今回は山梨県甲州市の三島神社(みしま-)について。
三島神社(三嶋神社)は国号20号沿線の集落に鎮座しています。
創建は不明。社伝によると1703年(元禄十六年)に伊豆の三島大社(三島市)を勧請し、当地の氏神としたのがはじまりのようです。江戸後期には、現在の本殿が造営されました。
境内は急斜面にあり、社殿は拝殿と本殿だけの簡素な内容です。本殿は多数の彫刻で飾られていて、市の文化財に指定されています。
現地情報
| 所在地 | 〒409-1203山梨県甲州市大和町初鹿野1452(地図) |
| アクセス | 甲斐大和駅から徒歩10分 勝沼ICから車で10分 |
| 駐車場 | なし |
| 営業時間 | 随時 |
| 入場料 | 無料 |
| 社務所 | なし |
| 公式サイト | なし |
| 所要時間 | 10分程度 |
境内

三島神社の境内は南向き。斜面上にある集落の奥に入口があります。
入口には石造明神鳥居。扁額は「三嶋宮」。

階段を上ると平らな広場があり、その隅に拝殿と本殿があります。
拝殿は、寄棟(妻入)、銅板葺。
前面と背面は格子戸。内部には賽銭箱があるだけで、後方の本殿がわずかに透けて見えます。

右側面。
短い大棟があり、宝形ではなく寄棟です。
側面の柱間は縦板壁。
本殿

拝殿の後方には、鉄柵に囲われた本殿が鎮座しています。
祭神は大山祇。

一間社入母屋、正面千鳥破風付、向拝1間 軒唐破風付、銅板葺。
文政年間(1818-1830)の造営。市指定有形文化財。
棟梁は下山大工の土橋文蔵。同地区にある諏訪神社本殿(初鹿野)や、大善寺山門を手がけた工匠です。
案内板*1いわく、初鹿野の諏訪神社と比較して“大胆で粗さが目立ち華麗さではやや劣るが豪快さで優れ”るとのこと。

向拝は軒唐破風付。

唐破風から下がる兎毛通は怪鳥の彫刻。胴体は魚、頭は竜で、鳥の翼が生えています。桁隠しは雲の意匠。
奥の小壁には鳳凰の彫刻が見えます。

虹梁の絵様は、若葉が立体的に彫られています。
中備えの彫刻は、左側に錫杖を持った老人が座り、右側は波の中から竜が顔を出しています。何かの説話が題材かと思います。

向拝柱は几帳面取り角柱。正面は唐獅子、側面は獏の木鼻がついています。
組物は連三斗。唐獅子と獏の頭に巻斗が乗り、組物を持ち送りしています。

海老虹梁は、向拝側は虹梁の高さから出ており、母屋側は頭貫の位置に取り付いています。
向拝柱の上の手挟は菊の籠彫り。S字状にカーブした軒裏を受けています。

向拝の下には階段が5段。本殿の階段にしては、傾斜がゆるやかです。
階段には昇高覧がついています。

階段の下には長押が打たれ、周囲に浜床が張られています。
浜床の下の欄間にも彫刻があり、正面は雁、側面は蓮や沢潟が題材です。

母屋柱は円柱で、正面側面ともに1間。
前方の柱筋から少し奥まったところに神座の扉があり、内側の壁面には鶴や唐獅子の彫刻があります。

右側面の外壁の彫刻。題材は、牡丹に戯れる唐獅子。
縁側の脇障子には人物像の彫刻がありますが、私には題材が解らず。

縁側は切目縁が4面にまわされています。
縁の下を支える腰組は、三手先。

腰組の肘木は先端が木鼻になっています。
母屋の土台の横木には亀甲の紋様。

母屋の組物は尾垂木三手先。
柱間にも詰組が配され、情報量の多い軒下になっています。

背面。
彫刻は、滝の周りに3頭の唐獅子が並んだ構図。

左側面。こちらも牡丹と唐獅子が題材。
脇障子も反対側と同様に人物像が彫られています。

屋根の唐破風と千鳥破風。
右の唐破風の棟の鬼板には「三嶋」と書かれています。左上の千鳥破風には鬼面があります。

大棟も箱棟になっており、鬼板に鬼面があります。
破風板の拝みは蕪懸魚。
入母屋破風の内部にも彫刻がありましたが、暗くてよく見えず。
以上、三島神社でした。
(訪問日2023/04/22)
*1:大和村教育委員会の設置