今回は山梨県甲州市の菅田天神社(かんだてんじんしゃ)について。
菅田天神社は市の中心地である塩山の市街地に鎮座しています。
創建は平安時代とされ、甲斐源氏から信仰されていたことから、武田氏の家宝である「楯無」の鎧が安置されています。社殿については昭和期の再建であり、建築的な見どころはほぼありません。
現地情報
所在地 | 〒404-0042山梨県甲州市塩山上於曽1054(地図) |
アクセス | 塩山駅から徒歩10分 勝沼ICから車で15分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
菅田天神社の境内は南向き。
車道に面した正面入口には石造の明神鳥居が立っています。笠木が大きく反りかえったシルエットで、扁額の字は「菅田天神社」。
社号標は「縣社 菅田天神社」。
二の鳥居は木造の赤い明神鳥居。
親柱だけでなく、前後の稚児柱(角柱)も内側に転び(傾斜)がついています。
扁額はなく、笠木の中央に小さく金色で五七の桐が描かれています。
参道の右手には手水舎。
銅板葺の切妻。
随神門
参道の先には随神門。
銅板葺の切妻。正面3間・側面2間。柱はいずれも円柱。三間一戸です。
軒裏は二軒(ふたのき)の繁垂木。
柱上の組物は出三斗(でみつど)。頭貫の木鼻は象鼻。
内部には垂れ幕のかかった虹梁(こうりょう)がわたされ、その上には間斗束(けんとづか)が置かれています。
写真奥に見えるのは拝殿。
拝殿
境内の奥には拝殿が鎮座しています。
拝殿は銅板葺の切妻。正面に千鳥破風(ちどりはふ)、向拝1間。
昭和期の造営です。
祭神は菅原道真、スサノオ、五男三女神。
正面の千鳥破風の内部には、古風な紅白の豕扠首(いのこさす)が見えます。
拝殿の裏手は立入禁止になっており、本殿も覆いの中にあって見えないようです。
向拝の軒下。
虹梁や木鼻、蟇股(かえるまた)などの意匠はいちおう見られますが、新しいもののうえ形状もあまり凝っておらず、とても見応えがあるとは言えません。
母屋には「菅田天神社」と書かれた扁額が掲げられていました。
冒頭に書いたようにこの神社には武田氏の家宝である「楯無」(たてなし)の鎧が安置されており、「小桜韋威鎧」(こざくらがわおどしよろい)として国宝に指定されています。鎌倉期の作とのこと。
楯無という通称は、盾が要らないくらい強固だという意味。武田氏が滅びた甲州征伐の折に武田勝頼によって向嶽寺に埋められ、江戸時代になって徳川家康の命で発掘回収されたと伝えられているようですが、調査によると埋められた形跡はないとのこと。
なお、小桜韋威鎧は常時の公開はされておらず、公開の頻度も数年に1回となっています。山梨県にある5つの国宝のうち、もっとも見学が難しい物件です。
その他の社殿
拝殿の右手には神楽殿。
銅板葺の入母屋で、全方向に破風があるので棟が十字になっています。
柱はいずれも角柱。内部は格天井。
神楽殿の隣にあるのは祖霊殿。
銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
小さいながらも木鼻や蟇股がしっかりと造形されています。
以上、菅田天神社でした。
(訪問日2020/05/24)