今回は山梨県山梨市の大井俣神社(おおいまた-)について。
大井俣神社は笛吹川南岸の住宅地に鎮座しています。
創建については不明ですが、同市内の対岸にある窪八幡神社とともに『延喜式』に記載された「大井俣神社」に比定される古社です。社殿については特に文化財指定のない標準的なものに見えますが、本殿は二間社というちょっと珍しい様式です。
現地情報
所在地 | 〒405-0006山梨県山梨市小原西1226(地図) |
アクセス | 東山梨駅から徒歩15分 勝沼ICまたは一宮御坂ICから車で20分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
大井俣神社の境内は南東向き。
車道に面した入口には、大きい木造の両部鳥居が立っています。前後の角柱にも転び(内への傾き)がついたもの。扁額は「大井俣神社」。
二の鳥居は石製の明神鳥居。扁額は判読できず。
随神門
随神門は鉄板葺の切妻。正面3間・側面2間。柱は角柱。三間一戸です。
側面2間ですが、正面側の1間は梁間に柱や壁がありません。これは山梨県の神社の随神門でよくある構造。
右側面。
軒裏は一重のまばら垂木。
組物は出三斗(でみつど)と平三斗(ひらみつど)で、木鼻は拳鼻。
妻壁には笈形(おいがた)付き大瓶束(たいへいづか)。
拝殿
境内の奥には拝殿があります。
拝殿は銅板葺の切妻(平入)、正面千鳥破風(ちどりはふ)、向拝1間。
これといって目立つ意匠は見られず、かなりあっさりとした造り。
向拝の軒下には扁額が掛けられています。
「諏方大明神 水宮大明神」とあり、2柱の神が合祀されていることがわかります。
本殿
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の二間社流造(にけんしゃ ながれづくり)。正面2間・側面1間、向拝1間。
造営年代は不明。妙に古風な造りをしているところから推察すると、江戸後期あたりでしょうか。
祭神はタケミナカタとミヅハノメ。
大棟の鬼板には「大井」と書かれていました。
正面の軒先を支える向拝柱は、C面取りされた角柱。木鼻は側面にだけついており、平面的で古風なデザインの木鼻です。
柱上の組物は連三斗(つれみつど)。組物の上では軒桁と手挟(たばさみ)が垂木を受けています。手挟は彫刻がなく平面的で、これもまた古風。
向拝柱と母屋柱をつなぐ部材(海老虹梁など)はありません。
母屋正面の階段は、角材で造られた木階(きざはし)が5段。昇高欄(のぼりこうらん:階段の手すり)がなく、階段の下の浜床もありません。
縁側は切目縁(きれめえん)が3面にまわされ、背面側はシンプルな脇障子でふさがれています。擬宝珠付きの欄干は、ちょっと味気ない感がなくもないデザイン。縁の下は縁束。
母屋は正面に2組の扉がついており、2つの扉の間は長押と頭貫の上から床下までしっかりと柱が通っています。よって正面が二間であり、この本殿は二間社流造という建築様式になります。
母屋柱は円柱になっており、柱上では連三斗で桁を受けています。頭貫の木鼻は拳鼻。
妻飾りは、見えにくいですが大瓶束が立てられています。
軒裏は繁垂木。写真では見切れていますが、正面側は三軒(みのき)になっています。
破風板から垂れ下がる懸魚は、中央の拝みの懸魚が破損していました。
背面。正面が2間なので背面も2間あります。
正面や側面もシンプルでしたが、背面にもこれといった意匠はありません。
母屋は円柱ですが、床下が八角形に手抜きされています。また、補強のため床下に筋交いが設けられています。
以上、大井俣神社でした。
(訪問日2020/05/24)