今回は長野県佐久市の諏訪八幡神社(すわ はちまん-)について。
諏訪八幡神社は市西部の集落に鎮座しています。
創建は不明。長野県神社庁によると、鎌倉以前から崇敬されており、八幡社は鶴岡八幡宮からの勧請とのこと。境内にはふたつの本殿が並立し、両者とも古風な造りをしています。
現地情報
所在地 | 〒384-2105長野県佐久市矢嶋1564(地図) |
アクセス | 佐久南ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
鳥居と拝殿
諏訪八幡神社の境内は東向き。道路に対し背を向けるようにして社殿が建っています。
境内には2つの鳥居があり、写真右が八幡社、右が諏訪社のようです。両者とも石造の明神鳥居で、扁額なし。
拝殿は八幡社と諏訪社で共通。切妻、桟瓦葺。
拝殿の隣には石の祠。矢嶋道祖神というようで、いずれも江戸初期あたりのものとのこと。
諏訪社本殿
拝殿の後方には覆い屋があり、内部には2つの本殿が並立しています。
向かって右の本殿は諏訪社。桁行2間・梁間1間、二間社流造、向拝1間、こけら葺。
造営年は不明。作風から江戸中期あたりの造営と思われます。
祭神はタケミナカタとその妻・八坂刀女。
諏訪社本殿は正面に扉が2組ある「二間社」というちょっとめずらしい建築様式です。
また、正面に階段がなく縁側の欄干も省略されていて、この点でも風変わりな造りをしています。
私の観察と経験則の話になりますが、佐久地域は二間社が他地域より圧倒的に多く見られ、その二間社のほとんどは諏訪神社です。
向拝柱は角面取り。C面が小さくとられているため、比較的新しいものと思われます。
向拝柱の側面の木鼻は象鼻。
柱上の組物は出三斗をベースとしたもの。
水引虹梁は無地の赤い材が使われています。中備えは蟇股で、はらわたには猫のような獣が彫られています。
向拝柱と母屋柱は湾曲した白い海老虹梁でつながれています。海老虹梁の母屋側は、頭貫木鼻の上という高い位置から出ています。
向拝柱の上では3本の丸桁が軒裏の垂木を受けています。手挟はありません。
母屋正面には扉が2組。扉の上の蟇股には梶の葉の紋が彫られており、諏訪社であることがわかります。
佐久地域の諏訪社は、タケミナカタと八坂刀女を2つの扉にそれぞれ祀って二間社とした形式が多いように思います。
母屋柱は円柱。壁面は壁板が横方向に張られています。
見づらいですが頭貫木鼻は拳鼻、柱上の組物は連三斗、中備えは蟇股、妻飾りは大瓶束。
破風板の拝みには蕪懸魚が下がっています。
大棟は箱棟で、鬼板には鬼面がついています。
八幡社本殿
向かって左の本殿は八幡社。一間社流造、こけら葺。
造営年は不明。前述の諏訪社と同様、江戸中期あたりの造営と思われます。
祭神は誉田別命。八幡社ですが神功皇后などは祀られていないようです。
こちらは諏訪社本殿の一間社バージョンといったような造り。各所の意匠が似通っています。
向拝柱は小さい角面取り。木鼻は象鼻。組物は出三斗をベースとし、3本の丸桁を受けています。
水引虹梁の上の中備えは蟇股で、こちらは唐獅子らしき彫刻があります。
母屋の扉は1組で、こちらは菊の紋がついています。
妻飾りの意匠は諏訪社と若干異なります。大瓶束の中ほどに木鼻らしき意匠がついており、これはほかの寺社では見かけない風変わりな意匠です。
こちらも屋根は箱棟で、佐久地域でよく見かける鬼面がついています。
以上、諏訪八幡神社でした。
(訪問日2020/12/27)