今回は長野県佐久市清川(きよかわ)の諏訪神社(すわ-)について。
諏訪神社(清川)は佐久市東部の集落の、県道120号沿線に鎮座しています。
境内は小さく、本殿とその覆い屋を兼ねた拝殿だけという非常にシンプルな内容。地図を調べてみても掲載されていません。しかし本殿は二間社というめずらしい構造をしており、各部の意匠も古風です。
現地情報
所在地 | 〒384-0411長野県佐久市清川386(地図) |
アクセス | 龍岡城駅から徒歩15分 佐久南ICから車で15分 |
駐車場 | 3台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
諏訪神社の境内は南西向き。
鳥居は木製の両部鳥居で、前後の稚児柱(控え柱)も内側への転びがついています。
貫の中央にあるのは額束(がくづか)で、扁額はありません。
境内の石碑や旗立てなどを子細に調べてみても社名が書かれたものは見つからず、Googleマップを見ても「清川農村公園」とあるだけで、神社とは書かれていません。
拝殿は、本殿の覆い屋を兼ねたタイプ。南佐久郡はこういった拝殿が多いように見受けられます。
桟瓦葺で、妻入と平入の切妻を組み合わせた様式。
棟の鬼板には梶の葉の紋があり、社名不明ですが諏訪神社の系統であることがわかります。なので便宜上、記事名は諏訪神社(清川)としておきました。
なお、当記事の執筆前にウェブ検索してみたところ、私がよく参考にしている「八ヶ岳原人」様に清川諏訪神社というタイトルで記事がありました。
本殿
覆い屋の中をのぞいてみると本殿の正面には2組の扉がついており、間口が2つあります。まさかの二間社(にけんしゃ)でした。
たいていの神社本殿は間口が1つの一間社か、あるいは間口が3つの三間社で、この2種類が全体の9割以上を占めます。そのどちらでもない本殿はかなり珍しいです。
本殿はこけら葺きの二間社流造(にけんしゃ ながれづくり)。正面2間・側面1間、向拝1間。
大棟にも梶の葉の紋が描かれており、諏訪神社であることが明示されています。
向拝に渡された梁は白く塗装されています。梁の中央にはシンプルな蟇股(かえるまた)。
母屋の周りには左右側面に切目縁が設けられており、欄干はついていません。
正面側には縁側はなく、板材で造られた階段が3段。階段の下は浜床が張られています。
正面の軒を支える角柱(向拝柱)のエッジはC面(45度の面取り)。
C面の幅は年代推定の手掛かりにもなり、時代が下るほど幅が小さくなる傾向があります。この角柱のC面は特筆するほど大きくも小さくもなく、微妙な幅です。
角柱の側面には象の彫刻の木鼻がついています。角柱の上では、くり抜かれていない古風な意匠の手挟(たばさみ)が垂木を受けています。
角柱と母屋をつなぐ梁はありません。
母屋の抜きの上の柱間には、赤いリボンのような意匠のついた間斗束(けんとづか)が立てられています。
側面の貫の上には蟇股。こちらもくり抜かれておらず、古風な意匠。木鼻は雲状の意匠。
蟇股と組物の上には妻虹梁がわたされており、その上では紅白の装飾がついた大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。
背面は、組物と木鼻のほかに装飾はなし。柱を見ると床下は四角柱になっています。
柱の床下の成形を八角柱で止めにする手抜きが出現するのは室町時代で、この本殿は八角柱からさらに手抜きしています。各所の意匠や前述のC面から考えると、この本殿の造営年代は古くても江戸初期と思われます。
以上、諏訪神社(清川)でした。
(訪問日2020/02/23)