甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【佐久市】新海三社神社 前編(拝殿、西本殿・中本殿など)

今回は長野県佐久市の新海三社神社(しんかい さんしゃ-)について。

 

新海三社神社は佐久市東部の山際に鎮座しています。

佐久地方でも最大級の規模を誇る神社で、境内には三重塔と3つの本殿があるなど非常に充実した内容となっています。

 

当記事(前編)は拝殿・西本殿・中本殿などについて述べます

重要文化財の東本殿と三重塔については後編をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒384-0412長野県佐久市田口宮代2394(地図)
アクセス 龍岡城駅から徒歩30分
佐久南ICから車で20分
駐車場 30台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 新海三社神社
所要時間 30分程度

 

境内

大鳥居と参道

新海三社神社大鳥居

新海三社神社の境内や社殿は南向き。

境内の敷地は山際にありますが、入口の鳥居は下の集落にあります。

 

大鳥居は両部鳥居で、扁額は「佐久総社 新海三社神社」。

柱や貫などの部材はいずれも大ぶりなものが使われており、非常に骨太で力強いバランス。だらりと垂れ下がったしめ縄も豪快で野趣にあふれています。

 

大鳥居の右側にはバス停があり、その名も「鳥居」。

この近辺で前置きなしに「鳥居」と言ったなら、この大鳥居のことになるのでしょうか?

 

新海三社神社大鳥居の正面

大鳥居から境内の敷地内までは300メートルくらい距離があります。

参道の両脇には旗立てがいくつも並んでおり、お祭りのときはこの全てに旗を揚げるのでしょう。

 

新海三社神社の参道

敷地内に入ると路面が石畳にかわり、社叢の中を登ります。

 

新海三社神社の手水舎

手水舎は参道の右手にあります。

東信地方を代表する神社のだけあってしっかりと水が出ており、青竹の上にひしゃくが置かれていて、手入れが行き届いています。

 

新海三社神社の狛犬

参道の狛犬。

胴長なプロポーションですが、それよりも足の造形が妙なことになっていて、まるで正座しているかのよう。

 

拝殿

新海三社神社拝殿

境内の中心部にある社殿は拝殿

拝殿は銅板葺の入母屋(平入)、軒唐破風の向拝1間。

白い垂れ幕や屋根の鬼板には「諏訪梶」の紋があります。新海三社神社は諏訪大社の系統の神社です。

 

新海三社神社の向拝

2本の向拝柱(写真手前)は角が几帳面取りされています。向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。

向拝柱をつなぐ虹梁(こうりょう)は中央部が少し高くなった形状。両端には雲状の木鼻。

虹梁の中央には蟇股(かえるまた)、その左右では組物が唐破風を受けています。

 

新海三社神社拝殿の母屋

軒裏は二軒(ふたのき)の繁垂木。

柱はいずれも角柱で、柱上ではシンプルな組物が桁を受けています。

 

神楽殿

新海三社神社神楽殿

拝殿の右手(東側)には神楽殿があります。

神楽殿は桟瓦葺の入母屋(妻入)、正面3間・側面5間。

新海三社神社の主要な社殿は南向きであるのに対し、この神楽殿は西向き。

 

新海三社神社神楽殿の側面

左正面から見た図。

幕がかかっているせいで詳細がわかりませんが、おそらく正面側の3間は吹き放ち。

軒裏は二軒の繁垂木。柱上の組物は木鼻のついた出組。縁側は跳高欄(はねこうらん)の切目縁(きれめえん)。

 

東西十二社

境内の東西には、摂社末社をまとめた長い社殿があります。

新海三社神社の西十二社

こちらは拝殿の左(西側)にある西十二社

鉄板葺で見世棚造(みせだなづくり)の流造。母屋は正面12間、向拝は6間。柱はいずれも角柱。

 

新海三社神社の東十二社

こちらは神楽殿と東本殿の左手(東側)にある東十二社

西十二社と同様の造り。

 

東十二社の蟇股

遠目に見るとただ横に長いだけの摂社末社なのですが、近づいて見てみると虹梁の蟇股には竹や沢瀉(おもだか)などの紋(?)が彫られています。内部の祭神との関連性は不明ですが、意外に凝っています。

 

本殿(西本社・中本社)

新海三社神社には本殿が3つあり、拝殿の裏手に2つの本殿が並んで鎮座しています。

新海三社神社西本社

西本社は銅板葺の二間社流造(にけんしゃ ながれづくり)、向拝2間。

屋根には外削ぎの千木と3本の鰹木。

造営年代は不明。祭神は事代主と誉田別命。

 

新海三社神社西本社の向拝

正面の軒先を支える向拝柱(角柱)は3本あり、母屋だけでなく向拝も柱間2間となっています。

向拝柱をつないでいる虹梁は弓なりにカーブしており、「虹梁」という名称にふさわしい形状。虹梁の中央では、斗(ます)が実肘木(さねひじき)を介して桁を受けています。

母屋の柱は円柱で、正面には黒い扉が2組。扉の紋は花菱。諏訪神社よりも住吉神社でよく見る紋です。

 

新海三社神社中本社

こちらは中本社。銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。向拝1間。

屋根には外削ぎの千木と3本の鰹木。

造営年代不明。祭神はタケミナカタ(諏訪大社の主祭神)。

 

新海三社神社中本社の側面

右側面。西本社とよく似た造りをしていますが、こちらは妻壁などの蟇股が彩色されていて少し派手。

 

破風板からは懸魚(げぎょ)が3つ垂れています。

妻壁は、妻虹梁の上に大瓶束(たいへいづか)2つと蟇股を置き、その上にさらに虹梁と大瓶束を置くという凝った造り。

頭貫には、断面を白く塗装した拳鼻。海老虹梁の母屋側は、頭貫より上にある組物から出て、向拝の組物につながっています。

縁側は3面に回され、束には名称不明の装飾が取り付けられています。

 

新海三社神社中本社と西本社の背面

背面。左手前が中本社。中央奥が西本社。

西本社は二間社なので、背面の柱間も2間あります。

 

参道と、境内の中心部に位置する社殿については以上。

後編では東本殿と三重塔について述べます。