胴羽目は左右が松に鶴、中央が波。
頭貫木鼻は唐獅子で、柱上には台輪がまわされていました。
こちらは詰組にはなっておらず、組物のあいだに彫刻があります。題材は鳥らしきものが彫られていますが詳細不明。
組物はよく見ると尾垂木が突き出ています。
脇障子は彫刻がなく、ただの板になっています。ですがその上には麒麟と思われる獣の彫刻が載っています。麒麟は経年劣化のせいもあると思いますが、そこまで良い造形には見えません。
破風板の拝みと桁隠しには蕪懸魚。向拝桁隠しは牡丹と思われる花の彫刻。
大棟は箱棟。棟の上には外削ぎの千木。鬼板に鬼面はありませんでした。
以上、伊豆箱根三島神社でした。
(訪問日2020/12/27)