甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【佐久市】諏訪神社(下小田切)

今回は長野県佐久市下小田切(しもおたぎり)の諏訪神社(すわ-)について。

 

諏訪神社は佐久臼田ICの東に鎮座しています。

創建は不明。長野県神社庁ホームページによると1629年(寛永六年)の水帳から、祠があったことが判っているとのこと。1913年には同市臼田の諏訪神社に合祀されましたが、当地区の住民の要望を受けて1940年に再び分離・独立したようです。

社殿は拝殿と本殿のみのシンプルな内容ですが、本殿は白木の同羽目彫刻があります。

 

現地情報

所在地 〒384-0303長野県佐久市下小田切字田中394-1(地図)
アクセス 臼田駅から徒歩20分
佐久臼田ICから車で1分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

f:id:hineriman:20210126123942j:plain

諏訪神社の境内は西向き。佐久臼田ICに接続する幹線道路と集落に挟まれたような土地です。

鳥居は木造の両部鳥居。扁額は「邨社」。前後の稚児柱は上端に擬宝珠のような意匠がついています。

 

f:id:hineriman:20210126150539j:plain

二の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「諏訪宮」。

 

f:id:hineriman:20210126150550j:plain

拝殿は正面入母屋(妻入)、背面切妻、桟瓦葺。

 

f:id:hineriman:20210126150607j:plain

後方には本殿を納めた覆い屋があります。

 

本殿

f:id:hineriman:20210126150626j:plain

本殿は一間社流造、こけら葺。

造営年は不明。彫刻の作風や意匠から、江戸後期か明治期のものと思われます。冒頭に書いたように昭和期に分離独立した経緯があるため、その頃のものの可能性もあります。

祭神はタケミナカタとコノハナノサクヤ*1

 

f:id:hineriman:20210126150645j:plain

向拝柱は几帳面取り角柱。柱上には出三斗。

木鼻は正面が唐獅子、側面が象。大隅流ぽい作風ですが作者は不明。

水引虹梁は菊の唐草が彫られています。形状は弓なりの曲線になっており、中備えに巻斗と実肘木を置いて丸桁を受けています。

 

f:id:hineriman:20210126150657j:plain

海老虹梁には派手な竜の彫刻。反対側(南面)は降り竜かと思ったのですが、左右を反転しただけのほぼ同じ彫刻でした。

軒裏を受ける手挟は、渦巻く雲のような意匠。

 

母屋柱は円柱で、わかりづらいですが上端が絞られています。頭貫木鼻は象鼻。

母屋正面の板戸の上には蟇股彫刻がありますが、陰になっていてよくわからず。

 

f:id:hineriman:20210126150714j:plain

母屋の壁面には胴羽目。彫刻の題材は松に鷹。

脇障子の羽目の彫刻は唐獅子。

 

f:id:hineriman:20210126150726j:plain

反対側(南面)。

光の加減でひどい写真になってしまいましたが、羽目の彫刻は北面と同様。

ただし鷹も唐獅子も反対側とはちがったポーズになっています。

 

f:id:hineriman:20210126150740j:plain

縁側はくれ縁が3面にまわされています。見切れていますが欄干は擬宝珠付き。

縁の下は腰組と縁束で支えられています。縁束の貫には小さな若葉の彫刻がついており、床下も手抜きなく造られています。

 

f:id:hineriman:20210126150804j:plain

頭貫の上の中備えは蟇股。菊水が彫刻されています。

妻壁は二重になっています。

出組と板支輪で大虹梁が持ち出され、蟇股と大斗・実肘木で二重虹梁を受けています。二重虹梁の上は笈形付き大瓶束。

 

f:id:hineriman:20210126150831j:plain

見づらいですが破風板には拝みと桁隠しに蕪懸魚が下がっています。

大棟鬼板には鬼面。

 

f:id:hineriman:20210126150847j:plain

背面。

さすがにこちらは胴羽目がありません。板支輪の彫刻も若干手抜きの感がなきにしもあらず。

脇障子の上には波頭の意匠のついた部材(呼称不明)がついており、頭貫象鼻をよけるようにして組物に取りついているのが独特。

 

以上、諏訪神社(下小田切)でした。

(訪問日2020/12/27)

*1:長野県神社庁のホームページより