今回は長野県上田市保野(ほや)の塩野神社(しおの-)について。
塩野神社(保野)は塩田平の中心部に鎮座しています。
創建は672年(天武元年)とされますが諸説あるようです。同市前山の塩野神社とともに平安期の『延喜式』に記載された「鹽野神社」に比定される古社です。社殿についてはとくだん古いものはないですが、廻り舞台が市指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒386-1321長野県上田市保野字塩野429(地図) |
アクセス | 舞田駅または中野駅から徒歩20分 上田菅平ICから車で30分 |
駐車場 | 3台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と廻り舞台
塩野神社の境内は南向き。
入口には木製の両部鳥居。扁額は「塩野神社」。右の社号標は「延喜式内塩野神社」。
駐車スペースの近くにある案内板(保野歴史研究会の設置)には同市前山の塩野神社との論争(どちらが本当の式内社か)の歴史について書かれています。
結論をいうと保野・前山どちらが式内社かは決着がついていません。社殿の立派さで判断するなら前山の塩野神社のほうが有力だと思うのですが、明治以降の歴史研究家らによるとこちらの保野の塩野神社が有力とのこと。
鳥居をくぐって進むと、参道の左手に廻り舞台があります。
桟瓦葺の切妻。2階建て。1874年の造営。
石積みの高低差を利用した2階建てで、写真は2階部分。左右についている切妻の下屋は、太鼓や三味線が座るための場所。1階は廻り舞台を人力で回転させるための空間。
板の隙間から内部を見た図。
中央に丸く切り取られた床があり、ここが回転するようです。
奥の窓は板でふさがれていますが、これは後方の野山を舞台背景として利用するための「遠見」というものとのこと。
こちらは神楽殿と思われる社殿。鉄板葺の入母屋。
拝殿
拝殿は桟瓦葺の切妻。高さの異なる3つの切妻を組み合わせた形式。
大棟には雲間を泳ぐ竜が彫られています。
拝殿の拝所。
虹梁(こうりょう)の上には四角い大瓶束(たいへいづか)が立てられています。大瓶束の左右には笈形(おいがた)。
左右の低くなった屋根の軒下。
虹梁の上には梶の葉(諏訪神の紋)があり、その左右には唐草の彫刻。
左側面から見た図。
妻壁には笈形のついた束。大棟の鬼板には梶の葉の紋が見えます。
本殿
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。造営年は不明。
祭神は塩垂津彦(しおだれつひこ)、スサノオ、タケミナカタ(諏訪神)の3柱。スサノオとタケミナカタは武田信玄によって勧請されたとのこと。
正面(写真左)の軒先を支える向拝柱は、C面取りの角柱。見づらいですが象鼻がついています。
年代推定の手掛かりになるような意匠が少ないですが、C面の幅がそこまで広くないところから推測すると、この本殿は古くとも江戸初期くらいのものでしょうか。
母屋(写真右)の柱は円柱。海老虹梁(えびこうりょう)は母屋の高い位置から出ていて、向拝柱の組物の高さに降りています。
側面。
低い位置に長押(なげし)が打たれ、柱上には組物がありません。
妻虹梁の上の妻飾りは、シンプルな豕扠首(いのこさす)。
縁側は欄干のない簡素なもの。
母屋柱の床下は、八角形に成形されていました。
屋根には、外削ぎの千木と3本の鰹木。
大棟の紋は、花菱と藤を組み合わせたあまり見かけない紋でした。諏訪梶ではありません。
以上、塩野神社(保野)でした。
(訪問日2020/08/01)