今回は長野県上田市の白山比咩神社(しらやまひめ-)について。
白山比咩神社は上田市北部の集落に鎮座しています。
全国に多数ある白山神社の1つで、案内板の由緒書きによれば奈良時代からの歴史があるとのこと。社殿は本殿が江戸中期あたりのもののようで、白木の彫刻などの意匠が各所に見られる装飾的なものとなっています。
現地情報
所在地 | 〒386-0001長野県上田市上田508(地図) |
アクセス | 上田駅から徒歩1時間 上田菅平ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
白山比咩神社の境内は南向き。一の鳥居は石製の明神鳥居。
社号標と鳥居の扁額は「白山比咩神社」。
なお、社名の読みについては長野県神社庁のサイトにも書かれていないので、当記事では総本社*1にならって「しらやま」としています。
二の鳥居は木製の明神鳥居。笠木に鉄板の屋根がついています。扁額は「白山比咩神社」。
拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)。向拝1間。
拝殿の向拝柱は几帳面取りされた角柱。角柱の側面には木鼻。
母屋の引き戸の上の扁額は、青い字で「白山比咩神社」とあります。額縁には竜の彫刻が施されています。
本殿
拝殿の裏には覆いがかけられた本殿が鎮座しています。
本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年については、境内にあった手書きの案内板(設置者不明)に“元録(原文ママ)四年辛未閏八月十八日氏子一統併力本社再建シ現在ニ至ル”とあり、1691年の造営のようです。
祭神は案内板(設置者不明)によるとイザナギ・イザナミ・菊理媛神(白山比咩)の3柱。
正面の軒先を支える向拝柱は、几帳面取りされた角柱。正面側の木鼻は唐獅子、側面は象。
写真中央の虹梁(こうりょう)の上の中備えは蟇股(かえるまた)ですが、逆光でよく見えず題材不明。
写真右のカーブした海老虹梁(えびこうりょう)は、向拝側・母屋側ともに木鼻の高さから出ています。
海老虹梁の上では、菊(あるいは牡丹?)が立体的に彫られた手挟(たばさみ)が軒裏を受けています。
この本殿の彫刻は、私の主観になりますが全体的にシャープさに欠けていてあまり巧いものには見えません。とはいえ、手挟の造形はとても良いと思います。
母屋の正面側は、扉の両脇に彫刻がはめ込まれています。題材は不明。
扉の前の階段は、角材で構成された木階(きざはし)が5段。
縁側は正面と左右の計3面にまわされており、壁面と直交に板を張った切目縁(きれめえん)。欄干は跳高欄(はねこうらん)。
縁側の背面をふさぐ脇障子には、竜が彫刻されています。
右側面の妻壁。
写真中央下部の蟇股には水鳥(鴨?)が彫られています。
組物は一手先の出組で、渦巻き模様のついた妻虹梁を持出ししています。妻虹梁の下ではうっすらと波が彫られています。妻虹梁の上には出三斗(でみつど)の組物と、鳳凰が彫られた中備え。
その上にさらに梁があり、梁の上で大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。大瓶束の両脇は、波の意匠が彫られた笈形(おいがた)。
背面。桁も一手先に持出しされています。
頭貫の木鼻は、渦巻き状の拳鼻。頭貫の上の蟇股には、鳥と思しき彫刻があります。
右側面から見た床下。手前に写っている角柱は、縁側を支えている束です。
左右の奥に写っている八角柱は母屋の柱。床上は円柱ですが床下は八角柱となっています。
最後に棟の鬼板。
引いた写真が撮れずこのようなアングルになってしまいましたが、鬼板に四角い鬼面がついています。
大棟の鬼面は甲信地方の神社本殿でよく見られ、たいていは人がかぶるお面のような造形なのですが、このような四角くて平べったいものは風変わりです。
以上、白山比咩神社でした。
(訪問日2020/04/14)
*1:石川県白山市の白山比咩神社